第30話 揺れ動かされる勇者
スラムダンクの映画を観ました。
ありこれ色んなシーンで感動の嵐!とにかく観た方がいい映画です!漫画を知らない人でも楽しめるはず。
読んでくれた皆様!
ブックマーク、評価、いいね。くれた方々も。
ありがとうございます(*'ω'*)
イザナミが転入してきて数日。学生は出来ないだろうと思っていたが、案外クラスに馴染んでいる。
「伊邪那ちゃん!今日の課題やった?」
「勿論よ。勉強をこんなにやったのなんて久しぶりだったけど。案外私も出来た事が分かったわ」
「さすがだね〜」
勉強を久しぶりにとかおかしな発言も、クラスの皆が笑って流してくれる。始めのうちはぼろが出たら、その度にフォローを入れていたがそれも今はない。ありがたい事である。
「すっかり伊邪那ちゃんも慣れましたね」
「真桜が色々と面倒を見てくれたからさ」
「本当ですか?祝君みたいに出来てたら嬉しいです!」
「俺は別に特別な事はしてないぞ。真桜の場合は素直だったから、大変な事なんて一つもなかったしな」
「そ、そうですか?」
何故か照れる真桜。可愛いいんですけど。
「おい。祝に真桜」
「なんだ?皆と話してたんじゃないのか?」
「どうかしましたか?」
「話してたけど。分からない事があったの」
クラスに馴染みそれなりに仲良くなったイザナミ。だけどたまに話の内容で分からない事があれば、俺か真桜に確認してくる。
「期末試験とはなんだ?」
「あーもう2週間前か」
「期末テストって言うのはですね。今まで勉強してきた内容の確認テストです」
「習ってきた事を確認か。私は少ししかやってないから余裕だな」
「言っておくが、4月からやってきた内容な」
「私は4月いなかったが?」
「いなくても、周りと合わせるのが普通だ」
「それで言うと……5教科の始めの方も学ばねばならんな」
「期末だから美術とか保健体育なんか出るからな」
「「え!?」」
何故そこで真桜も驚く?あ。真桜も転校生だった。
「そんな事より祝」
「そんな事!?」
「真桜は勉強頑張ろうな。で、何かあるのか?」
「え、えぇ。こっちに来てから挨拶がないって。だから今日会うわよ。学校が終わったら付き合ってもらうわ」
「つつつ付き合う!?」
「はい真桜ちゃん。違うから落ち着こうか。はい、深呼吸〜」
「す、はぁ〜……ごほっ」
「息吸うのを忘れないで」
深呼吸で何故か涙目な真桜。それを頭を撫でて落ち着かせる陽。イザナミが何か変な事言ったか?特に何もないよな?そうなるとテストの教科が多い事で慌てたとか?
「いいな。祝を連れていかないと煩いし、面倒なんだよね」
「誰に会うのか分からないけど。面倒である事は分かった」
俺が会わないと煩くて面倒って事は、例の魔導士か騎士団の関係か?
あーなんだか帰りたくなくなってきた。絶対面倒に巻き込まれるやつじゃん……
そう言っても時間が過ぎれば、必ず放課後は来る訳で学校も終わる。
「今日は帰るな」
「2人には悪いけど。少しシュ……祝を借りるわ」
「別に悪いとかないんだけど」
「そそそそうです」
「はい、深呼吸〜」
「すぅぅぅぅ、はぁ!」
「気合いが入りそうな深呼吸ね」
今のを深呼吸と呼んでいいんだろうか?格闘家の気合いを入れるやつに似てなくもない。
「ほら。さっさと行きましょう」
「ちょい!引っ張るなって。ちゃんと逃げないから」
「ちゃんと逃げない保証がないから連れて行くの」
「また明日!」
「またね祝く……」
真桜の最後まで言葉を聞けず、俺はイザナミに引っ張られるがまま学校を後にする。
「そう言えばイザナミはどこ住んでるんだ?」
「え?知らないの?」
「あぁ。聞いてないからな」
「シュウの家の近くよ。いつも通学路で会うから、言わなくても分かってるかと思った」
「イザナミがどこに住んでるかなんて、知っても仕方がないだろう?わざわざ家を暴いたところで学校で会えるし。それに用があれば来るだろう」
「シュウは個人にあまり興味なかったか。まぁその方があの人も怒らないかな〜」
あの人。きっとこれから会う人だろうけど、俺はもしかして怒られるのか?
