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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第1章 出会う2人の道
33/52

第33話 強さと弱さを知る魔王

東電が値上げを発表。電気代上がる……なんて話をしてたけど。実はガスも上がってるって言う。

物価はどんどん上がりますね。マックが上がったのも地味に痛いです……お給料は据え置きだけど。下がらないだけありがたいです(*´-`)


読んでくれた皆様!

ブックマーク、評価、いいね。くれた方々も。

ありがとうございます(*'ω'*)

 私は今、とっても幸せである。毎日ご飯もちゃんと食べれて、学校に行けば友達がいて寂しさもない。最近学校に転入してきた伊邪那ちゃんとも仲良くなれた。


「今日も大丈夫かしら?」

「大丈夫。テスト前だし家の手伝いもないわ」

「…………」

「真桜ちゃん?どうしたの?」

「あ!なんでもないです!」


 いけません。せっかく仲良くなれたのに、話はちゃんと聞かないと嫌われてしまいます。でも……


「祝。今日も用事があるのか?」

「あーすまん」

「まぁいいさ。手が空いたらまた遊ぼうぜ」

「はは。テスト前なんだから勉強しとけよ」

「……」


 いつも通りに見える祝君。でも私はその姿に違和感が残る。


「祝は何かあったのかしら。真桜は何か分かる?」

「私にはちょっと……最近、あまり喋れていないんだよね」

「ふむ。あれだけいちゃついてたのが、突然なくなるとは……単純な問題ではなさそうね」

「いちゃって!?」

「真桜ちゃんは自覚なかったの?声をかけづらい2人の空気感凄かったわよ」

「す、諏訪さん!そ、そんなことはなかったのでは?」

「まぁ何かあるだろうが、アイツは弱い者ではない。自分でなんとかするであろう。助けが必要であれば、自分から言ってこれる人間だと私は思うけど」


 そうだよね。祝君は強い人……でも何か気になる。関わっては行けない気もするし、そうじゃないかも知れない。私は一体どうすればいいの?


