第34話 自分の道を考える勇者
ここ数日グッと寒くなりました。本気で起きるのつらいし、休みの日も布団に包まって眠りたい。
そして寒いからか体調が……冬眠したい_(:3 」∠)_
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ありがとうございます(*'ω'*)
俺は魔王を倒した。これで俺の役割が終わり。
「だったら、どんなに楽なことか」
1人公園で呟く。それに対しての答えは誰からもない。
「誰もきてない。結構派手に魔法ぶっ放してたから来ると思ったけど」
うーむ。まぁいいか。多少の焦げが見えるけどこれくらい気にならないか。
「さてと……誰のところから行こうかな」
選択肢は2つ。一つは真桜と爺やさんのところ。ここは爺やさんがいるし、なんとかなるんじゃないかと思う。真桜も無事だったし2人とも何故かレベル高いし。それに真桜になんと説明すればいいか分からない。
そうなれば陽と伊邪那のところに行って、説明と今後の相談をする方がいいな。
「陽はおそらく伊邪那の家か。そこならナギもいるし、話すにはうってつけだな」
最後に振り返り公園をみる。木々は無事で良かった。真桜の好きなものを減らすわけにはいかないからな。
「さて、行くか……」
俺は周りを警戒しながら伊邪那の家に真っ直ぐ向かう。
そして伊邪那の家に着くと、玄関前で陽と伊邪那とナギの3人がいた。やはり予想通り。
「おう。2人とも無事だったか?」
「シュウ!貴様……」
「なんだよ。何が……」
「礼を言うぞ。よく伊邪那を守ってくれた」
「え?あ、うん。結果的にはだけど」
伊邪那がナギに公園であったことを説明済みらしい。それで怪我がないかずっと家の前で話し込んでいたらしい。話しが早くて助かる。そしてそれを聞いた上でここまで冷静な陽はすごいな。俺が魔族や魔法のことを聞いても、へぇ〜コイツ大丈夫かって思うぞ。
「いっくん。勇者って言うのは、さっきの戦いとか見れば分かったわ。でもそうなると伊邪那はなんなの?」
「俺が勇者とか話したの?それなのに自分らの話してないのか?」
「状況を話してから怪我がないかと、ずっといちゃついてるだけで話に答えてくれないの」
「陽子。別に私はいちゃついてなんて……」
「はぁこんな人目につく場所でペタペタ触り続けるのは、いちゃついてなければなんだと言うの?」
陽が言いたいのも分かる。俺だっていちゃついたりしてみたい……こほん。
「それでどうするんだイザナミ」
「一度向こうに戻って状況を見てくるわ。魔王がこっちに転移してから、魔族はずっと大人しかったけど動きがあるみたいだし」
「それでイザナギは別れを惜しんでいるんだな」
「その通りだ!」
「それじゃイザナギも行けばいいじゃん」
「馬鹿か?神が2人で向こうに渡ったら、こっちの世界はどうする。管理しているものがいるとは言え、戦える者は多いに越したことはない」
「イザナギ……だったらお前が行け。戦闘面においてはイザナミの方が強い」
「貴様!神に向かってお前だと!?」
あ。しまった。イザナギの戦える者の発言につい本音が。だってイザナギは戦闘を分析指示するタイプ。言わば俺が探していた軍師枠。しかし魔族が来た際、ただの護衛対象が増えるだけのお荷物。それであれば、一騎当千のイザナミがいた方が後ろを気にせず戦える。
「それはしょうがないのよ。ナギは来たばかりでマナの余裕がないもの。それに聞き込みくらい騎士団とか魔導士どもを使えば問題ないもの」
「始めから他力本願なのな」
「私は戦闘が好きなの。頭や足を使う面倒なことは、それに長けた者を使うのが効率いいでしょう」
「それはそうだな」
