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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第2章 向き合う2人の道
38/52

第38話 実戦を重んじる勇者

色々とバタバタしてまして、投稿遅れてすいません!ようやく書く時間が出来ました!


読んでくれた皆様!

ブックマーク、評価、いいね。くれた方々も。

ありがとうございます(*'ω'*)

 突然の真桜が戦うと言い始めた時は、正直言ってドキッとした。あとで聞いた話だけど、何かあった時に突然魔法を使ったら不自然だからと意外にも考えているんだなって思った。


「それでこの状況はどう言ったことでしょうか?」

「ん?真桜から聞いてないんですか?」


 この時間は本来であれば学校がある。しかし昨日の騒動で学校は休校。それをナギに話したら全員を呼ぶように言われ、公園に真桜と陽に藤宮を連れてきた。


「爺やさんはどこまで聞きました?」

「私は魔物が学校に現れて、神野君がそれは鮮やかに粉微塵にしたと」

「粉微塵って。倒したら黒い霧になって消えただけですよ」

「黒い霧ですか?」

「あーそれは例えですよ。なんて言うか粒子になったって感じです」

「ふむ。おかしいですね。魔物は普通倒せばその場に留まるはずですが」

「俺もそう思ってはいるんですけど。せっかく倒したのに素材も何も出なかったし。魔物の素材ってこっちじゃ未知じゃないですか。売ればいいお金になると思ったのですが」


 学園での出来事を爺やさんと話し合う。向こうの世界では魔物の素材を剥ぎ、武器や防具にしたりする。当然全部を使うわけではないので、余った素材は売り資金調達が基本。それが出来ないとなると、武器なんかの修理や交換が出来ず戦えなくなる。


「それはそうと。何故学校に現れたと思いますか?」

「これはナギにも言ってませんが。おそらく俺か真桜の魔力に引っ張られてるのかと思います」

「やはりそう考えますよね。私も同じ考えです」

「それにイザナミ達はこの街に来る時、マナを向こうから持ってきているみたいなので。向こうの世界からこっちに来る際、通り道とか道標的な何かがあるのだと考えてます」

「ふむ。その考えが有効でしょう。そう言うことなら、尚更この訓練は重要になってきますね」

「当の本人はそこまで考えているのか分からないですけど」

「いえ。真桜さんなら考えると思います。ですが、今は後悔していると思いますけどね」


 ―ポテポテ……


 公園の外周を終えた俺と爺やさんは、目の前を重い足取りで走る少女を見る。


「どうした!シュウの助けになりたいのだろう?そんなんではついて行くことすら出来ないぞ!」

「ぜーぜー、ひゅーひゅー……ひゃい」

「はぁはぁ……やっと終わった……」

「お疲れ様さん陽」

「ふぅ〜相変わらず体力お化けよね。息切れ一つないとか」

「そうか?公園を2周くらい準備運動にもならんだろう」

「一周8キロくらいあるのよ?」

「そう言っても陽もいいタイムだと思うぞ」

「それでも……爺やさんにも負けてるし」

「ほほ。私は普段から走ってますから」


 走り終えた俺と爺やさんは、ストレッチをして真桜が走り終えるのを待つ。途中から陽も合流していたが……


「ぜーぜー……しんど。なんで俺まで……」

「真桜遅いな」

「もしかして襲われたりしれないかな?」

「それは大丈夫かと。隣にはナギさんもいらっしゃいますし、あと2キロといったとこでしょうか」


 爺やさんが視線を真桜のいる方へと向けている。2キロ先が分かるってすごいな。


「いっくんは分かるの?」

「何が真桜の位置?」

「そう。勇者って言うくらいだから索敵くらい出来るのかなって」

「勇者ならなんでも出来ると思うなよ。俺は戦闘特化型だから、頑張れば出来るが疲れるから緊急時以外やらん!」

「威張ること?でも本とか見てたけど、遠くからスナイプされたり、逃げた相手を追ったり出来なくない?」

「その偏った本の知識は置いておくとして。遠距離攻撃は射程内に入ってから避けるか切り落とすし。逃げる相手は俺は追わない。戦いたければまた向こうから来るだろう」

「あーいっくんならそうなるよね。今やらないのはナギさんがいるから?」

「そうだな。伊邪那は危なっかしいが、ナギはその辺信用できる」

「いっくんが信用するって意外だな〜でもなんとなく分かる気がする」


 くすくす笑う陽。俺だって人を信じる心はあるぞ。一体俺のことをどう思っているんだか。




 しばらくすると真桜とナギが戻ってきた。真桜はその場に崩れて寝そべる。女の子がそう言うのは良くないと陽が注意をするが、本人は体が言うことを聞かないとそのまま寝そべる。


