第43話 思い切り過ぎる魔王
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どうしてこうなったの?
私の心の中ではずっとざわざわしっぱなしです。
「テスト勉強で走ってなかったから?」
「どこ行った!出てこい魔王!」
「っ!?」
朝学校へ向かおうとしたら目の前に突然現れた人。私を見るなりいきなり魔法を撃ってきた。
ご丁寧に詠唱してきたから、魔法だって気がついたけど。私が何も知らない善良な市民だったら、何も気がつくことなく丸焦げだったよ。
「ふぅ……とりあえず行ったかな?」
街中で魔法を撃たれて皆に迷惑をかけるのもあれだから。私は公園まで全力疾走でやってきた。ここには身を隠すような木々がたくさんある。
「そこか!」
―ゴォォ!
私がいる所から少し離れた木が薙ぎ倒された。そしてその木は無惨にも燃え始めた。
「私、やばいとこに逃げ込んだ?」
「くっそ!居ないじゃないか!」
「おい。馬鹿みたいに魔法を撃つのはやめろ。こっちの場所を教えてるだけで、逃げられてしまうだろうが」
もう1人いたの?いつからいたんだろう?
「……いたのか」
「ずっとお前の後ろからついてきていたけどな」
「存在感なさすぎだろう」
「はいはい。火を消すから黙ってな」
相手は2人。1人は青い髪の炎を使って攻撃してくる魔族。そして影に隠れて気が付かなかったけど、赤い髪の水を使う魔族。青い髪の方は私の顔を見てから攻撃してきた。ってことは、私を知っている存在。誤魔化して逃げる選択肢はない。
「いつか私を知っている人が来ると思ったけど」
こうも早く来るって思わなかった。
―ボカァァン!
「だから見境なしに撃つのは止めて欲しい」
「俺の勘は当たんだよ。それに隠れるものがなくなれば見つかるだろう?」
「その頃にはこの場所が火の海で、結果は僕自身も丸焼けかな」
「そこは自分の水魔法でなんとか回避してくれ」
「ファイブの作戦はいつも雑だよね。女の子なんだから、その綺麗な肌を火傷したら大変だよ」
「またそんな変なことを言いやがって!ウォーブこそ男ならもっと大胆に行動したらどうなんだ」
青い髪の方が女の子だったんだ。行動も雑だし、言葉も乱暴だから男の子かと思った。
「「あ」」
木の影から様子を見ようとしたら、もう1人の方とばっちり目が合ってしまった。
「どうしたウォーブ」
「あ、あそこで何か……」
「そこかぁ!!!」
―ボカァァン!
「きゃ!?」
「見つけたぞ魔王!」
「だからそんな無計画に魔法を撃ったら……」
「見つかったんだからいいじゃねーか」
今のは少し危なかった。反応が遅れてたら直撃だったよ。木に隠れているとは言え、あの青い髪の魔法は木も貫いてくる。こうなったら仕方がない……時間を稼ぐしかない。
「私に用みたいだけど。人違いではないかしら?」
「それはないな魔王。いや、逃げたやつに魔王を名乗る資格はない。そうだろう?レッド・ブロッサム・ベルゼ」
「久しぶりにその名前を呼ばれたわ」
向こうでの私の名前を知っている。これはもうお城の関係者しかないよね。でもそんな人が私を見つけてすぐに攻撃してくる。それは彼女が言ってた逃げた魔王が原因なのかも。
「そうね。私は逃げたよ。自分の力だけではないけど。どう言い訳をしても逃げたことには変わりない」
「そうだぜ。お前が逃げるから、魔王城は人間どもに落とされた。城にいた者達は、何も出来ず殺された奴もいる。これもそれも全部お前のせいだ!」
「そんな言い方して平気?逃げたって言っても相手は魔王様だよ?僕、殺されるのは嫌なんだけど」
「びびるなウォーブ!あんな弱虫、俺となら余裕だろ?」
「やれやれ。ごめんなさい魔王様。今は貴女の首が……その魔力をファイブにあげたいんだ」
「……」
私の魔力が欲しいってことが目的なのね。戦闘自体全くしてこなかった私にいきなり2対1とか無理だと思うんだけど。
「ウォーターボール」
「!?」
いきなり撃ってきた!?油断した!これは避けられ……
「せいや!」
―バシャァン!
