第35話 出会う魔王と勇者
この話で第1章は締めです。
次回更新分から第2章始めます!まだまだ終わりじゃないので、これからもよろしくです!
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祝君に言ってしまった。私が……私が……好きだって!!!ついでに魔王だって言っても守ってくれるって!嬉しすぎて涙が出てきた。
「なんで泣くんだよ」
「嬉しくて……私、この世界が好き。祝君が好き。でも魔王だから殺されて終わりだと思っていたから」
「まぁ勇者ってそう言うもんだしな」
「でもいいの?私を殺さなくて」
「そんなに死にたいのか?残念だが俺のために生きてもらうからな」
「!?」
ダメだ!カッコイイ!口から出てくる言葉一つで死にそう。
「泣き止んだな。それじゃこれからのことだけど」
「あ。その前にもう1人紹介してもいい?」
話もうまくいったし。これで怒ってないよね?
「全く!貴女と言う方は!」
あれー?開口一番に怒られたけど。おかしいな〜私に任せるって言ってたのに。
「まぁまぁ爺やさん。真桜も思い切って話した訳ですし」
「はぁ〜なんで勇者に諭されているのでしょうか私」
「面白いね」
「魔王様?面白いことなんて一つもありませんからね?私が任せるとは言いましたが、氷漬けにして手出しできなくされるとは思いもしませんでした」
そう。爺やには詳細は話していない。私に考えがあるから任せてと話をして、聞こえる場所に待機してもらうはずだった。でも告白もするつもりだったから、水刺されたくなくて凍らせた。
「少し部屋がひんやりすりなとは思ってたんだけど。まさか部屋の片隅に凍らされてるとは……真桜は氷が得意なのか?」
「氷って言うか水系統ね。お母さんが炎が好きすぎて、時々お城を燃やしたりしたから。私が消したり、氷で予防したりしてたんだ」
「そんなことがありましたね……多々」
「凄い母さんだな」
「祝君のお母さんも凄いけどね」
魔法は使えないけど戦闘技術においては、さすが勇者のお母さんって言う動きだった。細かくは聞いていないけど、もしかしたら過去に勇者だったりして……そんな訳ないか。
「それで神野君。貴方は私達の正体を知っても尚、魔王様を守ると言うのは本当でしょうか?」
「はい。それは真桜と約束したことですから」
「嘘は言ってないようですね」
「あ。もちろん爺やさんも守りますよ。俺、爺やさんのことも好きですから」
「…………私は既婚していませんが、そっちの趣味はないですよ」
「はは。安心して下さい。そう言う好きなのは真桜だけですから」
「!?」
爺やも好きと聞いて、私だけじゃないんだって少し思った。けどすぐに意味が違うと訂正してくれる祝君。爺やもそう言わせるような言い方をしたかのように思った。だって爺やが私のことを見てニコニコしているから。
「それで一つ聞きたいのですが、あの襲ってきた自称魔王は知っていますか?」
「それが心当たりがないのです」
「でも向こうは真桜が魔王だと知っているようでしたね?」
「魔王様の存在は全魔族に伝わるよう知らせがありますから」
「あっちはこっちの情報があるけど。こっちは何もないか……とりあえずイザナミが調べてきた結果待ちだな」
なんか難しい話かな?2人で顔が険しい気がする。やることないな〜あ、お茶でも淹れよう。
「ちなみにイザナミさんと言う方は、あの場で魔王様と諏訪さんを守っていただいた方ですよね?」
「そうです。一応向こうの世界の神様で。色々と管理をしているんです」
「か、神?そんな方がこの世界に?」
「暇なんですよ」
「ちなみにその方に魔王様のことを教えるのですか?」
「まさか。そんな危ないことしないですよ。もしバレて殺すと動かれたら、俺1人じゃ厳しいですから。ましてや今は神が2人いますから」
伊邪那ちゃんは神様だったんだ。見た目の割に落ち着いた感じもしたし、私なんかより人生経験長いってことか。
「はい。どうぞ」
「あ、ありがとう」
「爺やも」
「これはこれは。お気遣い感謝致します」
「そんな仰々しくなくていいよ。いつも通りでいいから。今まで通り言いたいことがあればそのまま……」
「そうですか……では一つ」
あれ。私は余計なこと言ったかな?お小言のパターンだこれ。
「まずはこの世界で不用意に魔法は使っていけません。魔力の波長を感じ取れる人がいれば、相手に魔王……真桜さんがここにいるよと教えるものです」
「あ、はい」
「ちゃんと聞いていますか?そもそもに真桜さんの生きるか死ぬかの話をしているのに、呑気にお茶を入れている場合ですか?もう少し危機感を……」
「うぅ……祝君。爺やが魔王様をいじめる」
「ふはっ。威厳も何もあったもんじゃないんだな。俺の知る魔王のイメージが覆るわ」
「笑いごとじゃないんだよ〜」
「全くです。真桜さんはもっと魔王様としての自覚をですね」
「ははは」
爺やの小言に祝君は笑う。私は耳を塞ぎたいけど、私のために言ってくれてることだし一応ちゃんと聞いておく。でもなんか……この感じ久しぶりな気がする。
お母さんと爺やが私のことで話す時もこんな感じだったな……
♢
なんと言うか。魔王って言ったら偉そうで、人を無視以下と見下すようなイメージがあった。
