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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第1章 出会う2人の道
4/52

第4話 心配する勇者

前作を目安3,000文字で書いていたのに。今回は倍になる。

区切る作品じゃないんだよなぁ〜

と言う訳で投稿!(´・Д・)σ


読んでくれてありがとうございます(*'ω'*)

 テレビに欲発された俺は、妹と一緒にモールに来ている。


「春休み最終日って事だけあって混んでいるな」

「喉乾いた。タピオカ飲みたい」

「奢りだからって容赦ないな……」

「別に兄貴は飲まなくてもいいよ。私だけ飲むから」

「馬鹿を言え。前菜くらい余裕でいけるわ」

「ほら。あったよ」

「待て待て!置いていくなよ!」


 休み最終日って事あって、こここモールはいつも以上に混んでいる気がする。テレビでやっていた特集もあるかも知れんが。


「しかしいつ来てもここは繁盛してるな」

「まぁ映え社会だからね」

「写真撮りまくるあれか?あれはいかんよな。甘いものへの冒涜だ」

「冒涜って。そんな事言うのは兄貴くらいだよ」

「そんな事はないだろう。時間が経てば氷は溶けるは味が薄まってしまうじゃないか」

「もっと世の中の女心を学んだ方がいいよ。そんな事言っているから彼女も出来ないんだよ」

「ぐふっ!?ナイスブロー……」


 相変わらず俺には容赦ない妹のブロー。心に突き刺さるぜ。


「しかしだな妹よ」

「前の人なんか困ってる?ちょっと行ってくる」

「て、おーい」


 相変わらず世話焼きの性格である。見るとお父さんだろうか?あからさまに困ってますオーラが凄い。横にいる女の子もどうすればいいか分からない感じだ。


「お姉さん初めて?」

「おい。知らない人に声をかけたら迷惑じゃないか?」

「そう?困ってそうだから」

「あ、あの!若い子はタピオカを飲むと言うので、飲んでみたくて。出来ればおすすめを知りたいです」


 おうおう。ぐいぐい来るなぁ。そんなに飲みたいのか必死な様子だ。

 妹は丁寧におすすめと買い方を教える。


「じゅ、呪文!?」

「あはは。初めてだとそう聞こえるよね〜」

「確かにこの手の飲み物は、メニュー指差しで終わらないからな。始めは戸惑うよな」

「そうなんです!」


 うぉ!?ビビった!突然近づいて来るから反射で引いてしまった。


「申し訳ありません!」


 これまた全力で謝られた。俺は別に嫌だった訳ではなく……


「そんな謝る必要はないよ。兄貴は女の子の扱いが苦手なだけだから」


 おい。それじゃ俺がモテない男に聞こえるじゃないか。実際モテた事はないけどな!

 その後は無事ゲットした2人に別れを告げて、こっちは前菜をいただくとしよう。


「さっきの子可愛かったね」

「若いのにタピオカ飲みたいだもんな」

「そうじゃなくて容姿よ。かなりの美人さんだったよ」

「容姿は見ていない」

「あの距離で見ない事とか出来るの?」

「ジロジロ見て、どこ見てるんだとか言われたくないし」

「言われた事あるの?」

「……目つきの悪い兄ちゃんになら」


 あれは本当に怖かった。ただ見ただけでいちゃもんつけてくる奴が、この令和にいるのかと思った。


「そんなんじゃ彼女出来ないよ?」

「別に欲しいとか……思って……ないし」

「強がんないの。私も彼氏とか出来たら、こうして甘いものを食べに来てくれる人いなくなるよ」

「なぁ!彼氏出来るのか!?」

「いや。別にすぐにとは言ってないし」

「俺は彼氏がいても構わないぞ!」

「どんだけ必死なのよ。私が嫌だわ」


 彼氏……妹に彼氏だと?てかまだ中3だろ?早い!早すぎる!


「お兄ちゃんは許しません!」

「別に兄貴に許しはいらないでしょ」

「いや、妹と付き合うなら俺を倒してからだ」

「結婚する訳じゃないのに……」

「け、け、結婚!しかも遊びなのか!?そんな奴、この俺が倒してやる!!!」

「落ち着けー!」


 ―スパーン!