「え?」
ん?何もない?
水だから防御すれば大丈夫だと思ったけど。まさかダメージなしって私強い?
「お姉さん大丈夫?」
「貴女は桐花ちゃん?」
「うん。なんか学校行く途中にお姉さんがストーカーに追われてたから」
「君は今何をしたんだい?」
あ、それ私も気になる。確かにウォーターボールが飛んできたはずだけど。相手の赤い髪……ウォーブが桐花ちゃんに尋ねている。
「殴っただけ。ただの青いボールでしょう?」
「くそ。魔王の側近が別にいたのか」
「魔王?あー真桜さんのことか。聞き間違いかと思った」
「桐花ちゃん。ここは危険だよ?私は大丈夫だから逃げたほ……」
「太陽を我が手に宿し、放て紅蓮の業火!」
「お姉さん危ない!」
桐花ちゃんが私を引っ張り火の玉を避ける。
「あれは太陽殴ったら熱そう」
「分かっているな小娘!我が炎はその身を焦がし、赤き紅蓮の炎に焼かれるのだ」
「なんと危ない魔法……」
「ただのファイヤーボールだよね?」
「違うぞ魔王。俺の魔法はそこらの魔導士の坊やが撃つものとは違う」
「何言ってるの?」
「あー気にしないで下さい。ファイブはオーバーリアクションなだけなんで」
「なんでお前が私のフォローみたいなこと言ってんだよ」
「あーつい。ファイブちゃんのそう言うとこ可愛くて好きだけどね」
「ちょ、こんな時に何言ってやがる!?それにちゃん付けはやめろ!」
「僕は本音を包み隠さず話す主義なので」
「そんな主義いらねー!」
仲が良いな〜2人はきっとずっと一緒にいたんだろうな。会話の息もぴったり。
「お姉さん。今のうちに」
「させないよ。ウォーターボール」
「せいや!」
―バシャァン!
「さっきのはまぐれって訳じゃないみたいだね。少し速度を上げたんだけど」
「ふふん。師匠のパンチに比べたら遅いくらいです」
「そうか。ではその師匠に会う前に君も死んでもらおう」
まずい!何か大きな魔力の流れを感じる!
「これは殴ってどうにも出来ないよね?コメット」
「でっか!?殴って消せるかなぁ?」
「桐花ちゃん下がって!」
今度は私が助ける番!見えててあれだけ溜めが長い魔法なら対処くらいできる!
「緊急事態だもんね。いくよ!アイスウォール!」
―ドーン!バキバキ!
「うわぁ!お姉さんも魔法が撃てるの!?」
「内緒だよ?」
「すごいすごい!手もじんじんするし、これって夢じゃないんだよね!」
「え?」
桐花ちゃんの手を見ると赤くなっている。ウォーターボールを2発も殴ってるから?
「2回目で思ったけど。あれは水の魔法だったんだよね。少し速くしたとか言ってたし、少しだけ痛かったかな」
「ごめんね!私がぼーっとしてたから」
「ううん。出来ると思ったからやったんだよ。本当は火の玉も殴り飛ばしたいけど。流石に素手で殴ると火傷しそうだし。何か覆うものでもあればいいんだけど」
「覆うもの?これじゃダメかな?」
桐花ちゃんの手をとり、水の魔法で手に膜を作る。
「ほわ!これが本で見たエンチャント!これが魔法!ファンタジーきたー!!!これで僕も最強!行ってくる!」
「え?」
私の魔法を受けた桐花ちゃんが勢いよく出ていく。アイスウォール掻い潜ったら出した意味がなくなっちゃうよ!視界が遮られちゃうから、一旦下げるしかない。
「溶けろ!」
「ん?ぶっ壊そうと思ったんいなくなったら?まぁこのまま撃てばいいか」
アイスウォールを解除した先には火の玉を構えているファイブ。何というタイミングの悪さ!?
「解き放つは我が熱き心!灼熱熱球!」
「せいや!」
―ボシュゥゥン!
