第33話 強さと弱さを知る魔王
東電が値上げを発表。電気代上がる……なんて話をしてたけど。実はガスも上がってるって言う。
物価はどんどん上がりますね。マックが上がったのも地味に痛いです……お給料は据え置きだけど。下がらないだけありがたいです(*´-`)
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ありがとうございます(*'ω'*)
私は今、とっても幸せである。毎日ご飯もちゃんと食べれて、学校に行けば友達がいて寂しさもない。最近学校に転入してきた伊邪那ちゃんとも仲良くなれた。
「今日も大丈夫かしら?」
「大丈夫。テスト前だし家の手伝いもないわ」
「…………」
「真桜ちゃん?どうしたの?」
「あ!なんでもないです!」
いけません。せっかく仲良くなれたのに、話はちゃんと聞かないと嫌われてしまいます。でも……
「祝。今日も用事があるのか?」
「あーすまん」
「まぁいいさ。手が空いたらまた遊ぼうぜ」
「はは。テスト前なんだから勉強しとけよ」
「……」
いつも通りに見える祝君。でも私はその姿に違和感が残る。
「祝は何かあったのかしら。真桜は何か分かる?」
「私にはちょっと……最近、あまり喋れていないんだよね」
「ふむ。あれだけいちゃついてたのが、突然なくなるとは……単純な問題ではなさそうね」
「いちゃって!?」
「真桜ちゃんは自覚なかったの?声をかけづらい2人の空気感凄かったわよ」
「す、諏訪さん!そ、そんなことはなかったのでは?」
「まぁ何かあるだろうが、アイツは弱い者ではない。自分でなんとかするであろう。助けが必要であれば、自分から言ってこれる人間だと私は思うけど」
そうだよね。祝君は強い人……でも何か気になる。関わっては行けない気もするし、そうじゃないかも知れない。私は一体どうすればいいの?
「はぁ〜真桜ちゃんも強い子だと思ったけど」
「仕方がないわ。好きな男には女は弱くなるものよ」
「え?何を?」
「気になるんでしょ?放っておけないんでしょ?ならやることは一つ」
「尾行ですね。今度は私がいるからバレないわ」
「2人とも?」
「ほら。いっくん行っちゃったわよ」
「私達に頼ってもいいのですよ」
2人が立ち上がる。私は……
「ありがとう」
「友達じゃない。これくらい当たり前よ。ね?伊邪那」
「友達か。良い響きだ陽子」
2人に手を引かれて私は前を向くことにした。
学校を出て、ギリギリ祝君が見える位置からついていく。
「尾行ってこんなに離れるのね」
「いつもの祝ならもっと近づいても問題ないけど。今日は特別警戒してるわね」
「伊邪那には分かるの?」
「警戒していればそこにある空気が変わるものよ。まぁ人はそんなの気にして生きてないのが現状よね」
なんかものすごく頼りになります。私は声も出さないようにこっそりするので精一杯です。
「止まったわ。あそこは……」
「私の家?」
アパートを見ているけど。何かあるのかな?私に用があれば学校で話してくれると思うけど。
「誰か出てきたわ。ってあの人……強いわね。何者かしら?」
「おばちゃんはあの家の大家さんだよ」
「家主?一度手合わせをしてみたいわね」
「伊邪那?」
「おっと。私的な感情はしまっておかないとね」
伊邪那ちゃんも戦う子なのかな?その顔がどこか祝君のお母さんと似ている。
「あれ、爺やさんじゃない?」
「む。まずいぞ。あの御仁は私らに気づいた」
「「え?」」
伊邪那ちゃんがそう言ったあとに、こっちをチラッと見たような?でも爺やはこっちに来ないで祝君と一緒に歩き出した。
「爺や気がついたのかな?こっちを見た気がするけど。何もしないから気のせいじゃないかな?」
「いいえ。きっと真桜が気にしてることに気がついて、何もしないをあえて選んでるわ」
「そんなことまで分かるの?」
「相手の空気感に顔を見れば大体分かるのよ」
「それおばちゃんも言ってた。伊邪那はそれが分かる人なのね」
顔を見るか…………遠くて見えないんだけど。伊邪那ちゃんは目がいいのかな。
「おじさまには気づかれたけど。祝には気づかれてないわ。このままの距離を維持していくわよ」
「「はい」」
伊邪那ちゃんを先頭に私達は尾行を続ける。おばちゃんに見つかったけど、しーってしておいた。おばちゃんはニコニコしながら頷いてくれたから大丈夫。
そのまましばらく歩くと公園の広いところに出た。何か話しているけど、ここからじゃ何を話しているか分からない。
「何を話してるんだろうね」
「分からないね」
「…………」
私達はこの状況で出来ることはない。ただ何かあるんだろうなって感じで見守る。伊邪那ちゃんもじっと2人を見て……
「伊邪那ちゃん?空を見てどうし……」
―バリバリ……バリィィン!