 どこからか取り出したハリセンで頭を叩かれる。どこからそれを?異空間収納が使えるのですか?


「はぁ〜公衆の面前でやめてよね」

「しかし妹と付き合うのであれば、守れる力が絶対必須なんだ」

「この日本で何と戦うって言うのよ」

「それは……あれだ。魔王とか?」

「ぶっ。何それ?そんなのが来たら兄貴でも勝てないじゃん」

「そんな事はない。敵前逃亡されなければ、俺は必ず勝ってみせる」

「もうこの話はいいから。早く飲まなきゃドリンク薄まるよ」


 む。それはいけない。俺と妹が頼んだチョコドリンクに失礼だ。


「甘い!最高だな!」

「ちょっと甘すぎるけどね〜」


 そう言って飲む姿は満足気。にこやかに飲むその姿はどこから見ても可愛い。

 俺はそんな妹に色目を使う野郎どもに睨みつける。


「人は見ないんじゃないの?」

「妹に集ろうとする虫は別だ」

「これじゃこれからも一緒に甘いもの食べに来なきゃじゃん」

「お兄ちゃんは歓迎だ。お前と一緒だと楽しいからな」

「そう」


 素っ気無いぞ。もう少し喜んでもいいだろう。いや、ウザがられないだけでありか?もしかしてこれは妹なりのデレ!?


「今変な事考えたでしょう?後でしょっぱい物を食べさせるから」

「そんな拷問だ!今日は口の中を甘いもので満たしたいのに」

「はいはい。次行きますよ」

「あ、待てって!先に行くと危ないだろう!」

「きの世界に危ないものなん……」


 ―ドン!


「いってぇ!」

「あ、ごめんなさい」


 ほら、言わんこっちゃない。ちゃんと前を向いて歩かないから。


「お。よく見れば可愛いじゃん。こんなひよっこと一緒にいないで、俺らと遊ぼうぜ」


 妹に手を伸ばそうとする虫の手を掴む。


「汚い手で触るな虫ケラが……」

「おい、どうした?」


 わらわらと仲間らしき虫達が寄ってきた。


「こいつが俺の手を掴んできたんだよ」

「…………」

「おい。その手離せや」

「…………」

「なんとか言ったらどうだ!」


 ―ブン!


「ダメ!」


 妹が俺の前に立ち塞がろうとする。俺は妹が前に立とうとするのをを止めて、相手の拳を掴んだ奴の顔面で防ぐ。


「へぶぅ!?」

「あ」


 そのまま手を離すと男は地面に倒れ込んだ。


「なんて事しやがる!」

「殴ったのはお前だろ」

「うるせぇ!」


 大振りの拳を交わし、妹を引き寄せてその場から距離をとる。


「兄貴……」

「怪我をしたら大変だ。お前は俺が守るからそこで見ているんだ。いいな?」

「でも、アイツら4人もいるよ」

「はは。1桁なんて準備運動にもならないさ」


 後ろには妹。そして目の前には倒れた1人を除いて4人の若者。数の有利にニヤニヤと俺を見下している。


「おい。分かってるんだろうな」

「口だけか?警備員が来る前にかかって来い。世界の広さを教えてやる」


 指で来いと挑発すると、若者は素直に真正面から突っ込んでくる。


「兄貴!」


 さて。この世界に戻ってからの初戦闘。今のところ魔法は使えないが、どこまで出来るか確認するにはちょうどいい機会だ。


「なめんな!」


 ―ブン!パシ!


「遅い。それにあからさまに顔狙ってますの軌道。お前ら戦い慣れてなさすぎ」


 ―グイ!


「あでで!?」

「少し捻っただけだ。ほら、次だ次」


 ―ゲシ!


 殴ってきた腕を捻って体勢が崩れた背中に軽く蹴りを入れる。


 ―ビュン!


