第36話 変化を求める勇者
第2章始めます!昨日あげたかったけどメンテだったって言う奇跡。大人しくスマホでゲームしてましたw
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昨日はなかなかに充実していると感じた。久しぶりに剣を使ったからかな?それとも真桜に気持ちを伝えられたからかな。
「いい朝だ……」
「カッコつけてるところ悪いけど。もう8時だよ」
「なんだと!?」
「いってきま〜す」
「え!マジか!なんで寝坊なんて!」
床を見るとぶっ壊れた目覚まし時計が転がっている。
「ふむ。無意識に投げつけたか?」
「祝〜ご飯どうするの〜?定番の食パンにマーガリン用意しておいたわよ〜」
食パンかじって走って出ていく定番のアレか!
「あーでも歯磨きできないから、食べてからいく!」
「はーい」
大急ぎで着替えてリビングにいくと、パンとコーヒーが用意されている。
「はぐはぐ!」
「コーヒーは火傷するからアイスにしてみました」
「神か!」
「いやね。お母さんよ」
数秒で突っ込んだ食パンをアイスコーヒーで流し込む。その後急いで洗面所へ。髪を直しながら歯を磨く。
「よし。それじゃ行こうか」
「いってらっしゃい。車に気をつけるのよ」
「今の俺なら車を吹き飛ばせそうだ」
「うん。それ試しちゃダメなやつだからね」
「分かってるよ母さん。いってきます!」
扉を開けてスマホで時間を確認。25分で教室に行けばいいんだな。
「残り15分……余裕だな!」
俺の脚力ならこれくらい訳ないぜ。しかし俺にもどうしようもないのが信号。
「急いでる時に限って赤になるよな……誰かが遠隔操作でもしているんじゃないだろうか?」
信号無視して走り抜けてもいいけど。それこそ車を轢いて逆に時間ロスになることは目に見えている。
「最後の信号!まだ青だいける!」
時間もだいぶ短縮出来た。この信号さえ渡れれば……
「このタイミングで点滅だと!?」
右左をよく見て誰もいないことを確認。そして少しだけ足に力を入れる。
―ヒュン
風を切る音。俺は今、風を置いていく速度で走り……
「祝君?」
曲がり角から真桜に声をかけられる。こんな時間なのに真桜は余裕だな……いや、額には汗。ここまで走ってきたけど、体力の限界で諦めたんだろう。
このまま無視して行けば、信号に捕まらずに渡り切ることができる。そうすれば真桜は信号に捕まり結果遅刻するだろう。
「真桜!バックを抱えるんだ!」
「え?こ、こう?」
「行くぞ!」
「ひゃぁ!?」
バックを抱えた真桜を抱き抱える。刹那の時間で俺は全てを叶える判断をした。
それにしても真桜は軽いな。人を1人抱えても俺の速さは変わらず信号へと突っ込む。
―ブゥゥン……
な!このタイミングでその速度で曲がってくる車がある。真桜を抱えて信号に突っ込んでくる俺と目が合う。
驚いた顔をした運転手だったが、我にかえりブレーキを踏む。
「こんな時に刺客か!?真桜と俺を車で轢くとは考えたな」
「へぇ?」
「だが俺は止められない……てかこんな速度で急に止まれない。ここは更なる加速で切り抜ける!」
「ひゃぁぁ!?」
足に更なる力を加えて俺は音を置き去りにした。
―ヒュ……
そして信号を渡ってからの旋回!
―ダン!!
そしてこの速度を維持。少しずつ減速して高校までの坂道を駆け上がる。後ろの車は信号半ばで止まっているのは確認できた。俺の姿を見失ってキョロキョロしている。っふ、素人に俺は止められないぜ。
「あの信号に捕まらないのはでかいな。もう学校だ」
「はわわわ」
「もう着くぞ真桜。しっかり掴まってろ」
門の前には生活指導の先生がいつものように立って待っている。
「ん?コラー神野!お前はまたそんな風紀を乱すことを!」
「遅刻しそうなんで勘弁!」
「あ!こら!」
これはあとで呼び出しをくらうかも知れない。遅刻するよりはマシだと言うもの。今は注意を無視して学校内に突入する。
「あとはあの窓まで飛べば……」
「すとぉぉぉぉぷ!」
「はい!」
門を越えてすぐに真桜が叫ぶ。
「ここまで来たらもう大丈だから。2階に跳ぶとか変なことしない!勇者ってばれちゃうからね」
「そうか?流石に壁を走るのは怪しいか。それなら真桜を2階に投げて、俺が上でキャッチ。落ちてくる真桜より速く着地地点に行くには、少し強めに投げるか」
「だーかーらー!そんなの普通できないから!」
今日はご機嫌斜めか?俺ならそれくらい余裕だと思うんだけど。
「まったく……祝君は仕方がないんだから」
そう言ってはいても真桜は、どこか嬉しそうに優しく笑っている。怒ってはいないだろうからいいか。
―キーンコーン……
「予鈴だよ!はやく行こう!」
走る真桜は下駄箱に向かう。
「そうか普通に下駄箱から行くんだな」
「普通以外の選択肢は捨て欲しいです」
「真桜が言うなら従うか」