でも目の前にいる魔王は、威厳も何もあったもんじゃない。初めて出会った時も、かなりの世間知らずって感じのお嬢様だった。
「改めて話を戻すけど。俺はこの世界から異世界に行った勇者だ。そこではシュウと名乗っていた」
「だから伊邪那ちゃんとナギさんはそう呼んでたんだね」
「そうだな。それで俺は基本前に出て戦うことが得意で、後方支援とか検知みたいな能力はほぼないから。そこは真桜か爺やさんを頼りたい」
「私はそう言う細かいことは……」
「であれば。私が適任ですね。魔王城で警備担当もしていましたから。しかし一つ問題がありますね」
「それはどんな問題ですか?」
「ここ世界では思うように魔法が使えないってことです」
「あーもともと魔法とは無縁の世界らしいからな。でも最近はイザナミがマナを運んでるから、この世界でも魔法が少しは使えるようになるっぽいです」
確かそんなことを言っていた気がする。この世界がマナを作り出すとかなんとか?詳しい仕組みはよく分からないけど。
「そう言えば私も爺やを凍らせたね」
「……そうでしたね。魔法が使えるとは思ってませんでしたし。知っていればあのような失態はなかったでしょう」
「失態って。爺やは向こうでも時々凍ってたじゃん」
「それはお母様の炎で遊んでいるのを止めてる後ろから、私ごと凍らせた時の話ですか?」
「うん。お母さんはそんな時でも避けちゃったけど」
「あの方は攻撃に対する感知速度が化け物級ですから」
「そうだね。後ろに目でもついてるのかと思ったね」
ちょいちょい話が脱線するな。まぁ今はそこまで切羽詰まっている訳ではないからいいけど。さて魔法が使えることが分かったけど。あまり派手に使われるとここにいるとバレるだけだしな。
「話を戻しましょう。魔法の問題はあまりないと言うことは分かりました。しかし派手な魔法は相手に探知される可能性があります」
「そうですね。俺が結界張るって方法がありますけど。ここだけ貼ってるのも不自然だし」
「あれ?後方支援は苦手と言っていたのでは?」
「結界って後方支援なんですか?ノーダメージで相手の軍隊突撃する魔法だから、分野は戦う側の魔法ですよね?」
「なんだか貴方の認識を整理することが重要な気がしてきました」
「そうなんですかね?魔族側の認識と何がどう違うか分からないので、分からないことがあればなんでも聞いて下さい」
戦うことに関してひたすら鍛えたから、自信はある程度あるけど。後方支援とか騎士団とか魔導士達に任していたから、誰からも習ってないからよく分からないんだよね。そう言う時は聞いてもらうのが1番。
そして爺やさんの質問に対して、俺がポンポン答えていくと次第に顔色が曇っていく。俺、なんかやらかしたか?
「まとめますと。探知や回復は出来ず、結界や妨害の魔法は使えると言うこと。そして攻撃魔法において、殲滅級と強化系統のほとんどを習得している状況と」
「へ〜俺ってそんな感じだったんですね」
「自分で理解しようとしなかったのですか?」
「まぁ相手に負けないように鍛えることしか興味なかったので。戦う度にあの魔法があればやり易いなって覚えてただけですし。使えない探知は、他の人達が調べてくれた場所に突撃すればいいだけだから。戦闘時は不要だし、回復とか当たらなければどうと言うことはないですよね?」
「祝君は凄いんだね〜」
「そんなことはないさ。今気がついたけど探知とか出来てれば、どこにいても真桜を見つけられるし。回復は誰かが傷ついた時に治せるって便利な気がする」
「なんか……それすらすぐに習得しそうな勢いですね」
そうだな。これから必要になりそうだし。この際、探知系や回復も覚えてもいいかも知れない。
「そう言う訳で。今後は俺達3人の戦闘力アップと、情報収集ですかね」
「そうなりましょう。探知系は私が教えるとして、真桜さん1番始めに必要なのはとりあえず……」
「体力作りだな」
「え!?」
「私もそれに同意です。魔法はある程度使えるのであれば、戦闘面での立ち回りや逃げる際の脚力。つまり体力が絶望的に不足してます」
「……だって。お城じゃ走らないし。しては水で押し流すか、凍らせれば捕まらない訳で」
「今後はそんな立ち回りできませんし。いつでも神野君が守ってくれる訳でもありませんから」
確かに寝てる時とか普通に生活している限り、ずっと一緒にいれる訳ではない。
「でもでも。祝君が探知系を覚えたら……」
「もちろんできる限りは守る。怪我をさせるような事態は避けられると思うけど。体力はあって困ることはない」
「そうです。いいですね真桜さん?」
「……2人が魔王をいじめる〜」
こうして俺達3人は、これからに備えるための特訓をすることに決めた。
魔王と勇者が共に歩んでいくために…………
真桜「魔法が使えるのに、必要なものは体力って……簡単に増える方法ないかな?」
祝「体力増やすのは簡単だぞ。限界まで走って走って走りまくればいいだけだ」
真桜「そんな……死んじゃうよ」
育事「大丈夫です。私は多少の回復魔法が使えます」
真桜「多少って不安しかないよ」
祝「運がいいことに、学園までの坂とか公園が近くにあるから。走るのに困ることはないよな」
真桜「私、生きていられるかな……」