 若者達の横を過ぎて、蹴った若者は垂直に飛んでく。その距離数メートル。


「え?」

「あー今のじゃ強すぎか。まぁ動体を真っ二つにはなってないから、よしとするかな」


 多分、力を入れて蹴った場合。上半身と下半身がお別れをする可能性だってあった。なので道端の小石を砕かない程度に制御したんだけど。


「お前……何をした?」

「……(鑑定)」


 倒れた若者は……生きてるな。良かった。てか、レベル3って低すぎないか?ステータスギリ2桁って、俺の初期ステータスより弱いじゃん。

 他のやつも似たり寄ったりなステータス。真ん中にいるリーダーぽいやつだけレベル5か。それでもステータスが低い事に変わりはない。


「俺のスキルがなかったら殺してたな……用心しててよかった」


 俺はこの世界に来た際の妹のステータスを見ている。事故で手が当たっても怪我をしないように【手心】と言われるスキルは発動させておいた。

 魔法に関しては使えなかったが、スキルはスロットに入れるだけで自動に発動出来るのは確認済み。

 この【手心】のスキルは相手に致命傷を与えた場合も必ず軽傷で済ませるスキルである。


「いってぇ……」

「大丈夫なのか!あんなに吹っ飛んだのに」

「え?あー軽く擦りむいたくらいだ」

「なんだよ。派手な演出しやがって」


 そう。見た目が派手なダメージでも、対象者に加護を与えて軽傷にまでさせてしまうスキル。正直言って、異世界じゃ使いものにならなかったスキルだが。この世界では俺にうってつけのスキルだ。


「兄貴……」

「どうした?」

「アイツらまだやる気だけど。逃げた方がいいよ」

「そうだな。殺す訳にもいかんしな〜どうするか」


 吹き飛んでも軽傷だったから、アイツらは俺が弱いと認識してしまっている。これじゃ騒ぎを聞きつけた警備員に捕まるのも時間の問題。


「限定スイーツを食べるまで、警察に御用になるのは避けたいな」

「芯はブレないね……って!そんな事より。兄貴が怪我をしちゃうよ!」

「あーその心配はない。秒で終わらす!」


 ―ダン!


 戦う体勢をとろうと地面に足を踏み込む。


「へ?」


 若者達が俺の足元を見て固まる。俺の足に何かあるのか?


「あー地面にはスキル判定ないのか。これは良い事を知ったな」


 地面はアスファルトだから油断していたが、下手に踏み込めばこの辺り一帯地番沈下なんてなるかも知れない。そうなれば妹に危害を加えてしまう可能性がある。


「そっと歩いてぶっ飛ばすの大変そうだな」


 前を向くと若者達はそそくさと逃げているところだった。


「あ。なんで逃げんだよ。まだなんも試せてないじゃん」

「「「「すいませんでしたー!」」」」


 捨て台詞を吐いて逃げる若者達。


「これじゃ……戦わずして買っただけ。不戦勝……」

「兄貴!人が集まる前に逃げるよ!」

「あ、引っ張るなって!?後ろ向きじゃ走りにくい」


 妹は俺を引っ張り人の居ないとこまで引っ張る。


「どうした。喧嘩はしてないんだから、逃げる必要なんて……」

「地面がどうしてあーなったか分かんないけど。修理費なんて言われたら大変でしょう」

「そりゃ困る。しかし、もともとヒビでも入ってたんじゃないか?じゃなきゃアスファルトは割れんだろう」

「…………確かに。なんだよ。ふぅ……あはは」


 息を切らす妹は、急におかしくなったみたいで笑い出す。


「何かおかしかったか?」

「んー地面砕くとか面白くて」

「あれはだな。たまたまと言うか」

「分かってるよ。普通の人が地面砕ける訳ないのに。そのおかげで変な人達は逃げちゃったけど。変な運はお父さん譲りなんだなって」

「確かに。あんな事でビビって逃げるとか可笑しいな。ははは」


 そう。普通の人間は地面を踏み締めて砕く事は出来ないのだ。しかし妹は父さんの豪運を知っている。だからこそあれもたまたま地面が脆かったと認識してくれる。父さんの子で良かったわ〜誤魔化す手間が省けた。


