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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第2章 向き合う2人の道
40/52

第40話 未来のために頑張る勇者

冬も明けるか?だいぶ暖かくなってきた。そして春になる前からやってくる花粉。

とにかく目がやばい。痒くてじんわり暖かくて……眠くなる。(`=ω=´).。oO


読んでくれた皆様!

ブックマーク、評価、いいね。くれた方々も。

ありがとうございます(*'ω'*)

 真桜が心配していたが、潜在球はただその人の可能性を示すだけ。人によっては終わらせることになるアイテムではあるが、真桜の場合は問題はないだろう。


「は?」


 この声はナギ。真桜の潜在球の結果を見て声をあげている。


「攻撃魔法に防御魔法。これは完全に魔法職の適性だよね?」

「そうだな」

「それと……魔王?何この適性は?」

「さ、さぁ?こればっかりは俺も知らない。どうなんだナギ?」


 俺は冷静でいられているだろうか。適性に魔王とか出てくるなんて、予想外にも程がある。真桜も爺やさんも予想してなかったらしく、今は何も言わないで行末を見守るしかない。


「あ。すまん。こんなの初めてでな。まさか適性に魔王があるなんて……」

「適性に魔王ってことは真桜が魔王になれるってこと?でもいっくんは適性に勇者ってなかったよね?」


 陽が思ったことをそのまま言ってくる。


「ないな。俺は努力で勇者になったからな」

「ふーん。それじゃ真桜は努力なくして魔王に?でもそれだと私達は真桜を倒さなきゃいけないの?そんなの嫌よ」

「俺もそれは嫌だぞ」


 俺が言えるのはここまで。ナギがこれを見てどう言うか次第。その答えによっては、この場でナギとの戦闘なんてこともありえるか?念のため、真桜を守れる位置に立つ。


「潜在球とはその者のマナにより、向かうべき道を示すだけ。それ以上でも以下でもない代物だったんだが……正直分からなくなった。こんな結果は私も知らない」

「あれじゃないの?魔法を司る王で魔王。とにかく魔法適性が高いってことじゃない?」

「その線が濃厚か……シュウに勇者と言う適性も見たことがないしな」

「それで言えば、料理適性があって料理人と出てこないのと一緒じゃない?」

「確かに……そう考える方自然か」


 ナイスフォローだ陽。そう言う考え方であれば、真桜が魔王だと思われることはない。


「すまんな真桜。一瞬だが、君が魔王で倒すべき存在かと悩んでしまった」

「い、いえ!謝らないで下さい。この結果を知って何かされた訳じゃありませんし」

「そう言ってくれるとありがたい。では気持ちを切り替えて、今後の教育方針について話そうか」


 ナギはこれ以上魔王について考えないようにしたらしく、俺も真桜も爺やさんも安堵の息を吐く。て言うか、ここまでのことになるなんて思いもしなかった。まじでこの数分生きた心地がしなかったわ……




 そして俺達は再開した学校に登校。校庭にできた穴は綺麗に整備されて、割れた窓ガラスなんかも元通りである。


「思ったより早く再開したな」

「そうであろう。頑張ったからな!業者が」

「ところでナチュラルにここいるのは、どうしてですか理事長」

「いいじゃない。連日工事の手配と書類のあれやこれで、大人と喋りすぎてつまらなかったんだ。若い子と話すことで刺激を貰おうとしているだけさ」

「別に普通の高校生に刺激なんて……」


 また理事長は何かを嗅ぎつけてきたのか。てか、大人とのやりとりが貴女の仕事なのでは?


