第3話 死にそうな魔王
Apple発表を深夜にみると、iPhone祭りきたなぁ〜って感じ(゜ω゜)
あれ、ミリ波はまだ付かないの?日本は遅れているんだなぁっと実感しますね。
読んでくれてありがとうございます(*'ω'*)
知識と教養を得るために。私は爺やと人族が集まる場所に来ている。
「人がいっぱいね……なんでこんなに多いのかしら」
「朝に特集があった場所ですから。最後の休日に近場で遊ぶためではないでしょうか」
「爺やはこの世界に偉く馴染んでいるわよね」
「生きるためには情報収集は必須ですから」
そうは言っても爺やの情報は偏っている気がする。やれあそこのスーパーで特売だの、今日は卵が安いからあっちのスーパーに行くだの。
「なんで今日ここに来たの?混むって分かってたみたいだけど」
「ここで春休み限定の露店があると言っていたので」
「もしかして甘いもの?そんなに食べると血圧上がるわよ」
「心配には及びません。鍛えてますから」
何を鍛えれば大丈夫なのか分からない。そもそも甘いものが食べたいなら、朝に手の込んだカレーを作らないで甘いもの作ればいいのに。
「カレーは一度作れば明日の朝まで保ちます。それに辛いものを食べたら必然的に甘いものを欲するものですよ」
「それは爺やだけでしょう」
「魔王さ……」
「ん!!」
爺やが魔王と呼ぼうとしたのを咳払いで止める。どこで勇者が聞いているか分からない外で、魔王様なんて呼んでバレたらまずい。
だから私達は外で使う用の名前を作った。恩人に咄嗟に答えた名前だから呼び慣れないけど。
♢
これはここに飛ばされてからすぐのこと。
「勇者から逃げるためとは言え、ここは何処なのよ。見たこともないものばかりだけど」
「私もこの建造物は分かりかねます」
―グゥ……
「お腹減ったわね」
「そうですね。かれこれ1日歩きっぱなしですからね」
勇者が魔王討伐に来たとお母さんに言われ、私はお母さんの秘術によって別の世界に飛ばされたらしい。1人だったら絶対すぐ死んでたと思うけど。
「爺やが居てくれて良かったわ。私1人じゃ何も出来なかったわ」
「私とて同じですよ。何も説明なしに任されたので」
トボトボ歩いていると、目の前に武器を持ったおばさんが現れた。
「まさか勇者の仲間!?」
「勇者?なんだいそれは?」
剣ではないそれを地面に突きつける。棒の先には何本も分かれた藁のようなものが付いている。
「魔王様。お下がり下さい」
「あ。煙かったかい?悪いね。この辺砂埃が凄くてね」
おばさんの足元には砂が巻き上がっている。この人は風魔法を使えるのね。
「それよりどうしたんだい。そんなボロボロで」
「えっとそれは……どうしよう爺や」
「ここは私が話しましょう」
爺やが謎の武器を持ったおばさんの前に立つ。
「私達は昨日この地へ始めてきて迷っています」
「あら。観光で来たのかい?こんな何もない住宅街に?」
「住宅街?この建造物の事ですか?」
「建造物ってただの家だよ?」
「これが家なのですか!?」
「家を知らないって。あんたらどこから来たの?」
「遠い場所としか」
「なんだい外国の人なんだね」
外国の人とはなんだろう?この建造物は知っていて当たり前だと言うの?
「よく見れば来ているものも日本の物とは違うねぇ……」
これは魔界で来ていた物。この世界の住人が知らなくても仕方がない。
「私も外国には行ったことないから。よく分からないけど」
―グゥ……
「あ」
「なんだい?お腹が空いておるのかい?」
「それが昨日から何も食べずに歩いてまして……」
「昨日からって。そこら辺の店に行けば何でも買えるでしょう」
「買うですか……」
「ん?そう言えばあんたら荷物は?」
「それが……昨日小さな森で寝ている時に」
「盗られたのかい!?そりゃ大変じゃないか!警察には話したのかい?」
「いえ、そのどこに何があるかも分からず……ひたすら歩いておりました」
「見知らぬ土地に来て災難だったね……そうだ。私の家がここなんだよ。良かったら何か食べてきな!」
そこで私達は見ず知らずのおばさんに命を助けられた。
そこは木の匂いがする小さな小屋……ではなく家だった。小さいながらも水が出るキッチンと呼ばれる場所。体を洗う風呂場はトイレかと思うくらい小さかった。
「本当に何も知らないんだね……」
「はぐはぐ!」
「美味です」
「はは。まだあるからそんなに慌てて食べるんじゃないよ」
こっちに来て初めて食べたのはおにぎりと呼ばれるもの。噛めばもちもちで、ほのかに塩っぽさが食欲をそそる。小さいながらも食べ応えもある。
「おにぎりは日本食の代表と言っても過言じゃないからね」
「おにぎり……美味しいです」
「はは。お嬢ちゃんは素直でいい子だね。そう言えば聞いてなかったけど名前はなんて言うんだい?」
「私は深淵の魔王……あ」
「しんえんのまおう?しんえんって言うのはお嬢ちゃんの国でかい?」
「あ、その」
勇者ではないし、ご飯をくれた良い人だと油断した。もし勇者に深淵の魔王だと伝わればまずいわ!言い訳が思いつかず爺やに視線を送る。
「じ、実はこの方のお母様が、私達をここに行けば良いと言ってくれまして」
「あーそう言うこと。あ母さんが日本の出身なのね」
「そうなんですよ」
なんか分からないけどうまく誤魔化せた?