「この世界においてレベル上げとは基礎訓練でも上がる……はず。本当は戦闘訓練1番なんだが、魔物がいる訳でもない」

「都合よく弱い魔物が出てくればいいな」

「そんなお約束的な展開はない。弱い魔物がこの世界に来る前に、途中でマナ切れで異空間行きだ」

「あそこにいる奴ボコるのは?」

「いっくん。それ本気で言ってる?」

「割と。アイツ少しおかしいから」

「ん?レベルは3か。少し高いが何があるのだ?」


 そうか。ナギはレベルが見えてもスキルとか種族は見えないのか。


「アイツは人であるが、スキルと称号が少しおかしい」

「おかしいとは?」

「短剣Dランクに殺人鬼とある」

「え?」

「ふむ。そう言う奴は倒して問題ないのだな?」

「ダメダメ!ちょっと何言ってるの!?そんな奴、私や真桜に戦わせるつもり?」

「いや。今はパーティ組んでるから、やるのは俺1人だぞ」

「それにしたっていきなり人を襲うのも……」


 ん〜大義名分がないと。突然襲ったらこっちが犯罪者か。


「別にシュウがやらずとも勇志がいるだろう」

「ちょっとナギさん!?」

「心配ない。強化は私がする。あのくらいのレベルでは傷一つつかないと保証しよう」

「そうは言っても殺人鬼って……」

「平和な世界と言ってもそう言う奴は、どこかに潜んでるってことだな。あれだけ堂々としてれば疑う人はいないだろう」

「でも神野は気づいたんだよな?」

「ん?堂々としているが、周りに視線を配ってるからな。俺は警戒してますって言ってるようなもんだろう。普通の人ならそんなことしないし、誰かといるなら相手を気遣ってるのかなって思うかもだけど」


 人の中で堂々と歩いてはいるが、目線が明らかにおかしいし。


「ちょっと声かけてみるか。もし相手が動いたら頼むな勇志」

「俺じゃなくても神野がやっても同じなんだろ?なんで俺にやらせるんだよ」

「何を言う。経験値と言う数字は誰でも簡単に得られるが。実戦はそれにも勝る経験だぞ?」

「いや、それでも……」

「つべこべ言わず行くぞ。ナギ、強化は頼んだ」

「任せろ」


 嫌がる勇志を引っ張り、怪しい男に向かって歩く。相手も俺達に気づいたらしく、懐に手を忍ばせる。短剣のスキルがあったし、きっとナイフあたりを忍ばせてるんだろう。問題ないな。


「おい。そこのお前」

「なんだね君は?」

「俺はただの学生だ。少し勘のいいな……殺人鬼さん」

「っく!警察か!?なんで分かった!」


 懐からナイフを出した男。


「え?何?」

「あー。皆さん!逃げて下さい!」

「きゃー!」

「うわぁー!」


 周りにいたギャラリーを煽り一斉に散らせる。これで周りに被害が行くことはない。何かあれば俺がサポートすればいい。


「くそ。こうなればやるしかないな。どうせ捕まれば俺は死刑だ」

「この国は甘いから、内容によっては刑が軽くなることだってあるぞ〜」

「知るか!」

「おい。煽るな神野。相手はナイフを持ってるんだぞ?」

「大丈夫だぞーナイフでもお前は傷つかない」

「良かったな。ナギが大丈夫だって」

「どこが大丈夫なんだよ!?俺は丸腰なんだぞ!」


 勇志は心配性だな。丸腰が嫌なら……あれでいいか。


 ―シュン……シュン


「ほれ。これでお前は丸腰じゃない」

「…………これは?」

「木の棒」

「いや、これ木材だろう」

「何言ってるんだ?木の棒は歴代の勇者の初めの武器じゃないか」

「ゲームの話な?」

「ごちゃごちゃ……言ってんじゃねーぞ!」

「ほら来たぞ。いけ勇志!」

「どこぞのモンスターみたいに言うな!あーもうやけだ!」


 ―バシ!