飛んできた火の玉を殴る桐花ちゃん。
「痛くも熱くもない!エンチャントすげ〜!」
「なんだと!俺の灼熱熱球を殴り飛ばしただと!?」
「さっきの太陽だったらやばかったかも知れなかったけどね」
「そうか。ならば太陽に焼かれるがいい!」
「しまったー!」
なんか2人共楽しそうだね。ちなみにだけど、火の玉に太陽がどうのとか灼熱とか関係ない。ただあの娘が言っているだけ。そもそも呪文に詠唱は必要もない。
「向こうは楽しそうだから放っておこう。悪いけど魔王様は僕は君の相手をしてもらうよ」
桐花ちゃんに付与した魔法だけ途切れないようにしないといけないのに。その上でこの人と戦闘とかいきなりハードモード過ぎるよぉ〜
「ウォーターボール」
「この至近距離で!って水ならなんとかなる!散開!」
―バシャァ!
飛んできたウォーターボールを元の水に戻……
「ぶふぅ!?」
「自分で被った?いやいや、それより僕の魔法を解除した?」
そう。私は飛んでくるウォーターボールを解除したのだ。水魔法であればその魔力の流れも構造もよく分かっている。固めたものを飛ばすだけだから、それを元の形に戻すくらい訳ない。
「水を被るくらい想定内!」
「魔法を消せる訳じゃないんだね。固める性質を元に戻したってところかな?」
「よく分かってるね」
「僕も水の魔導士だから。でも被るってことは、僕の魔法の速さまではどうにも出来なさそうだね」
正解です。そんな物理現象をどうにか出来るような魔法は使えない。
だから……
「今度は私の番!ビックウェーブ!」
「え?こんなところで!?」
―ゴゴゴ……ザバァァァァ!
私の魔法の中で相手を距離をとるのに最適な魔法!まずは私の得意な距離で戦うところから……
「「きゃぁ〜ごぼごぼ!?」」
「ファイブ!」
「桐花ちゃん!」
ウォーブは私の魔法を見て、巻き込まれる前に距離をとりやりすごいしている。当初の目的である距離をとることに成功はしたけど。気付かず戦っている桐花ちゃんまで巻き込まれて押し流しちゃった!
「全く……やること豪快だよな」
「え?」
私の後ろから誰かが追い抜いていく。私の出したビックウェーブもあるのに。
―バシャ!バシャ!
「あの人間マジか。水の上走ってるし……」
「そうです!いわ……シュウ君は凄いんです!」
「シュウ!?ではあの黒い騎士が勇者……」
そう。祝君は今鎧を着ている。ここで私が本人の名前を言うわけにはいかない。鎧で顔を隠しているってことは、何か隠したいことがあると言うこと。私は気遣いができる娘なのです。
―バシャン!バシャン!
水に流される2人を捕まえるシュウ君。こんな状況でも冷静に対処できるなんて、さすがとしか言えない。カッコいい!
「1人は知らないやつだな。巻き込んで悪かったな。そこの赤いの受け取れ!」
「な!?ファイブ!」
青い髪の魔族ファイブをシュウ君は投げて返す。桐花ちゃんは抱き抱えて私のところに戻ってくる。
「真桜に何かあったんじゃって来たんだけど。なんでここに桐花がいるんだ?」
「私が追われてるのを見て追いかけてくれたんだよ」
「そうか。無理させたかな」
「そ、そんなこと……ありま、ごはっ!」
「水飲んでたか。しばらく休んでいろ。あとは俺がなんとかする」
「それよりいわ……シュウ君はどうしてここに?」
「道端に鞄が落ちてたからな。何かあったんじゃないかと、思って探してたら公園から煙が見えてな」
あー火の玉で樹々を何個か燃やしてたあれか。すぐに消火はされたけど。
「それであれは……」
「師匠!青い髪がファイブと言う火を使う魔族で、赤い髪がウォーブと言う水を使う魔族です。ボール系の魔法だけど、手で殴り飛ばせます。火の玉はお姉さんに水のエンチャントを頂きましたが!」
「お、おう。そんな興奮してどうした?」
「師匠!私は魔法を間近にテンションが上がってます!」
「そ、そうか。こほん。しかし冷静さを欠いてはいけないからな。突然津波がくることもあるんだ」
「はい!周りに気を配ることも考慮します!」
「津波に関してはごめんなさい!」
私が謝るとシュウ君は気にするなと、頭を撫でてくれる。
「真桜が無事で良かった。後のことは俺がなんとかする。ちなみにこの津波は消せないのか?」
「集めたり元に戻したりは出来るけど。一度集めたものを消すことはできないんです」
「そうか。そしたらやるしかないか。よいしょっと」
シュウ君が上に右手を空にかざす。何か重たいものを持ち上げたみたいな感じかと思ってたら、辺り一面が明るくなった。
―ジジジ……
「なんか明るく……って暑くない?」
「おいおいおい!なんだありゃ!?」
魔族達が空を見上げる。すると空には赤い玉が何個か……何十個……いや、何百個?