「しんえんってどう言う字を書くんだい?」
字って?魔界の言葉がこの世界で通じるの?
「えっと……このように書きます。こちらでは違う読み方かも知れませんが」
え?書くんだ。それ大丈夫なの?
「深淵って苗字がどこかにあるのかね?もしかしてフカブチとかって読むのかもね」
「ふかぶち?なんかそんな感じだった気がします」
「深いに淵でフカブチとして、名前はまおちゃんで良いのかい?」
「はいそうです!」
このおばさんは勘違いが凄い。でもそのまま勘違いさせていた方が良いことありそうだから、私と爺やは乗っかる。
と言うことで、私の名前は深淵まおに決まった。
「まおちゃんか。いい名前だね。どう言う漢字を書くんだい?」
「漢字!?」
追求してきた!?漢字って何を書けばいいのか。ちらっと爺やを見るけど、今回は助けてくれない。それはそうか、自分の名前を書けないやつは流石にいないだろう。正直、苗字の流れで書いてくれても良かったんだよ?
「字が汚くても笑わないでね」
「ははは。子供の字なんてどれも変わらないさ」
字は魔界でもお母さんに習っている。でもこの世でも同じなのかしら?でもさっきの深淵は読めたしいけるかな。
『……今年は暑かったから桜の開花も早そうですね』
『真夏はもっと温度が上がると思うと、今から対策を……』
テレビで流れていた文字が目に入る。確か桜ってオウって読み方あったよね。
「綺麗な字を書くじゃない。親の躾が良かったんだね」
「お母さんは勉強しろーって厳しかった」
「はっはっは。どこの家庭でもそんなもんさ。でもいつかそれを感謝する日が来るさ。真に桜でマオちゃんか。綺麗でいい名前じゃないか」
適当に決めた割に我ながらセンスの良さが抑えきれなかったわ。自分の才能が怖いわ。
こうして私、深淵 真桜が誕生した。
「それでそっちのおじさまは?」
「爺やは私のお世話をしてくれる人。お母さんが爺やに頼んだの」
「爺やってそんな歳には見えないけどね〜」
「昔に住んでた屋敷では執事として働いてまして。その頃は髭も生やしてましたから」
「その名残で爺やなんだね。子供からすれば大人は皆お爺さんに見えておたのかも知れないね」
「はは。まだまだ若いつもりですが」
「今いくつなんだい?」
「「!?」」
しまった。自ら墓穴を!私、今いくつだっけ?
「真桜さんは17歳で私は37になります」
「真桜ちゃんは高校生かい。おじさまは若く見えるね」
「ありがとうございます」
なんか爺やの誤魔化しスキルが上がった気がする。顔色ひとつ変えないで、嘘をでっち上げてる。
「それじゃおじさまは真桜ちゃんの執事なのかい?お母さんは執事に任せたのかい?」
「真桜さんの母は私の妹ですから。昔から大事なことは何も相談しないでお願いされてきてますので」
「妹のお願いは断れないのは仕方がないね。そうかいじゃ真桜ちゃんは姪っ子かい」
ふぅ〜なんとか誤魔化せたわね。
「それでこれからどうするんだい?」
「どこか落ち着ける場所で真桜さんのご実家を探そうかと。どこかに住む場所と働き口を探して行くしかないですね」
「行く当てはないんだね」
「ありませんが……こればかりはなるようにしかなりません」
「外国ではそうかも知れないけど。この国じゃそれは中々に厳しいよ。住む場所とか口座が作るのに印鑑や証明書」
おばちゃんが何か呪文を唱えている?何を言っているのか全く分からない。爺やは……
「中々に厳しい国なんですね」
「そうだよ。だからこの国は助け合うんだよ。2人ともここにしばらく住めばいい。高校もここからなら通えるしね。働き口なら商店街にいくらでもあるさ」
「そんな一食の恩にさらにそんなことまで……」
「この子を任されたんだろう?だったらここは甘えときな。さぁ忙しくなるよ!」
こうして私と爺やはしばらく衣食住を手に入れた。
♢
だから私はここでは真桜として生きていく。
「今思えば、私達よく生きてるわよね」
「一文なしで家はおろか、知り合いもいませんでしたしね」
「おばちゃんに会えなければ……餓死してたわ」
「いざとなれば魔物を食べますよ。道にいた首ひとつのケルベロスや、小さなケットシーも頑張れば食べれるはず」
「ボアやベアーなら分かるけど。ケルベロスやケットシーは最後の手段よ」
近くにいたケットシーが私達から離れていく。やはり魔物の本能で感じとったのかしら。