要するに面倒なことは他人に任せて、自分は楽をしたいと言う気持ちが隠しきれていない。そう言うところはイザナミらしいと思うからつっこんだりしない。てか、俺もその意見は賛成派だしな。適材適所とは効率がとてもよくなる。
「いっくんもそう言う考えするもんね。なんか伊邪那といっくんは似てるね」
「「え?それはいや」」
「妻はそんなシュウに似ているのか!?考えなしに敵陣に突っ込む馬鹿と!いや違う!そんな後先考えず突っ込んでいくことなどな……くははないけど」
俺への評価やべーな。俺は一応考えて行動するぞ。正面突破とか敵陣の真ん中までいく最短ルートだし、そこに配置された相手を倒せばもうそれ以上はいない。つまり戦意と戦力を両方を兼ね備えた万能な作戦。
「あまり遊んでいる時間はないわ。私は行くけど魔王探しは継続してなさいシュウ」
「言われなくても探しますよ」
「ならいいわ。あと真桜の方はもう話してきたの?」
「いや。それがまだ……」
どう説明したものか。真桜と爺やさんは違う国から来たらしいから。陽みたいに異世界耐性があるとは思えない。ゲームやアニメもあまり知らなかったし、話して理解をしてくれるだろうか。
「早く話しなさい。時間が経てばややこしくなるわ」
「でもどう説明すれば?」
「それなら隣にいる人に相談してよ」
隣を見ると嫌そうな顔をするイザナギ。
「シュウが探していた軍師よ。私の旦那様はとっても頼りになるのよ。ね?」
「任せておけ!頼れる軍師イザナギとは俺のことだ」
「ワー、カッコイイ。はい。あとは頼んだわよ!じゃ!」
イザナミはそのまま消えてしまった。
「消えた……やっぱり伊邪那も何かすごい力がある人なのね」
「イザナミは異世界の神様だ。世界の管理をしている側の人間と言えば分かるか?」
「そう言えばさっきから神様ってワードが出てきたわね」
「うむ。我々は神である」
「名前もイザナミにイザナギだしね。日本古来に伝わる神の名前だし……」
「あぁ、あおの歴史書の名と同一人物ではないからな。最古の神ぽくてかっこいいから、名前を拝借しただけだ」
「「…………」」
名前の由来は正直知らなかった。名前からして日本の歴史書に出てくる2人だと思っていた。それが名前を借りただけって……
「名前なんてどうでも良いだろう。親が子につける名前を自由にしているのと一緒であるぞ」
「それを言われるとな……」
「まぁ管理をする神様であることは変わらないなら、名前はそこまで重要じゃないわよね。それでこれからどうすればいいの?」
「さすがはこの国の巫女だ。理解が早くて助かるぞ」
切り替えの早いことで助かります。どうすればいいか全然浮かばない俺に力を!?
「真桜なら何も隠さず素直に話すこと。これであの子は信じてくれるわ」
「そうだろうな。初めて食べると言う煎餅に置いて、純粋さはよく分かったからな」
「煎餅でどう思ったかは知らないけど。小細工はなしで、ありのままを受け入れられる子よ。その分爺やさんがなんとかしてくれるって気もするから」
まぁ素直で純粋ってところは同意。それで足りないところは爺やさんがなんとかしてくれる。
「そうだな。2人の言う通りだな!俺、ありのままを話してくる」
「いってらっしゃい」
「いってくるのだ」
「え?2人も来るんじゃないのか?」
「私が居てもしょうがないでしょう」
「私はその爺やとやらに会ったことがない。そんな知らない奴が突然来ても仕方がなかろう」
1人か……急に心細くなった。俺1人で説明できるだろうか?
「いっくんなら大丈夫。いつもの学校と同じ感じで話せばいいんだよ」
「そうかな……」
「どうしたシュウ。向こうの世界では、大体1人で行動していただろう?今更1人が心細いとかあるのか?」
「そ、そんな訳ないだろう。いいさ!俺1人で納得させてくるさ」
そうと決まれば向かうは真桜のアパート。俺はこのままの勢いでいってやる!
