第39話 頑張ると決めた魔王
最近になって物忘れが激しくなったと感じる。出発前にマスクを持って行こうとして、そのまま駅に着く。ストックを持っていたから別に問題はないんだけど(^ ■^)
世の中では、そろそろマスクしなくてよくなるみたいだけど。このままする習慣が抜けれなそう。
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警察の事情聴取は結局勇志に押し付けていた。祝君が言うになんか長くなりそうだったからだって。
「いいのかな?藤宮君置いてって」
「あー言うのは長くなるんだ。感謝状とか諸々作られたりするからな」
「ふふ。祝君はいっぱい人助けしてるからね」
いつもいいことしてる祝君だから分かるって話だよね。藤宮君は今頃どうしているんだろう。
「さぁ日が落ちるまでは時間がある。ランニングの後は筋トレだ」
「やっぱり私は藤宮君を置いていくなって出来ないよ!」
「はーい。諦めなさい真桜」
「諏訪さん!でもでも!」
「筋トレは魔族と戦うことと関係なく必要なことよ」
「裏切られた!?」
「とくにお腹周りははきちんとすることをお勧めするわ。夏はまだ先だけど、必ず後悔する日が来るの。例えば……」
諏訪さんが私に耳打ちをする。内容は夏と言う季節になれば、肌を露出する機会が多くなると言うこと。ぷよぷよした体を隠す服は、夏と言う季節には通用しない。それを祝君に見られると……
「なんて恐ろしい季節」
「夏なんてどこの国にもあるでしょう?」
「そそそうだね!わ、私の国はそんな暑くなかったし!」
危ない危ない。夏って言う季節は暑い時期のことを言うみたい。向こうの世界ではそんな肌を露出する服は着ないし、なんなら男の人に肌を見せるのはいけないと言われてた。なんでも見せるのは生涯を決めた伴侶にと……
ちらっと祝君を見る。
「ん?どうかしたか真桜」
「あの……祝君は私の水着姿を見たいですか?」
「ぶふっ!?おい陽!真桜に何を吹き込んだ!?」
「何って筋トレする意味を教えただけよ」
「それがどうして……」
「どうなんですか?」
「っぐ…………正直見てみたい。これ俺、変態とかじゃないよな?」
「答えに詰まった時点で下心が見えるわ」
「どうすれば正解なんだよ……」
なるほど。祝君は私の水着を見てみたいと。これは筋トレに関しては、気合を入れてやってもいいみたい。
「よし!私頑張る!」
「その意気だ。それでは家でやるとしよう」
「はい!」
なんてことを思ってた私ですが、後悔しましたね。騙されましたね諏訪さんに。まさか2人はグルだったのか!?
「ここまで筋力ないって、真桜はどう言う生活してきたのよ」
「どう……って。普通……だとぉ!ぬぬぬ!」
腹筋ってこんなに疲れることなんですね。それでも私はなんとか10回出来ました。
「あと90回。さぁ頑張るのだ真桜」
「本気ですか?私、死んじゃいますよ?」
はっきり言って10回でこれなんだから、これをあと90回もやったら死んじゃう。お腹が自分のものじゃないと思えるくらいプルプル震えてる。
「真桜さんは大切に育てられましたよ。危ないことは極力避けて、走り回ることもしてこなかったですし」
「どこかのお嬢様でもしてたの?よく生きてこられたわね」
「諏訪さんは……どうしてそんなにできるんですか?」
「適度な筋力は必要だし。こう言うのは毎日の積み重ねが重要だし」
「その通りだ巫女よ!体あっての魔導士。ぼーっと立って詠唱するなんぞ愚の骨頂!的にしてくださいと言っているものだ」
「別に私は魔導士でもないけど」
「それでは戦士希望か?しかし適性は後衛だと思うんだがな」
魔導士……適性……私もそうなのかな?でもどうしてそれが分かるのかな?
「なんでそんなこと分かるんだ?」
「体から出ているマナを見れば分かるだろう」
「ん〜分からん」
「魔導士の適性があるものは、体からでるマナが体を覆うように漂う感覚とでも言えば分かるか?」
「なんとなく。でも前衛だって体にマナを纏わせて戦うじゃないか」
「それは上級者の話だな。しかしマナの扱いに慣れていない者は、体から無駄に垂れ流すものだ。とくに前衛は単純だからな。力を入れるところから集中的に噴き出す感じだ」
「ふーん」
魔力が覆うように漂うか。意識したことないけど、確かに魔法を使う時はマナを纏わせると言うか集めるかな。
そんなことより気になることがある。私は別にマナの扱いに慣れてないわけじゃない。向こうで体はあまり動かしてないけど、魔法は結構遊び感覚で使ってたんだけど。
「そうなんだ。真桜も後衛?」
「あぁそうだな。しかし真桜のそれは少し違うがな。すでにマナに愛されてると言うか。マナの流れは雑ではあるが、量がそれなりにあるようだ」
「そんなもんか。それじゃ勇志は?」
マナの流れが雑!?私はこれでもお母さんにちゃんと魔法を教えてもらって……ないな。
お母さんは見て覚えろって言ってたし、他の人達は危ないからお城で魔法は使っちゃダメって教えくれてない。今更だけど私はこの魔法を独学で覚えたんだ。
「まだ魔力量は微力だが、繊細な流れを感じる。後衛でも癒しを専門にするといいだろう」
「お。ヒーラーか。そりゃ助かる」
ぐぬぬ。ヒーラーが必要だったの?私も祝君に必要とされたい。今から癒しを覚えるって言うのも出来るかな?