「ふっふっふ。聞いたぞ?殺人犯を確保したんだって?人助けをするのは知っているが、警察が手をこまねく案件まで解決するとは」

「いや。それは藤宮がやったんですよ。俺じゃないです」

「あれでしょ?怪しい者を見つけたり指示出しは神野君。それに藤宮君が巻き込まれたと言うか、押し付けられたんでしょう?」

「理事長!?分かっていただけますか!警察に言っても誰も信じてくれず。担ぎ上げられた私を!」

「う、うむ」


 そんな被害者みたいなことを言わなくても。現にあの殺人鬼を倒したのは勇志なんだから。その後に警察や関係各所の調書については……助かったと思ってます。はい。


「普通の人は見ただけで怪しいとか思わないからね。それに人に危機が迫ってるとか、そんな場面で動ける人はほんの一握り。しかし神野君はそれができる。それには何か理由があると思うんだよね」

「別に普通の人でもできるよな?」


 隣にいる真桜と陽に聞いてみたけど。俺の意見は揃って首を振られ否定される。


「私は危ない現場にいても何もできないかも。どうしようって慌てることしかできないかも」

「真桜ちゃんの考えが普通よね。そもそもその辺にいる人が、怪しいとか思って生活してないし」

「そうだぞ神野。観察力に瞬発力があるからって、なんでもできる人はいないんだ」

「別に俺はなんでもできる訳じゃ……」

「そうですね。少なくとも歴史のテストは頑張って欲しいかな」

「姫ちゃん?」


 理事長と話していると後ろから現れた姫ちゃん。


「どうした櫛田先生?」

「それはこちらの台詞です理事長。とっくに予鈴はなってますから」

「まだこれから面白くなるのに……」

「ただでさえ授業が中止になって大変な学生に、これ以上時間を奪わないであげてください」

「仕方がない。では試験明けにまた話を聞きにくるとしよう。それではさらばだ!勉学に励みたまえ若き者達よ!はっはっは……」


 理事長がすんなり教室を後にする。クラスの皆もあまりにもあっさり退場した理事長に顔をぽかんとしている。


「はい。席について下さい。これからの予定を配りますよ」


 姫ちゃんに言われ、配られたプリントを見て俺は驚愕した。


「テスト……だと!?」

「そんな驚かなくても。休講前にちゃんと話もしたし、プリントも配ってるからね神野君」

「そんな!知ってたか真桜?」

「…………」


 言葉を失っている。真桜は知らなかったようだ。


「私は知ってたわよ。もしかしたら学校の修理が追いつかなかったら、もう少し先みたいな話もあったけど。それにテストの範囲とかはプリント出てたし」

「そんなプリント…………」


 カバンから出てきたぐちゃぐちゃなプリント。


「いつのまに俺の鞄に!?」

「いっくん。こう言うのあんまり見ないからね」

「そうだよ。いつも陽が教えてくれるから……」

「休校で休みの日も会ってたけど。色んなことがありすぎて、話すこともなかったから」

「なんでこんな……」

「学生の本文を全うできないのはいけないと、理事長が頑張ってくれたんです。テストを先延ばしにして、夏休みを削る訳にはいかないだそうです」


 粋な計らい!?確かに夏休みが減るのはいけない。しかしだ!それならテストを中止にしてくれても。


「テストを中止にって考えた生徒もいるでしょう。ですが他の高校は平常通り授業をしてますし。うちの高校だけ特別にはできません」

「くっそ!こうなるならもっと滅茶苦茶に戦えば……」

「いっくん。それはここでは」


 そうだった。あのワイバーンを倒したのは、謎の人物になっているんだった。俺がやったとなれば、それこそ警察や関係者が俺を解放してくれなくなる。でもそれならテストも受けなくて済むのでは?


「いっくんの考え当てようか?自分が倒したって言えば、テストなくなるかなって」

「……エスパーか?」

「顔見てれば分かるよ。確かに名乗り出ればテストどころじゃないわよね。そして高校生活どころでもなくなるから、遊んだりできなくなるわ。当然夏休みに真桜と会うこともできなくなる」

「それは……」

「それにいっくん1人でテストを回避するつもり?隣にいる人の顔を見てみなさい」

「隣?」


 真桜の顔がこれまでにないくらい驚いている。俺と陽の会話も聞こえてないようだ。血の気が引くってこんな表情なんだな……なんか見てるだけで可哀想に思えてきた。


「真桜。大丈夫か?気を確かに」

「祝……君。私……夏休み補習で遊べないかも」


 そこか?テストを通り越して遊べないことを心配しているのか?