伊邪那ちゃんは2人ではないその上を見ていた。そして私が空を見た時に、ガラスが割れるように空が裂けた。あれは転移の魔力?一体何が起こっているの?
「2人とも!この場から逃げるわよ!」
「え?どう言うこと?空が割れてるけど!」
「今は私の言うことを……ってもう遅いか」
空の裂け目から誰かが降りてくる。落ちてくるではない。だってその人の背中には……
「うそ……飛んでる?」
「翼が生えた人?」
「なんでこのタイミングで!?いい?私から離れちゃダメだからね!」
そう言っているけど。あそこには祝君と爺やが!私は伊邪那ちゃんの忠告を無視して走り出していた。
「爺や!祝君!」
「真桜!?なんでここに!?」
「真桜さん!来てはいけません!」
―ボォゥ!
「あ」
目の前の翼を生やした人……魔族は私に向かって黒い炎を放ってきた。走ってた足を止めたけどもう遅い。今の私に防ぐ術はない。
「真桜!!だめ、間に合わない!」
背後から伊邪那ちゃんの叫び声がする。こんなことなら、ちゃんと言うことを聞いておけばよかった……目の前がスローモーションになるってこう言うことか。私、死んじゃうのかな……
―シュン……
「え?」
「させるかぁぁぁ!!!」
―ザシュ!ドカァァン!!!
「きゃぁ!?」
目の前に迫ってきた黒い炎の前に現れたのは、いつも見ていた人の背中。手に持った剣でその炎を真っ二つにする。
「け、剣?」
「……無事か真桜」
「あ、うん。大丈夫……」
振り返ることなく祝君は私の心配をしてくれる。
「真桜は俺が守る。伊邪那!爺やさんと真桜を頼む」
「任せろ」
「これってどう言うこと?え?公園が燃えてる?」
「なんで陽がここに?伊邪那?」
「すまん。こんなことになるなんて思ってなかったのよ」
「それは俺もそうだ。しかし、こんな感じで現れてくれるとはな」
伊邪那ちゃんと祝君が何を話しているのか分からない。いや、分かっているけど分かろうとしていないだけ。
「爺やさん!皆でここから離れて下さい」
「しかし……」
「俺なら大丈夫です。負けませんから」
剣を構える祝君から目が離せない。かっこいい……って!?
「シュウ。結界があって外に出れないわ」
「そうか。なら少し離れててくれ。元凶を叩く」
黒い翼の魔族がこっちをじっと見ている。
「なんだ貴様は?俺の仕事を邪魔するな」
「お前に名乗る意味なんてない。だってここで死ぬからな。そう言うお前は誰なんだ?」
「そうだな。死んでしまうお前の名なんぞ無駄だったな。俺は魔王……この世界を貰い受ける者だ」
「そうか。お前が魔王……弱かったから逃げ回ってたんだな」
「は?何を言っているんだ人族?」
あの人、魔王って言った?でも魔王は私のはず?ってことは別の世界の魔王とか?
「俺が知ってる魔王は女だと聞いていたんだが?」
「前魔王は死んだ。その一人娘もな。だから魔界では新たな魔王になるべく、色々な魔族が名乗りをあげている。そしてこの俺が魔王になり、この世界を統治してやるのだ。ありがたく思え。貴様は魔王によって、直接手を下された初めての人族として語られるだろう」
「っは。魔王ってのは口だけが達者なんだな。いいからこいよ。そんなの俺が全部斬ってやる」
「さようならだ名も無き人族!」
魔王と名乗る魔族が祝君に突っ込んでくる。その手には黒く禍々しい剣。あれはお父さんの剣!?あんなので斬られたら祝君が死んじゃう!