「でもきシュウが興味なくても、周りは放っておかないんだよ」
そう言ってイザナミは後ろに視線を送る。
「分かってるさ。会話は聞こえていないだろうけど。変に撒こうとするなよ」
「あ。やっぱり気づいてた?あの2人はシュウに興味があるのね」
「それはどうだろうな」
学校を出てから、俺らの後ろを尾行する2人がいる。常に周囲を警戒するイザナミ程ではないが、あんなあからさまに尾行していれば誰にでも分かると思う。
「あの真桜って子が魔王かなって少し考えたんだけど」
「突然どうした?」
「だってあの子も転校生でしょ?それにレベルも他の人に比べて高いし」
「真桜が魔王?それはないだろう。レベルは一般の人より高いが、それで言えばもっと高い人を俺はしている」
「なんだちゃんと魔王探してたんだ。ちなみにそれは誰かしら?」
「真桜の家にいる大家さんがレベル7だ」
「わぁ高いね。その人が魔王?」
「いや、歳が……」
魔王って娘だったと聞いているから、おばちゃんが魔王である可能性はないと考えていい。
「それと俺の母さんも7だ」
「え?シュウって魔王の子供?」
「そんな時系列が崩れる事があるのか?」
「ないわ。なら違うのね」
俺が17歳で勇者として転移している訳で。その時点で魔王が母さんであるはずがない。可能性は考えたが、そうなると時系列がおかしくなる。まぁ異世界が存在している訳だから、完全に否定は出来ないと思っていたけど。イザナミがないと言うのだから、この2人が魔王である可能性はない。
「それにしてもこの世界の人達は、こんなレベルでよく生きておけるわね」
「経験値を稼ぐ手段が限られてるからな。魔物は出てこないし、誰かを倒せば多少は入るが殺す訳じゃないからな」
「ふーん。そうなると真桜ちゃんの5って凄いわよね?諏訪さんは1な訳だし」
「まぁそうだな。外国から来たって言ってたから、もしかしたら紛争地帯だったのかもな」
「聞いたの?」
「あまりそう言う事は触れない方がいいと思って、詳しく聞いたりはしていない。仮に魔王だとしたら、少し弱すぎると思う。体力はないし、運動神経もいいって訳じゃないし」
「くしゅん!」
「ちょっと真桜ちゃん!?静かに」
何を喋っているか近づいて来てたか。このタイミングでくしゃみとか、真桜はやっぱり魔王が似合わない。
「そうね。あんな抜けた魔王なら簡単に倒せちゃうもんね。数日警戒して見てたけど、見れば見る程にただただ可愛い女の子ね」
「それは同意だ」
「へ〜女の子に興味はないかと思ってたけど」
「俺はノーマルだ。変な想像するなよ」
「そう言えば騎士団の副団長がシュウの事を……」
「……やめてくれ。あんな髭面で筋肉にどうにかされるとか恐怖でしかない」
「あらそう?向こうの世界では同性愛には寛大よ?」
「俺はお断りだ」
異世界はなんと恐ろしい世界なのか。そう言えばスキンシップが多いなとは思っていたが、もしかしてアイツらも?