「夏休みに遊べないなら、私は今までなんで頑張ってきたの?あんな辛い体力作りも無駄になるって言うの……」

「真桜ちゃん。それは生きてく上で必要なことよ?」

「でもでも!遊べないなら、私のこの努力はどこに表せばいいの?」

「そんなに海が楽しみだったの?」

「海ですよ!?それに川遊びやプールも行けません」

「遊ぶ場所が全部水辺なの?そんなに水着を披露したいの?」

「だって〜」


 陽に泣きつく真桜。海に川……そしてプール!


「俺……やるよ。テストなんて全部赤点回避して、夏休みを楽しむんだ!」

「わ、私も!赤点回避してみせるよ!」

「はーい。そこ志が低いのは一旦置いておくとして。授業始まってるので教科書を開きましょうか」

「「はい!!」」

「なんかやる気があるようで……まぁいいか。それじゃそんな深淵さんに教科書読んでもらおうかな」

「はい!全力で読みます!」


 空回り気味な真桜も可愛い……じゃなくて。


 訓練だけにかまけて勉強とか全くやってこなかった。明日がテストって、時間はないから一夜漬けしかない。明日のテストは……


「マジか!明日は社会と理科かよ!しかも保健体育までコンボとか!」

「はいそこー。次読んで下さい」

「姫ちゃん。国語の範囲少し狭まりませんか?」

「神野君。今は授業中ですよ?それに範囲は変えません。あと私は櫛田先生です」

「櫛田先生!後生の頼みです!」

「そう言う時だけ先生って。それでもダメです。試験内容はもう作って提出してますから」

「そうか!明日からなんだから、もう試験は作って当たり前か!姫ちゃんを先生って言って損した」

「こらー聞こえてるぞ。神野君だけ追加で課題増やしちゃうぞ?」

「失礼しました!」

「はい。では深淵さんの次を読んで下さい」


 交渉は失敗に終わった。よく考えれば試験は明日だし、この段階での交渉は遅過ぎた訳だ。過去に戻って事件が起きた時に交渉さえできれば…………それなら普通に勉強するな。


 ―キーン、コーン……


 授業が終わり、俺は貰ったプリントの皺を伸ばす。そして範囲である場所に付箋を貼る。


「祝君。それは何してるの?」

「これは一夜漬けの準備だ。範囲を付箋を貼ることで分かりやすくして、そして出そうな内容に緑色のマーカーで線を引く。さらに問題用紙の解答欄を赤で書き直して……この赤い下敷きを使う」

「文字が消えました!?」

「これを繰り返すことで答えを暗記する」

「凄いです!私もそれやります」

「これ考えた人は天才だよな〜一夜漬けのために考え抜かれた対策」

「いっくん。勉強方を編み出す人はきっと一夜漬けはしないと思うよ」


 そんなはずはない。真に勉強ができる人は、教科書がとっても綺麗であるはずだ。そして書き込まなくてもノートにまとめることができる。日々の積み重ねの努力が天才を生み出すのだ。


「赤い下敷きとペンを買いに行かないとです」

「ペンは貸すよ。赤い下敷きは購買に置いてたはず」

「ありがとうございます!これで明日の試験も頑張れます」


 そして昼休みに下敷きをゲットできた真桜。休み時間に2人でせっせとマーカーを引いていく。途中、陽と勇志が出そうな箇所を教えてくれる。有難い!これで0点は回避できたも同然。