「はぁ〜真桜ちゃんも強い子だと思ったけど」

「仕方がないわ。好きな男には女は弱くなるものよ」

「え?何を?」

「気になるんでしょ?放っておけないんでしょ?ならやることは一つ」

「尾行ですね。今度は私がいるからバレないわ」

「2人とも?」

「ほら。いっくん行っちゃったわよ」

「私達に頼ってもいいのですよ」


 2人が立ち上がる。私は……


「ありがとう」

「友達じゃない。これくらい当たり前よ。ね?伊邪那」

「友達か。良い響きだ陽子」


 2人に手を引かれて私は前を向くことにした。




 学校を出て、ギリギリ祝君が見える位置からついていく。


「尾行ってこんなに離れるのね」

「いつもの祝ならもっと近づいても問題ないけど。今日は特別警戒してるわね」

「伊邪那には分かるの?」

「警戒していればそこにある空気が変わるものよ。まぁ人はそんなの気にして生きてないのが現状よね」


 なんかものすごく頼りになります。私は声も出さないようにこっそりするので精一杯です。


「止まったわ。あそこは……」

「私の家?」


 アパートを見ているけど。何かあるのかな?私に用があれば学校で話してくれると思うけど。


「誰か出てきたわ。ってあの人……強いわね。何者かしら?」

「おばちゃんはあの家の大家さんだよ」

「家主?一度手合わせをしてみたいわね」

「伊邪那?」

「おっと。私的な感情はしまっておかないとね」


 伊邪那ちゃんも戦う子なのかな?その顔がどこか祝君のお母さんと似ている。


「あれ、爺やさんじゃない?」

「む。まずいぞ。あの御仁は私らに気づいた」

「「え?」」


 伊邪那ちゃんがそう言ったあとに、こっちをチラッと見たような?でも爺やはこっちに来ないで祝君と一緒に歩き出した。


「爺や気がついたのかな?こっちを見た気がするけど。何もしないから気のせいじゃないかな?」

「いいえ。きっと真桜が気にしてることに気がついて、何もしないをあえて選んでるわ」

「そんなことまで分かるの?」

「相手の空気感に顔を見れば大体分かるのよ」

「それおばちゃんも言ってた。伊邪那はそれが分かる人なのね」


 顔を見るか…………遠くて見えないんだけど。伊邪那ちゃんは目がいいのかな。


「おじさまには気づかれたけど。祝には気づかれてないわ。このままの距離を維持していくわよ」

「「はい」」


 伊邪那ちゃんを先頭に私達は尾行を続ける。おばちゃんに見つかったけど、しーってしておいた。おばちゃんはニコニコしながら頷いてくれたから大丈夫。


 そのまましばらく歩くと公園の広いところに出た。何か話しているけど、ここからじゃ何を話しているか分からない。


「何を話してるんだろうね」

「分からないね」

「…………」


 私達はこの状況で出来ることはない。ただ何かあるんだろうなって感じで見守る。伊邪那ちゃんもじっと2人を見て……


「伊邪那ちゃん?空を見てどうし……」


 ―バリバリ……バリィィン!


 伊邪那ちゃんは2人ではないその上を見ていた。そして私が空を見た時に、ガラスが割れるように空が裂けた。あれは転移の魔力?一体何が起こっているの?


「2人とも!この場から逃げるわよ!」

「え?どう言うこと?空が割れてるけど!」

「今は私の言うことを……ってもう遅いか」


 空の裂け目から誰かが降りてくる。落ちてくるではない。だってその人の背中には……


「うそ……飛んでる?」

「翼が生えた人?」

「なんでこのタイミングで!?いい?私から離れちゃダメだからね!」


 そう言っているけど。あそこには祝君と爺やが!私は伊邪那ちゃんの忠告を無視して走り出していた。


「爺や!祝君!」

「真桜!?なんでここに!?」

「真桜さん!来てはいけません!」


 ―ボォゥ!


「あ」


 目の前の翼を生やした人……魔族は私に向かって黒い炎を放ってきた。走ってた足を止めたけどもう遅い。今の私に防ぐ術はない。


「真桜!!だめ、間に合わない!」


 背後から伊邪那ちゃんの叫び声がする。こんなことなら、ちゃんと言うことを聞いておけばよかった……目の前がスローモーションになるってこう言うことか。私、死んじゃうのかな……


 ―シュン……


「え?」

「させるかぁぁぁ!!!」


 ―ザシュ!ドカァァン!!!


「きゃぁ!?」


 目の前に迫ってきた黒い炎の前に現れたのは、いつも見ていた人の背中。手に持った剣でその炎を真っ二つにする。


「け、剣?」

「……無事か真桜」

「あ、うん。大丈夫……」


 振り返ることなく祝君は私の心配をしてくれる。


「真桜は俺が守る。伊邪那!爺やさんと真桜を頼む」

「任せろ」

「これってどう言うこと?え?公園が燃えてる?」

「なんで陽がここに?伊邪那?」

「すまん。こんなことになるなんて思ってなかったのよ」

「それは俺もそうだ。しかし、こんな感じで現れてくれるとはな」


 伊邪那ちゃんと祝君が何を話しているのか分からない。いや、分かっているけど分かろうとしていないだけ。


「爺やさん!皆でここから離れて下さい」

「しかし……」

「俺なら大丈夫です。負けませんから」


 剣を構える祝君から目が離せない。かっこいい……って!?


「シュウ。結界があって外に出れないわ」

「そうか。なら少し離れててくれ。元凶を叩く」


 黒い翼の魔族がこっちをじっと見ている。


「なんだ貴様は?俺の仕事を邪魔するな」

「お前に名乗る意味なんてない。だってここで死ぬからな。そう言うお前は誰なんだ?」

「そうだな。死んでしまうお前の名なんぞ無駄だったな。俺は魔王……この世界を貰い受ける者だ」

「そうか。お前が魔王……弱かったから逃げ回ってたんだな」

「は?何を言っているんだ人族?」


 あの人、魔王って言った?でも魔王は私のはず?ってことは別の世界の魔王とか?


「俺が知ってる魔王は女だと聞いていたんだが?」

「前魔王は死んだ。その一人娘もな。だから魔界では新たな魔王になるべく、色々な魔族が名乗りをあげている。そしてこの俺が魔王になり、この世界を統治してやるのだ。ありがたく思え。貴様は魔王によって、直接手を下された初めての人族として語られるだろう」

「っは。魔王ってのは口だけが達者なんだな。いいからこいよ。そんなの俺が全部斬ってやる」

「さようならだ名も無き人族!」


 魔王と名乗る魔族が祝君に突っ込んでくる。その手には黒く禍々しい剣。あれはお父さんの剣!?あんなので斬られたら祝君が死んじゃう!