「逃げて祝……死んじゃやだよ!」
「俺は死なない。真桜とこの世界は俺が……」
―ザシュゥ……
「……」
「…………守る」
「がはぁ!?」
胴と脚を真っ二つにされた魔王。地面に転がっていく。
「ど、どう言う?なんだ、これ……」
「これで俺の仕事も終わりだ」
「がはぁ!」
祝君が魔王にとどめをさす。そのまま黒い霧となって魔王はいなくなった。その顔に迷いはない。私が魔王だったら祝君は私を……
「結界もなくなったわね」
「な、なんなのこれ。どう言うこといっくん?」
「簡単に言うと魔王がこの世界に来ていて、俺はそれを倒すためにここまで追ってきた勇者的な立ち位置だ」
「簡単にって……それっていっくんは異世界に行ったの?」
「理解が早くて助かる。そう言うことだ」
「アニメや漫画の世界が目の前に……いざその場にいると信じがたいものだね」
諏訪さんは祝君の言ったことを信じて納得したようだ。異世界を知らないはずの人族がそれを信じるって、それってやっぱり祝君を信じているからってことだよね。
「真桜も驚かせて悪かったな。でも前に約束した通り、必ず守るからな」
「うん。祝君……怪我はない?」
「俺は大丈夫。魔王って名乗っていたが、あれはきっと自称で言っている小物だ。いつか本物が来るかも知れないが、その時も俺がなんとかしてみせる」
「そっか…………」
祝君がなんとかした時、私はもうこの世界にいない。無邪気に笑う彼はまだ知らない。
この事実を受け止めて、私はこれからどうしていけばいいんだろう。
「皆、いつまでもここにいないで逃げるわよ」
「そうだな。人が集まる前に移動しよう。行こう真桜」
「え?」
「真桜さんは私が連れて逃げます。固まって逃げては目立ってしまいます」
「あーそうですね。それじゃ陽は伊邪那に任せる。俺は少し周りの目を引いてから逃げる」
私の手をとろうとした祝君から、爺やが割って入り私の手をとる。伊邪那ちゃんと諏訪さんが一緒に行動して、祝君は何か考えがあるのか別で逃げるみたい。
「祝君!後で話したい!」
「おう。またあとでな!」
短い言葉だけ祝君に伝え、私と爺やは公園から離れる。
「どうするつもりですか魔王様」
「どうしようか。魔王だってバレたらきっと倒されちゃうね。ちなみにずっと黙ってるって出来るかな?」
「それは……難しいでしょうね。この先魔王様を知った者が来る可能性が高く、真に魔王となりたい者がいれば必ず倒しに来るでしょう」
「そうなると、私は勇者と魔王になりたい魔族から狙われるってこと?」
「……そうですね」
今日起きたことを整理してみる。まずもっとも重要なのが、祝君は勇者で魔王を倒すことが目的。自称でも魔王と名乗れば倒される。戦いは見ていたけど圧倒的だった。あの魔族が弱いってこともあるけど。それでも不意打ちにも即対応して、倒すのも一撃だった。それに勇者の実力も聞いていたから、私や爺やが戦ったとしても秒で終わっちゃうだろう。
そして魔界では魔王になろうと名乗りをあげていると言うこと。私が今この世界にいることは、もう皆が知っているはず。そうなればこの世界は新たな戦場になるかもしれない。
「私はどうすればいいの……」
「魔王様……」
爺やと2人で歩いている。そしてこれからのことを話し合わなければならない。全ての鍵を握るのは勇者である祝君。
私は……
真桜「あの魔王って言った人。瞬殺だったね」
育事「さすがの勇者。強さはこの世界においても健在でしたね」
真桜「私なんか絶対に手も足も出ないな〜はは」
育事「それは私も同じでしょう。全盛期の魔王様でもどうなるかでしょうね」
真桜「私は魔王だけど。一つだけ言いたいことがあるんだ」
育事「……聞きましょう」
真桜「助けてくれた祝君。かっこよかった」
育事「は?」
真桜「だからかっこよかったって。あの時の黒い炎で死んじゃうかも!なんて思ってたら目の前に現れて守ってくれたんだよ?」
育事「それについては感謝していますが……相手は勇者ですよ?」
真桜「それはそれ。かっこいいものは仕方がないでしょう?」
育事「ふふ。真桜さんは前向きなんですね」
真桜「ふふ。おかしいよね。でも私は……」