「ナギさん。私に癒しの魔法を教えて下さい!」
「さっきも言ったが、真桜は攻撃型の後衛が向いているんだが」
「それでも出来ないって訳じゃないんですよね?」
「どうだろう。量が多いのに操るのに長けてない場合。もしかすれば相手が吹き飛ぶ可能性があるんだぞ」
「え?」
「攻撃は魔力操作が苦手であっても、とりあえず前へ飛ばせば自分達に被害はない。しかし癒しは魔力を流せばいい訳ではなく、その者の治癒力向上させる程度じゃなければならない。過度なマナの摂取は身を滅ぼすからな」
何それ怖いんですけど。私が治し方を間違うと吹き飛ぶの?
「真桜は攻撃魔法を覚えて欲しいな。俺は前で戦う訳だから、背中を任せるなら強いアタッカーがいい。真桜なら信用出来るし、それじゃだめかな?」
「ダメじゃない!私、祝君の背中を任される!」
「はは。それじゃ頼むな」
「…………真桜のやる気はシュウだけのためなんだな」
「今気がついたのナギさん。女なんて案外そんなもんよ」
「君もか?」
「私は……どうだろう」
祝君が私に任せるって言ってくれたから、私は攻撃を中心に学んでいこう。後は補助ができるような魔法もあればいいな。
「うーん!何から始めればいいか迷っちゃう。魔法って楽しいんだね!」
「そうだぞ〜だから体力作りは必須だ。後ろにいる人間が体力がなくついていけなければ、前にいるシュウは進めなくなるし。魔法を使う間に襲われれば魔法は使えず、ただのお荷物。しかし筋トレをして体を鍛えていれば大丈夫」
「どこが大丈夫?」
「敵の攻撃を避ける反射神経。そもそも機敏に動ける体があってこそ」
「まぁ確かに……」
「いいか?シュウについて行けるようになるんだ。そして敵の攻撃を回避しながら魔法で支援。シュウもその方が安心だろ?」
「まぁそうだな」
祝君が言うんだったら、そうなのかもしれない。よし、ここは頑張らなきゃ!
なんてことを思って数分……嘘です。何時間経ったか分かりません。
「大丈夫かー真桜?」
「……」
「いっくんの呼び掛けにも答えられないみたいね。まぁいきなりあれだけの回数やればそうなるのかもね」
「陽はまだ余裕そうだな」
「余裕ではないわよ。でも夜やっているが少し多くなっただけだし」
「ではお待ちかねの魔法を学ぶ時間だ」
「……」
「手を上げようとしているから、やる気はあるようね」
声が出ない。そして手を挙げようとしたけど挙がらない。そんな私の気持ちは諏訪さんが汲んでくれた。ありがとう。
「とは言え適正が分からなければ鍛えようがない。なので2人にはこれを使ってもらう」
机の上に何かを置いたナギさん。私は床に寝ているから、それが何か全く見えない。起きろ私!祝君の役に!
「真桜は起きないから。先に陽子がやるか」
「こんな水晶で何が分かるの?占いでもあうるの?」
「まぁそんなところだ。しかしこれは俺とイザナミが作った特別なアイテムだぞ」
「懐かしいなこれ。向こうに行った時にやったわ」
「これなんなの?」
「向こうでは潜在球と呼ばれていたな。その人の適性があるスキルが分かる代物らしい。原理はどうなっているか知らないけど」
「ふーん。よくある魔力判定する魔導具みたいなやつとは違うのね」
水晶で占い?スキルが分かるって私がやっても大丈夫なのかな?体が動かないので祝君に顔だけ向ける。それに気がついてくれた祝君が、追加で話してくれる。
「仮に今スキルを持っていても、それが適性じゃないとここに出ないんだ。だからやった事がなければ、一度はやっていて損はない。その人の才能は神も分からない。だったか?」
「そうだな。私達は世界の均衡を守ったり、行末を見守る者。人を生み出し、人生を操るようなことはしない」
「そうなんだ。神様ならできそうだけど」
「そんなことしたらつまらないだろう。どんなのが出てくるか、ドキドキしながら見守るのが楽しいのではないか」
「その言い方は出来そうだね。でもやらない。理由も気持ちは分かるから、本当にランダムなんだね……」
そっか。それなら私がそれに触れても問題なさそう。私もやり…………無理。立てない。
「先にやってもいい真桜?」
「……」
寝てるから頷くこともできず、親指だけたてておく。
「良いってことね。これ触ればいいのよね?何も反応ないとかあるのかな?」
「本来はマナを授かったばかりの子供がやるものだから。微力でもマナがあれば問題ない」
「なんかドキドキするわね。適性なしとかって可能性もあると思うと」
「それはない。どんな者にも力は備わるものだ。それが世界が違うものでも」
「さ、触るわよ……」
触った?触ったのかな?なんで誰も何も言わないの?結果が見えてるのか、それとも見えないものなのか。何がどうなっているか分からないから気になる。動け私……無理!