「逃げて祝……死んじゃやだよ!」

「俺は死なない。真桜とこの世界は俺が……」


 ―ザシュゥ……


「……」

「…………守る」

「がはぁ!?」


 胴と脚を真っ二つにされた魔王。地面に転がっていく。


「ど、どう言う?なんだ、これ……」

「これで俺の仕事も終わりだ」

「がはぁ!」


 祝君が魔王にとどめをさす。そのまま黒い霧となって魔王はいなくなった。その顔に迷いはない。私が魔王だったら祝君は私を……


「結界もなくなったわね」

「な、なんなのこれ。どう言うこといっくん?」

「簡単に言うと魔王がこの世界に来ていて、俺はそれを倒すためにここまで追ってきた勇者的な立ち位置だ」

「簡単にって……それっていっくんは異世界に行ったの?」

「理解が早くて助かる。そう言うことだ」

「アニメや漫画の世界が目の前に……いざその場にいると信じがたいものだね」


 諏訪さんは祝君の言ったことを信じて納得したようだ。異世界を知らないはずの人族がそれを信じるって、それってやっぱり祝君を信じているからってことだよね。


「真桜も驚かせて悪かったな。でも前に約束した通り、必ず守るからな」

「うん。祝君……怪我はない?」

「俺は大丈夫。魔王って名乗っていたが、あれはきっと自称で言っている小物だ。いつか本物が来るかも知れないが、その時も俺がなんとかしてみせる」

「そっか…………」


 祝君がなんとかした時、私はもうこの世界にいない。無邪気に笑う彼はまだ知らない。


 この事実を受け止めて、私はこれからどうしていけばいいんだろう。


「皆、いつまでもここにいないで逃げるわよ」

「そうだな。人が集まる前に移動しよう。行こう真桜」

「え?」

「真桜さんは私が連れて逃げます。固まって逃げては目立ってしまいます」

「あーそうですね。それじゃ陽は伊邪那に任せる。俺は少し周りの目を引いてから逃げる」


 私の手をとろうとした祝君から、爺やが割って入り私の手をとる。伊邪那ちゃんと諏訪さんが一緒に行動して、祝君は何か考えがあるのか別で逃げるみたい。


「祝君!後で話したい!」

「おう。またあとでな!」


 短い言葉だけ祝君に伝え、私と爺やは公園から離れる。


「どうするつもりですか魔王様」

「どうしようか。魔王だってバレたらきっと倒されちゃうね。ちなみにずっと黙ってるって出来るかな?」

「それは……難しいでしょうね。この先魔王様を知った者が来る可能性が高く、真に魔王となりたい者がいれば必ず倒しに来るでしょう」

「そうなると、私は勇者と魔王になりたい魔族から狙われるってこと?」

「……そうですね」


 今日起きたことを整理してみる。まずもっとも重要なのが、祝君は勇者で魔王を倒すことが目的。自称でも魔王と名乗れば倒される。戦いは見ていたけど圧倒的だった。あの魔族が弱いってこともあるけど。それでも不意打ちにも即対応して、倒すのも一撃だった。それに勇者の実力も聞いていたから、私や爺やが戦ったとしても秒で終わっちゃうだろう。


 そして魔界では魔王になろうと名乗りをあげていると言うこと。私が今この世界にいることは、もう皆が知っているはず。そうなればこの世界は新たな戦場になるかもしれない。


「私はどうすればいいの……」

「魔王様……」


 爺やと2人で歩いている。そしてこれからのことを話し合わなければならない。全ての鍵を握るのは勇者である祝君。


 私は……

真桜「あの魔王って言った人。瞬殺だったね」

育事「さすがの勇者。強さはこの世界においても健在でしたね」

真桜「私なんか絶対に手も足も出ないな〜はは」

育事「それは私も同じでしょう。全盛期の魔王様でもどうなるかでしょうね」

真桜「私は魔王だけど。一つだけ言いたいことがあるんだ」

育事「……聞きましょう」

真桜「助けてくれた祝君。かっこよかった」

育事「は?」

真桜「だからかっこよかったって。あの時の黒い炎で死んじゃうかも!なんて思ってたら目の前に現れて守ってくれたんだよ?」

育事「それについては感謝していますが……相手は勇者ですよ?」

真桜「それはそれ。かっこいいものは仕方がないでしょう?」

育事「ふふ。真桜さんは前向きなんですね」

真桜「ふふ。おかしいよね。でも私は……」

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