「それじゃ私達は帰るから」

「なんだ一緒にやらないのか?」

「テストは明日だけじゃないもの。一夜漬けは私のやり方じゃないから、自分の勉強方法でやるわよ」

「俺も社会よりやばい強化があるからな。それじゃ」

「そうか。ここまでアドバイスありがとな」

「ありがとうございました!」


 陽と勇志が帰った。他のクラスメイトも帰って行き、気がつけば俺と真桜だけが教室に残っている。真桜は教科書にマーカーを引いている。その顔はいつも可愛い真桜とは違い、凛々しくカッコ良くも見える。時折り、髪が落ちてくるのを耳に掛け直すところなんて色気まで……


「ん?このペン使う?」

「あ、いや。大丈夫だ」

「そう?使うなら言ってね。ってこれ祝君のだ。借りちゃってごめんね」

「いいんだ。真桜に使ってもらえるなら、ペンも本望だろう」

「ふふ。なにそれ?」


 やっぱり可愛いな…………じゃないし!一夜漬けはもう始まっているんだ。俺も真面目にやらなければ。夏に真桜と遊ぶために!


「「…………」」


 沈黙の中にマーカーを引く音。いつもは校庭で部活動をしている人らの声も聞こえない。

 この2人っきりの状況で集中できるはずもなく、微かに聞こえる真桜の息遣いにドキドキしてしまっている。


「……あの」

「ん?」

「そ、そんなに見られると緊張しちゃうよ」

「あ、すまん」

「んーん。教室……誰もいなくなっちゃったね」

「そうだな……」


 マーカーを引く手が止まり、お互いを見つめ合う。夕焼けが眩しいと目を少し細める真桜。


「真桜……」


 気がつけば俺は真桜の髪に触れていた。真桜はくすぐったそうにするが、頬に触れる俺の手にそっと手を添える。


 視線が再び重なる。


 そして俺は真桜へと近づき……


 ―ガラガラ!


「あら?まだいたの?下校時間だからもう帰りなさい」

「姫ちゃん……」


 なんと言うタイミングで入ってくるんだよ……


「あら。マーカー引いて勉強?昔も今も勉強方は変わらないのね。ん?深淵さん顔が赤いけど大丈夫?」

「ひゃい!ゆ、夕焼けがでそう見えるんででで」

「ここは眩しいわね。それじゃ帰りましょう。あとはお家で頑張りましょう」


 姫ちゃんに言われ、俺達は学校を後にする。


「祝君……その……」


 さっきのやつか!?どうしよう。姫ちゃんが来なかったらきっと俺は……ここはどうだったか聞くべきか?嫌がられたらどうしよう。


「さっきのことだけど。真桜は……」

「ペン。返すの忘れてました」

「あ、そっち?いいよ。そのまま持ってなよ。俺は家にも予備があるから」

「ありがとうございます……」


 そのまま一緒に歩いていく。そして俺の服の袖を掴む真桜。


「さっきの……私は嫌じゃないです」

「え?」

「ペン!ありがとうございます!それじゃ!」


 そう言い残して真桜は走っていってしまった。


「体力ついてるな……あんなに早く走れるようになったのか」


 今から走って追いつくのは難しいかもな。体力作りを頑張っている証拠であり、少し寂しくも思う。

 もちろん本気で走れば追いつけるだろう。だけど今は、真桜の言葉に足が地面に縫われたみたいに動かない。


「嫌じゃ……ないね。はは」


 俺の顔が赤いのか。これは夕日のせいか……


 家に帰るまでに冷まさなきゃな。ゆっくり歩いて帰りますか。

陽子「あの2人大丈夫かな……」

勇志「大丈夫だろう。あの勉強法は画期的だからな」

陽子「そっちじゃないよ。2人で教室にいるんだよ?」

勇志「ん?別にマーカー引くくらいできるだろう」

陽子「……藤宮。異世界系のラノベばかり読まないで、恋愛系のも読めば?」

勇志「どう言うことだし」

陽子「勉強が手につかないとかなければいいけど。明日が待ち遠しいわ」

勇志「そんなに余裕なのか?羨ましいな」

陽子「あんたは……まぁ男はそんなもんか」

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