「着いたわ」
「ここって……俺の家じゃん」
「そっちじゃないわよ」
イザナミに言われて振り返る。お向かいさんの家を指す。
「ここって老夫婦が住んでる家だったはずだけど?」
「その人に借りたの。そして話をした次の日にはどっかに行ってしまったわ」
「どこに?」
「さぁ?紙切れを何個か束で積んだ時に、世界を見て回れるぞって言う事は言ってたけど」
「あー前々から旅行好きだったのは知ってたが。外国に旅立ったのか」
紙切れを積んだってところは聞かないでおこう。知らなくていい事は世の中にたくさんある訳だし。
「それで俺に会わせたい人って言うのは誰だ?騎士団の連中か?真桜達が近くにいるから、あまり目立った行動は避けたいのだけが」
「1人よ。今呼んでくるから待ってなさい」
そう言うとイザナミは家に入っていく。
「そこにいるのは分かってるぞ」
「ひゃ!?」
「完璧な尾行だったのに……真桜ちゃんがくしゃみをするから」
「それ以前の話だけどな。そんな事より2人は何してんだ?」
「それは〜その〜……」
「真桜ちゃんが2人で何するのか気になるって言うから」
「諏訪さん!?それは言わないでって」
顔を真っ赤にして、陽の口を塞ぎにいく真桜。うん、可愛い。
―ガチャ!ダダダ……
玄関が開く音がして、扉の方を見ると1人の男が俺に向かって走ってくる。
「貴様が!」
「うお!?なんだよ!危ないな!」
「避けるな!」
「無理言うなよ。てか初対面の人に殴られる覚えはないんですけど!」
「煩い!分からせるにはこれが1番手取り早い!」
―ブン!ブン!
突然現れたと思ったら、殴りかかられた。格闘技はやっていないんだろう。型はめちゃくちゃだけど、いかんせん速いから避けるのも大変だ。
「祝君!?」
「!?出てくるな真桜!」
―パシ!
突然俺の前に出てこようとした真桜を止めて、拳が当たる前に受け止める。受けて分かったけど、速いだけじゃなく力強さもある。
「俺の拳を止めたか。さすがは勇……」
「おーっと!何を言っているのかな!」
コイツ俺の事を勇者と言おうとした。慌てて掴んだ拳を振り解き話を遮る。
「娘。俺はコイツに1発殴ってやらねば気が済まない。危ないから退いているのだ」
「殴ると言われて見ているだけなんてしません!」
「ぐぬぅ……ならば仕方がない。娘諸共……」
「やめい!」
―スパーン!
後ろから出て来たイザナミが男の頭を引っ叩く。
「イザナミ!痛いではないか」
「伊邪那よ。あなた」
「む。そうだったな。痛いではないか伊邪那!」
「あなたが突っ走るからです。それに会話が出来ない馬鹿な人は嫌いですよ?」
「まずは話そうじゃないか勇……シュウ」
コイツは一体誰なんだ?俺の事を勇者と知っていて、名前も知っている人物。
「伊邪那ちゃん。この人は?」
「この人は……」
「俺は伊邪那岐……ではなかった。ナギだ」
コイツ今、イザナギって言ったよな。そうすると、イザナミの旦那?
「シュウは私の妻を誘惑した罪で殴らねばならんのだ。分かってくれ娘!」
「私は真桜です。深淵 真桜」
「そうか真桜。では退いてくれるか?」
「だから退きませんて」
「ナギ?」
「はい!対話だな!分かっている」
こうして、突然紹介されたイザナミの旦那であるイザナギ。神様がこんなところに2人も居ていいものなのか?
これからどうなるのか。不安でしかないのだが!
真桜「行っちゃった……」
陽子「心配なら後をつけてみようか?」
真桜「で、でも誰かと会うって言ってましたし!」
陽子「バレなきゃ良いのよ」
真桜「でもでも……祝君には内緒ですよ?」
陽子「勿論よ。さぁそうと決まれば行くわよ!」
真桜「なんか諏訪さん楽しそう」
陽子「そ、そんな事ないわよ。探偵の漫画とか見てないし!」
真桜「?それならいいんですけど」