アパートまで来てみたけど。ここから2階の真桜の家までの階段が長い。一段一段、慎重に歩いていく。
「祝君」
「!?」
声をかけられて心臓が飛び出すかと思った。ゆっくり後ろを振り向くとそこに真桜が立っていた。
「真桜……無事か?」
「うん。おかげさまで怪我もないよ」
「そうか。良かったよ……」
「……部屋いこっか」
―カン、カン
階段を上がってくる真桜。
「ほら。上がって祝君」
背中を押されて俺は階段を上がっていく。部屋の前に着くと扉を開けてくれる真桜。
「どうぞ。今、爺やは買い物行ってもらっていないんだ」
「そうなのか」
そうなると真桜と2人っきり。爺やさんがいないってすごいドキドキしてきた。
「祝君……さっきのことだけど。祝君は勇者だったの?」
「この世界は俺が生まれて育ったのは間違いないが、剣や魔法はこの世界ではないところで覚えたんだ。まぁそんなこと言われても信じ難いと思うけど」
「信じるよ」
「そうだよな。やっぱり突然は……って信じるの?」
「うん。祝君は嘘を言う人じゃない。それに私を守ってくれた祝君は……かっこよかったです」
「こんな世界で突然剣で黒い炎切り裂いちゃってるもんな。そりゃ信じ……かっこいい?」
「うん。私を守るって約束してくれて、死んじゃうかもって思った時に颯爽と現れて助けてくれるんだよ?かっこよくない?」
「あーまぁシュチュエーション的にはな」
そんな何度もかっこいいと言われるとすごく照れる。真桜はやっぱり素直で純粋だ。俺の話も理解しようとしてくれている。
「私も祝君に言わないといけないことがあって。もしかしたら私……最後まで話せないかもしれないけど」
「何か分からないけど。話を聞くよ。何があっても最後まで……」
「ありがとう。それじゃ言うね……私、私ね……魔王なの」
「そうか……」
え?私、真桜なの?知ってるけど。どう言うこと?もしかして二重人格とか実は双子の妹とかの設定出てくる?
「あの……それだけですか?私魔王なんですよ?」
「分かってるよ。真桜だろ?」
「あー……もしかして私が2人いるとか、二重人格とか思ってます?」
「え!?顔に出てた?てかそんな正確に読みとれるとか凄くね?」
「あーもう。そう言うところが好きなんですよ」
「え?」
「え?」
―ボン!
顔から火が出るとは、こう言うことを言うのだろう。真桜の顔がこれまでみたことないくらい赤い。でもそれは俺もそうかも知れない。
「その……勘違いしないで聞いて欲しいのですが」
「あ、勘違いか。そうだよな。真桜が俺を好き……」
「そこは勘違いではないので」
「え?」
「…………こほん。そこではなくて魔王と真桜の聞き間違いです」
何が聞き間違い?てか勘違いじゃないってことは、真桜は俺のことを?あーもう何も考えられん。
「俺も真桜が好きだ」
「ふへっ!?」
「勘違いじゃないからな。聞き間違いでもないから」
「あ、うん。ありがとう……」
しばらく2人の間に何もない時間が流れる。心なしか部屋の温度が高い気もしなくもない。
「それで祝君は私を殺す?」
「え?」
真桜を殺す?なんで突然そんな話が出てくるんだ?さっきまでの告白で聞いていなかったが……
いや、俺は聞いていた。聞かないようにしていたのか。
「俺は勇者だ」
「知ってる」
「勇者は魔王を倒すためにいる」
「そうだね」
「だが俺は自分の好きな人をこの手で殺すことはしない」
「……」
「誰かに殺させることもしない。言っただろう?俺が真桜を守るって」
「本当に?私魔王だよ?」
そう。俺が探していた魔王は目の前にいる。この魔王を倒してしまえば俺は異世界に帰ることができる。でもそれではダメだ。俺はなんで異世界に帰りたいのか。1人だった時間を2人でとり戻したかったから。
「俺は強くなった。世界の脅威だと聞いていた存在から皆を守るため」
「うん」
「一緒に無茶をして、仲間を失わないように1人で行動した」
「うん」
「でも俺は1人は嫌なんだ。だから平和になった世界を旅するパートナーが欲しい」
言うんだ。相手が魔王だとか関係ない。これは俺の道であり始まりだ。
「俺の横にいてくれないか真桜。俺が必ず守る」
「…………はい」
俺の伸ばした手を真桜が掴む。この小さくか弱い手を俺はこれから守っていかないといけない。
「俺は突き進むからな。この手を離すなよ」
「はい!」
真桜の瞳から一つの雫が流れた。
イザナギ「シュウのやつ上手く説明できただろうか」
陽子「心配ならついて行けばよかったのでは?」
イザナギ「別に心配なんぞしていない」
陽子「知らない人が一緒じゃ警戒されるから?」
イザナギ「その通りだ」
陽子「本当は2人で話をさせたかったんでしょ?いっくん真桜ちゃんのこと好きだったし、変な誤解をされないように背中を押したと」
イザナギ「……君は俺を買い被りすぎだ」
陽子「そうかな?私は巫女だから。神様を信じるのは当たり前です」
イザナギ「そうであったな」
陽子「そうです。上手くいってるといいけど」