 ナイフで突っ込んでくる男に、勇志は冷静に木の棒で手に当てる。これと言って得意なものがない勇志だけど、剣道の授業とか真面目に受けてるから長物持てばそれなりに扱えるはずだ。


「っく!?」

「ほらほら。それで終わりじゃないぞ?」

「受かってる!めぇぇーん!!」


 ―バキィ


「っが!?」


 綺麗な面が決まったな。相手は防具もないからこれで終わりか。泡吹いて倒れてる。


「はぁ……はぁ……倒した?」

「おめでとう。レベルアップだ」

「私の強化もいらなかったな。見た目によらず意外に動けるんだな勇志」

「ナギさんの強化があったから落ち着けたんですよ。刺されて死ぬとか考えなくて済みましたから」

「そこまで信用されるとは悪い気がしないな」

「え?」

「強化はしていたさ。しかしこの世界の武器がどうなのか分からないからな。あのナイフが龍族のそれで作った物であれば、私の強化を破った可能性もゼロではない」

「ちょっと!?それって危ないじゃないですか!」


 あーそれは俺も考えてなかったな。相手がそんな装備を持っている可能性があったかもしれないのか。何事もなくてよかったな勇志。


「神野はあのナイフが普通のだと気づいてたから、俺に戦わせたんだよな?」

「……勿論だ」

「その間はなんだよ!?剣とかも鑑定出来るんだろう!?」

「……俺は勇者だぞ。任せろ」

「だから間が!そして答えになってないぞ!」


 勇志が抗議をしているが、俺は笑って聞き流す。問題ないから良かったじゃないか。それに装備だってちゃんと戦闘前に用意したじゃないか。


 ―ピピー!


 騒ぎを聞きつけ誰かが通報したんだろう警察がやってきた。公園の中なのに、随分と早い到着だな。日本の警察も優秀って少し思った。


「君達、大丈夫か?」

「はい。友達が戦ってくれたんで」

「そうか。しかしナイフを持った相手に向かうのは危ないからな。とにかく怪我がなくて何よりだ」

「俺は好きで戦った訳じゃ……」

「っし」


 勇志に何も言うなよと口に手を当てて伝える。それに気づいた勇志は何も言わなくなる。言ったところで誰が信じるかって話もあるが、無駄に心配や詮索されても面倒だからな。


「君!大丈夫か!?犯人に刺されたのか!?」


 倒れて肩で息をしている真桜に警察が駆け寄る。あーそう言えば真桜の存在忘れてた。


「ぜーぜー、ひゅーひゅー……」

「息が荒い……誰か救急車を!」

「あー大丈夫です!公園で走ってて疲れてるだけですから!」

「そ、そうなのか?紛らわしいな……」


 そう思う警察も仕方がないか。しばらく経ってるはずだけど、真桜はいまだに立てずにいるし。それにしても本当に体力ないな……


「よし。次は筋トレだ。ここは忙しそうだから場所を移すぞ」

「ちょっと君達。ことの説明を署に言って聞きたいのですが……」

「……シュウどうにかしろ」

「国家に逆らうのは悪手ですよ。ここは素直に言うこと聞きましょう」

「仕方がない。今日の訓練は一旦中止だ」

「…………やった」


 大変な事態に気づかなかった真桜。中止になって密かに喜んでいたのは言わないでおこう。

勇志「あー今になって手に汗が……」

陽子「よく戦えたよね。藤宮って意外にも男気あったんだね」

勇志「意外には余計だが……正直言って俺も驚いている」

祝「さすが勇者。じゃなかった勇志。伊達に強い相手にボコられてないな」

勇志「あーだから動きが遅く見えたのか。桐花の攻撃は早いから」

祝「桐花はレベル6あるからな。そんな相手と比べたらさっきの奴じゃ役不足だったか」

勇志「そうか。桐花はレベル6……え?俺、そんなのにボコられてた?」

祝「本来ならレベルが上がってもいいが、倒せてないしな」

勇志「俺、もっと前から死にかけてたのか……」

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