「でも!危ない事はダメだからね!」

「え?でもお前が絡まれたんだ。黙っていられる訳がない。それに危ない事なら俺の前に出ようとしたお前だって」

「私は良いの!」

「それは良くない。言っただろう?妹を守るのはお兄ちゃんの務めだ」

「はぁ〜言ってもしょうがないか……」


 大きなため息で頭を抱える妹。


「でもありがと。ちょっとかっこよかった。ちょっとだけだからね!」

「あぁ。ありがとう」

「それじゃこれ以上何か起こる前にメインディッシュに行こうか」

「そうだな」


 その後、俺と妹はメインディッシュのパンケーキを堪能して帰宅した。限定と言うだけの事はあった。味も量も大満足である。


 そして帰りは何事もなく帰宅。家に帰ると父さんもリビングに居た。


「おう。2人ともどこかに行ってたのか?」

「あぁ。デートだ」

「んあ!?私の娘に彼氏が!」

「あーその反応は兄貴だけでいいから」

「しかし!変な男だったらどうするんだ!そんなやつ……お兄ちゃんが許さないぞ!」

「そこはお父さんじゃないんだ」

「腕っ節で私が勝てる訳なだろう」


 自信満々に言うなよ父さん。めっちゃカッコ悪いぞ。そう言えば、そんな父さんのレベルはどうなっているんだろう?


「(鑑定)」


 レベル1か。やっぱり一般人は皆がレベル1なのかも知れないな。


「もうそんな話はいいから。ご飯出来る前にお風呂入って来なさい」

「私が先に入る」

「おう。いってら」


 妹は風呂に行き、父さんはテレビを見ている。母さんは夕食の支度でキッチンにいる。


 俺はスキルのチェックでもするか。人に対してのスキルは【手心】でなんとかなるとして。物に対してどうにか出来るものはないか……


 ―スパッ!トトトン……トントン


 包丁を使う母さんの手際の良さにキッチンを覗いていると、俺の視線に気づいた母さんが声をかけてくる。


「まだ出来ないわよ?」

「いや。別に催促していないよ。包丁さばきが凄いなって」

「何それ?あんた料理でも興味あるの?」


 向こうの世界では多少の料理をしていた。家で全く指定なかったから、始めはかなり手こずった。おかげで料理スキルもかなり上がったが、母さんのように包丁を使いこなせてないと思う。


「これでも主婦18年やってるからね」

「そっか。でも包丁の使い方は凄いなって思うよ」

「何よ改まって。褒めてもつまみ食いはダメよ?」

「いやいや。子供じゃないんだし。そんな事しないって」


 そのまま母さんは料理に戻る。手の上に豆腐を出して、そのまま包丁を使い手頃なサイズに切って味噌汁の鍋に。玉ねぎの微塵切りなんて、涙も流さずささっとやってみせる。


「(鑑定)」


 きっと料理スキルとかSランクとかあるのかと、簡単な気持ちで鑑定してみた。


「へ?」

「何よ。変な声出して」

「あ。いや、なんでもない」


 料理スキルはSだった。しかし俺が驚いたのはそこじゃない。


 レベル7もあった事と何故か棍棒スキルAだった。あの悪っぽい若者の誰よりも強い。


「母さんは……」

「ん?」


 包丁を持ってこっちを向いた母さんに俺は少し身をひいた。この勇者としてレベルも高いこの俺が?


「なんでもない。何か手伝おうか?」

「あら。今日はどうしたのかしら。甘いもの食べて機嫌でもいいのかしらね?それじゃお皿とってくれる?」

「了解です」


 母さんにはきっと何かある。しかし俺には聞く勇気がなかった。きっと俺には知り得ない世界がきっとあるんだと思った。



勇者「今回は中々にファンタジーしてたんじゃないか?」

妹「エンカウントはしたけど。相手逃げたじゃん」

勇者「俺は相手に逃げられるスキルでもあったのか?」

妹「逃げられるスキルって何よ。でもそんなのあったら結婚した時怖いね」

勇者「そんなスキルあったら、お兄ちゃん泣いちゃう」

妹「はいはい。それを打開する何かを身につければいいでしょ」

勇者「成る程!さすが俺の妹!」

妹「元気が出たならなによりよ。前回の名前で落ち込んでたのも、もう気にしてないみたいね」

勇者「あ!おr……」

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