「結構素早いわよ。あれは空腹時じゃ捕まえられなかったんじゃ?」
「やはり日本は厳しい国かも知れませんね」
でも周りの人間はケットシーを見ても捕まえようとしない。服も人それぞれ違うものを着ているし、中には飲み物を飲みながら歩いている人もいる。
「この国は裕福なのかも知れないわね」
「それかこれが基本の水準で、我々がまだそれに馴染んでいないのかも知れませんよ」
「やはりもっと外に出て観察しないといけないわね」
「……真桜さん。あれは買いませんよ」
「爺や私は飲んでみたいの。大人気のタピオカミルクティーを!」
先程から若い女の子は、必ずと言っていいくらい持っている。皆が持っていると言うのは流行っていて、美味しいと言うことが飲まなくても分かる。
「今日は限定スイーツを……」
「明日から学校なんだよ〜私は限定より流行りがいいの!ほら、あそこにあるみたいだから。行こうよ爺や〜」
「そんな引っ張らずとも」
無理矢理爺やを引っ張って連れてきた。店の前にあった看板にこの店のメニューが書いてある。
「SとかMって言うのは?」
「右にいくに連れて高くなりますね。おそらく量が変わるのではないでしょうか」
「どれも500円近くするのね……板チョコ4つは買えるじゃない」
「その計算方式だと早いんですね……」
爺やは買ってくれないとは言っていない。高いのは分かるんだけど、これは女子として絶対味合わなければならない。そんな気がする。
「爺や。このブラックでSが飲みたいわ」
「この期間限定で出ているもののLでもいいんですよ?」
「ううん。1番人気だし、初めてだから大きいのは飲み切れるか分からないしね」
「畏まりました。それでは店主さん。これのSをひとつ」
「ありがとうございます。こちらはアイスでよろしいですか?」
「え?あ、はい」
「シロップと氷はどうなさいますか?」
「……おすすめはありますか?」
「そうですね〜……」
爺やがあからさまに困っている。お店のメニューって指差して終わりじゃないの?そこからさらに先があると言うの!?
「お姉さん初めて?」
後ろに並んでいたカップル?が話しかけてくる。
「おい。知らない人に声をかけたら迷惑じゃないか?」
「そう?困ってそうだから」
「あ、あの!若い子はタピオカを飲むと言うので、飲んでみたくて。出来ればおすすめを知りたいです」
この国の人は助け合い。おばちゃんからそう聞いていたので、勇気を出して聞いてみた。
「タピオカ飲みたいなら、パールのトッピングと氷は少なめがおすすめ。シロップとかはスッキリな味わいでブラック選ぶならそのままかな?」
「じゅ、呪文!?」
「あはは。初めてだとそう聞こえるよね〜」
「確かにこの手の飲み物は、メニュー指差しで終わらないからな。始めは戸惑うよな」
「そうなんです!」
あ。つい食い気味で話しかけてしまった。相手の男性も勢いに少し引いてしまってます。お隣の彼女さんに申し訳ない。
「申し訳ありません!」
全力で謝った。
「そんな謝る必要はないよ。兄貴は女の子の扱いが苦手なだけだから」
「お兄様でしたか……」
「もしかして彼氏だと思った?ないない」
「おい。それはお兄ちゃん傷つくぞ」
「はいはい。早く買って次行こうよ」
「そうだな。すいません。チョコドリンクにパール2倍でシロップ多めの氷は少なめで」
「それ2つ」
これが若者!?呪文もあんなにスラスラと……
なんとか助けてもらいタピオカをゲットしました!
「それじゃゆっくり味わって〜」
「ありがとうございました!」
若い兄妹と別れ、手元にはあのドリンクが。
「この国は優しい方が多いですね」
「……ごふっ!?」
「真桜さんゆっくり味わって下さいね」
ストローを登ってきたタピオカにびっくりして咽せたけど。
「美味しい……」
「ほほ。それは良かったですね」
この世のはこんなに美味しいものが溢れているのかしら?死にそうになってここまで来たけど。日本も良い国ね!
真桜「私に名前……これは勝ったわ」
爺や「おばさまがうまく誘導してくれましたからね」
真桜「おばちゃんグッジョブ!」
爺や「グッジョブ?」
真桜「知らないの?若い子の間では、いい仕事をした人にこう言うんだって」
爺や「グッジョブですか。では私も覚えておきましょう」
真桜「私グッジョブかしら」
爺や「なんだか使い方が違う気もしますが……グッジョブです」
真桜「言いたいだけなんだけどね」