「今までどうやって生きてきたのか不思議だね。よくばれなかったね」
「昔から車に轢かれても無傷だったからな。皆も慣れたんだろう。そのうち真桜も慣れると思うよ」
「車に轢かれるとか非日常に慣れないようにしたいけど」
そんな非日常だろうか。俺1人では分からんから、こう言う時はアイツに聞いてみよう。
「俺の行動は非日常的なのか?」
「え?いっくん自覚ないの?」
「祝がそう考えていたとは……予想通りだ」
「ほら。諏訪さんも渡辺君もこう言ってるじゃん」
「いや待て。まだ2人は俺を何も言っていない」
「非日常って言うか、常識をお母さんのお腹に置いてきてるよね」
「そうそう。普通考えつくことから、明後日な行動をとるのが祝だろ。非日常と言うか非常識かな」
「非常識って……こんな常識を守る俺が?」
「一度辞書で常識って調べてみたら?」
陽にそっと辞書を渡されたので、一度調べてみることにした。
「常識とは社会的に当たり前と思われる行為、その他物事のこと。ふむ……え?常識って俺のことじゃん」
「「「え?」」」
「3人でハモるな。だってそうだろう?車に轢かれそうな人を助けたり。落ちてきた鉢植えで誰か怪我しないようにキャッチしたり。結果は人を助けることだろう?」
「……いっくんの常識って言うか。なんて言うんだろう?」」
「基本スペックが高すぎて、ネジが何本かぶっ飛んでるな」
「人助けはいいことですけど……なら私を抱えて坂を駆け上がるのは、あれは非常識だと思う」
「「確かに」」
2人が真桜の意見に同意する。ちょっと待て。あれにはちゃんとした理由があるんだぞ。それを説明した上で判断して欲しい。
「ってことで、信号で足止めされたら遅刻するだろ?常識的に遅刻はよくないよな?」
「それはそうだけど」
「だから俺は真桜を置いていくとか、一緒に待つ選択をしないで抱えて走り抜けた訳だ」
「うーん。そうなるならはやく起きればいいんじゃないか?」
「「うっ!?」」
今日は少し寝坊した俺と真桜は、ど正論な新の意見に反論できずにいた。
「寝坊してしまったものは仕方がない。それをカバー出来るように行動するだけだ」
「私は諦めて歩いたけど」
「この場合は真桜ちゃんが常識的よね」
「そうだな。人を抱えて間に合うような脚力はないだろうし」
どう言うことだし。遅刻はいけない。これが常識だろう?寝坊したら遅刻してもいいが正解だと言うのか?
「はーい。出席とりますよ。皆さん席について下さい」
「そうか。この答えは先生が持っていると思うんだ」
「どうしたの神野君?」
「姫ちゃん!遅刻するよりはしない方が常識的ですか?」
「それはそうだけど。そもそもに先生をちゃん付けで呼ぶのは常識なのかな?」
「姫ちゃんにおいては、それがこのクラスの常識では?」
「ちょっとなに頷いてるの?私は櫛田先生なんですよ!」
この常識はあっているようだな。俺は至って普通に接している。
「はい。神野君に常識があるかは置いておいて。あとで職員室ね」
「はい……って何故ですか?」
「え?建石先生に名指しで呼ばれる理由があるでしょう?」
「え?ないですよ。俺の行動は常識的ですよ?」
「女の子を抱えて登校するのは、常識では考えられないと思うな〜」
「おいおい。なんで皆で頷くんだよ。遅刻しないための行動だぞ。何か言ってくれ委員長」
「いっくんが悪い。大人しく出頭しなさい」
「同意だ。そもそも女の子を抱える時点で常識がずれている。風紀的にも人としても」
俺は犯罪者かよ。藤宮に関しては人としてとか言われてるし。
「解せぬ……」
「はーい。出席とって授業しますよ。常識を学ぶための国語を」
こうしていつも通り授業が始まる。伊邪那は休みになっている。風で休みだと連絡があったらしい。皆はさして気に留めていない。まぁ異世界に行っているとか誰も思わないよな。
そして昨日の公園での出来事は、何事もなかったかのように話題にすら上がらない。
「あーそれ?ナギさんが公園整備してたみたいだよ。話によると結界が張ってあったから、音や光は外部に漏れていないんだって」
「あの神は知らないところで仕事してたのか」
「そんなこと言ったらダメだよ。こうしていつも通り学校で過ごせるのも騒ぎがなかったからかもだし」
「それにしてもいつも通りだよな……」
授業が終わり陽と真桜と食堂で昼食をとっている。今日もおばちゃんのデザートはワッフル。最高だ……
「そうだ。聞いて下さい諏訪さん。祝君が朝抱えてきた時の話なんですけど」
「あーあれね。過去にも一度やってるのに直らないよね」
「それもなんですけど。私を投げて2階の教室の窓から入るって言ったんですよ」
「あーそれも止めるように言ったのに。またやろうとしたの?」
「最短ルートだろ?」
「いっくん……普通に危ないからね?」
え?危ないの?窓の外にはベランダもあるし。着地地点に障害物だってないけど?