「樹々を燃やす訳にはいけないし。一瞬で消すから、問題はないと思うんだよな。多少燃えたら、その時は真桜が消してくれ。じゃ、ちゃちゃっとやるぞ。落ちろ」
―ジュ……ジュワァァ…………!!!
赤い何かが水に触れると、辺り一面白いモヤで埋め尽くされる。
「もう大丈夫だよな。消すぞ」
―パチン!
「このままじゃ見えんな。水蒸気は上に登らせるか。それ」
―ビュォォ!!
物凄い風に目を瞑り、開けるといつも通りの公園の景色が見える。
「何本か木が薙ぎ倒されてるけど。街の方までは被害はいってなさそうだ。先に堤防作っておいて正解だったな」
「師匠は一体何をしたんですか?」
「まずは街に水が行かないように土を少し盛り上げて、堤防みたいにするだろう。水が消えないから、高温な火の玉を入れて水を蒸発。その際でた水蒸気と言うか、雲みたいな煙を空に吹き飛ばしただけだぞ」
いやいや、だけって内容じゃないよ。魔法で防御とか出来ないとか言ってたけど。こんな使い方出来るなら、どんな人とも合わせられるんじゃないの?
「さすが師匠です!」
「よせよせ。照れるだろう」
「よ!勇者様!」
「はっはっは」
「さすがめぇちゃんのお兄さんです!」
「そうだろう。そうだろう。誇れる兄であろう!」
「あ、シュウ君……」
「はっはっは……あ!」
「やっぱり師匠は師匠で。めぇちゃんのお兄さんだったんですね」
せっかく鎧で顔を隠して、私も名前を間違って呼ばないようにしたのに。
「2人の会話はいつものままでしたから、すぐに分かりました。それにお姉さん最初に祝さんと言いかけてましたから」
「津波に巻き込まれてるあの時に?」
「はい。僕は耳がいいので!」
ここまでくると私のせいじゃないよね?桐花ちゃんの耳がいいとか分からないし。最後は祝君がバラしてたしね!そう言うことにしておこう。
「そう言えば、あの2人の魔族どこかに行っちゃいましたね」
「ん?そうだな。あれだけの煙幕あれば、見失ってしまっても仕方がない」
「その原因を作ったのは師匠ですけど」
「……戦わずして勝利出来るのであればいいだろう。そう言うことにしておこう」
「かしこまりました!」
「よし!…………学校行くか」
祝君は切り替え早いな〜あんな戦闘があったばかりなのに。
「僕も行かなきゃ!それじゃ師匠またね!」
桐花ちゃんは颯爽と立ち去っていった。
「俺達も行こうか。この公演のことはナギに電話しておくから」
「い、いいのかな?なんかこの前もお願いした時怒ってなかった?」
「イザナミもいなくて暇してるだろう。気を紛らわせるのも大事だし。ナギなら問題ないだろう」
学校に行くまでの間に、祝君は電話していた。向こうから、物凄く大きな声が聞こえたけど。結局は祝君が言いくるめてた。
後でナギさんには私から謝っておこう。後先考えずに思い切りが過ぎたのかも知れない。もっと戦闘に役立ちそうな威力を落とした魔法を覚えないと……私が街を破壊する人みたいに見えちゃうもんね。魔王だけど、そんなことはしたくないから。頑張らないとな!
ファイブ「ウォーブ見たか?」
ウォーブ「あれは異次元すぎたな……」
ファイブ「水が一瞬であんなになるなんて……」
ウォーブ「逃げて正解だったな。あの煙幕には助けられた」
ファイブ「そう!あれは水と火の合体技!私達もあれやりたい!いや、やるぞ!急いで魔界に戻って特訓だ!」
ウォーブ「……言わなかったか?しばらく向こうには戻れないぞ」
ファイブ「よし。ならあの公園でやろう。戻るぞ」
ウォーブ「はいストップ。今は少しでも距離をとろうなー」