「ほう。これは面白い。さすがは巫女と言ったところか」
「何これ。こんな適性あんの?俺もこれ欲しいんだけど」
「これすごいの?よく分からないんだけど」
「…………私。にも、教え……て」
なになに!その気になる言い方。もしかしてこのまま私には内緒なんてないよね?
次回に続くとかないよね!?
全身の力を振り絞り、立ち上がる私。
って言う想像をした。結局は祝君に抱き抱えられて、私は諏訪さんが触った潜在球と呼ばれる水晶を見る。
「調理ってことは料理が上手になるってこと?」
「まぁそうだな。野営で役に立ったり、料理人を目指すなら適性必須だな。じゃなくて、もっと驚くべき適性があるだろう?」
なんとか喋れるまでに回復した私は、気になった料理の適性に目が言った。あれは欲しい。女の子なら絶対欲しいスキルだ。
じゃなくて、驚くべき適性……って、これかな?
「呪術?」
「それだよ!いいな〜陽。俺もそれ系統欲しくて頑張ったけど、無理だったんだよ」
「呪いよ?あって嬉しいものじゃないでしょう」
「そうでもない。この適性は誰にでもできるものではない。心が正しいと判断されたものにしか現れないものなのだ」
「なんで?呪術なんて、危ないイメージしかないじゃない」
「だからだ。悪人がこれを持てば人々を、そして生きるもの全てに影響を与えてしまうだろう。だからこの手の適性は邪な気持ちがあるものにいかないようにしていたはず」
「おい。それじゃ俺が邪に聞こえるだろう」
「違うか?シュウであれば相手を弱体したり、触れずに倒すことしか考えないだろう?」
「まーな」
呪術は正しい心の持ち主しか使えないのか。諏訪さんにぴったりだと思った。
「呪いは相手を生かすことも殺すこともできるもの。だからこそ巫女であり、心が清らかな陽子が選ばれたのだろう」
「そ、そう何度も言われると照れるわ」
少し顔を赤くする諏訪さん。他にはないみたいだから、適性は料理と呪術ってことなのかな。この2つが合わさると……
「とにかくすごいことは分かったけど。料理と呪術が一緒で見えるのって、怪しいものに聞こえるわね」
「それは俺も思った。なんか大きな鍋で何か作りそう」
「そうそれ。なんか魔女っぽい」
確かに。でも諏訪さんなら変なものは作らない。そう感じるのは諏訪さんだからかな。
「ところでいっくんはこれでなんの適性が出たの?」
「俺か?」
「それは私も気になります。どうだったんですか祝君」
「んーなんて言えばいいのかな?」
「そんな勿体ぶらずに言っちゃいなよ」
「別に隠す必要はないけど。剣撃だろ?後は格闘技に攻撃魔法だろ。後は破壊とか……」
「物騒なものばっかりじゃない」
「そうでもないぞ?修復って言うのもあるし。あとは…………正直言って、多すぎて覚えてない」
さすが勇者だね。適性がたくさんあってすごいよ。
「前衛に向いている場合は、4種類くらいの適性がある者もいるからな」
「やっぱり勇者ね。それ以上あるんだし」
「照れるな」
「本来なら治癒や守護なんかもあったはずなんだがな。シュウにはそれがない。ガッチガチの前衛。攻撃馬鹿だ」
「照れるな」
「いっくん褒められてないよ?」
さすが祝君!攻撃こそ最大の防御って言うからね!
次は私の番かな!どんなスキルがあるのか……ドキドキする。
陽子「適性とか一気にRPGぽくなったわね。でも呪術か……」
祝「いいじゃん呪術。状態異常に継続ダメージみたいなコンボもできるんだぞ?」
陽子「私はいっくんみたいに、そんな戦いたい訳じゃないから」
祝「えー勿体無い」
真桜「祝君は呪術がどうして欲しかったんですか?」
祝「だって呪いだろ?ってことは邪眼とか、邪眼みたいなかっこいい力が使えるんだろ?」
陽子「厨二全開ね。私はそんな力が……」
ナギ「言っておくが目が光ったり、目からビームとかはないからな」
祝「え!?そんな……」
ナギ「そんな人としておかしいだろう。魔物ならある可能性はあるが。基本ベースを崩すようなことはしない」
陽子「いっくんには悪いけど。正直ほっとしたわ」
真桜「元気出して祝君」