「……そもそもに女の子を投げる選択肢がないわ」
「ですよね!」
「抱えて跳ぶとか出来るけど。普通の人は出来ないだろう?だからたかいたかいの要領で」
「どこの世界に2階まで登れる高さにたかいたかいすりのよ。子供ならトラウマコースよ」
「え?そうなの?」
「いっくん。昨日のことで私と真桜ちゃんが……」
陽は周りを見てからこっそり話す。
「勇者って知ったから気にしてないのかしら?」
「ん?ナギにも言われたが隠しているぞ。バラしたら普通の生活できないと思うからな」
「それなら朝の行動は全部見直ししなさい。人1人を抱えてあの坂を全力疾走。しかも普通に走る人よりも圧倒的に速い。そして2階の窓から入ろうとする人はいないの」
「そうだったのか……もう少しスピードを抑えるべきだったのか」
「あれ?私の話聞いてた?やるなって言ってるのよ。そんな身体能力は普通ないから」
「そうなのか?でも窓から入ったのは勇者になる前だぞ?」
「身体能力は昔から高いもんね。でも常識人を目指すなら止めること。やる前に私か真桜ちゃんに聞くこと」
常識人は窮屈なんだな。しかしこれからの事を考えると、人らしくいることを心掛けないといけないな。
―ジリリリ……
「ん?今日避難訓練なんてあったか?」
「聞いてないわよ。誰かが間違って押したんじゃない?」
「2人ともなんでそんなに落ち着いているんですか!?このジリリってなんですか!?」
「これは非常ベルだ。何かあった時に危険を知らせるんだよ。誰でも簡単に押せるから、たまにこんなことあるんだよ」
「まぁこのあとに放送があるから、それがあるまで待ちましょう」
しかし突然ベルがなるのは驚くよな。陽は至って冷静だけど、真桜は辺りをキョロキョロ見るくらい動揺している。周りの生徒も何かあったのかとそわそわしている人のいるけど。
―ジジ……
『校庭にいる生徒!はやく校内へ!校内にいる生徒は絶対校庭に出てはいけませ……』
―バリィィン!!!
「なんだなんだ!?」
「何が起こってるの?」
突然の放送に焦ったような声。そしてどこかで窓ガラスが割れる音。こうなれば食堂にいた生徒達も慌て始める。
「この声……姫ちゃんよね?」
「校庭って言ってたけど」
「行ってみるか」
「でも出ちゃいけないって言ってるわよ」
「俺なら何があってもなんとか出来る」
「でも祝君が……そのバレちゃいます」
「いっくん。屋上に行きましょう」
皆は何があったか分からず動けずにいるなか、俺達3人は屋上に向かって走る。てか陽と真桜は非常事態っぽいのにすぐ動けるって凄いよな。俺は気持ちの強い2人を見て感心してしまう。予測もできない自体には、足がすくんだり思考を停止して動けなくなるんだけど。
「陽。なんで屋上なんだ?」
「そこからなら隠れてなんとか出来るでしょう?魔法とか使えるのよね?」
「あの一瞬でそこまで考えるか。凄いな」
「感心してないで。もしもの時はいっくんだけが頼りなんだからね」
「おう。任せておけ」
屋上に向かう途中、パニックで通路が塞がれるとかなく上がっていけている。
そして屋上に出て校庭を見た。
「なんですかあれ!?」
「あれは……ドラゴン?嘘よ、こんなゲームの世界の話じゃないの?」
「いや。あれはグランドワイバーンだ」
地を這う竜として向こうの世界じゃ、それに乗って戦う空軍まであった。それが何故ここ世界の学校に?しかも単体で誰かが騎乗している感じもない。
「ちょっとゆっくり見てるのよ。なんとかしてよ」
「ん?あーすまん。しかしあの種族は訓練されてるなら人は食わんぞ」
『ギャァァァ!!!』
―バリィィン!!!
「被害出てるから!はやくなんとかして!」
「了解だ。2人はここから動くなよ」
俺は全身を隠す黒い鎧を装備する。正体が見えないならなんとでもなるだろう。
いつもの日常で少し変化が欲しいと思っていたところだ。
「覚悟しろトカゲ……」
俺は心躍らせるのを抑えて、屋上から校庭へと飛び降りる。
真桜「飛び降りちゃったよ!?」
陽子「そう言えばそうね」
真桜「あ。ちゃんと着地……」
陽子「空に浮いてるわね……勇者って飛べるのね」
真桜「えぇ!?読んでるラノベもゲームでも飛んでなかったよ!?」
陽子「真桜の勇者像はだいぶ偏ってそうね。でも私の記憶の勇者も空飛んでたかしら?」
勇志「今の神野?」
2人「「え?いたの?」」
勇志「お前らが来る前からずっといたからね」