第24話 鍛えてて良かったと思う勇者
チェンソーマン作者のヒストリーって動画を見た。
あのエピソードが、あの作品を作ったと考えると頭のネジが飛んでるって大切なんだな〜って思いました(・∀・)だはは
読んでくれた皆様!
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ありがとうございます(*'ω'*)
皆で運動するには狭いと言う事で、家の庭ではなく公園まで来ている。謎のバックから次々と出てくるスパーリング一式は、もう突っ込む必要はないか。
「張り切っていってみよう!誰からくるかしら?」
「なんで母さんが1番乗り気なんだよ……」
「めぇちゃんのお母さんに蹴るとか僕……どうしよう師匠?」
「俺に聞かれてもな」
「あら?祝は桐花ちゃんの師匠なの?ならそのお母さんよ?安心してきなさい」
「はい!師匠の師匠!」
別に俺は母さんの弟子ではない。そして稽古をつけてもらう事もした事ない。
「兄貴。お母さん大丈夫かな?桐花は手加減とか器用な事出来ないよ?」
「母さんは桐花が日本一と知ってるんだよな?」
「言ったような気はするけど。と言っても普通の主婦に桐花ぼ蹴りを受けられるとは……」
「んー今は、母さんを信じるしかないだろう」
「いきます!」
軽くその場でぴょんぴょん跳んだ桐花。掛け声と共に鋭い蹴りがミットに沈む。
―ズバン!
「いい蹴りね。さすがは祝の弟子ね」
「ありがとうございます!」
弟子と言っても、俺が桐花に何か教えた事はない。
「せい!は!や!」
―ズバン!ズバン!ズバン!
下段、中段、上段と軽快な蹴りを繰り出す桐花。それを顔色変えずに受ける母さん。しかも蹴りの反動でその場を動く事もない。体幹強すぎじゃね?
「なぁ神野君のお母さんは何者なんだ?桐花の蹴りで1ミリも動かないとか……」
「俺に言われても。こんな母さん見るの初めてなんだよ」
「押忍!ありがとうございました!」
しばらく打ち込むと。お辞儀をして桐花が戻ってくる。
「さすが師匠の師匠です。全く動かせなかったです。兄は一撃で吹っ飛ぶのに」
「……そうか。藤宮も苦労してるんだな」
「誰かさんのおかげでな」
「すまんな!」
俺に全ての攻撃を避けられてから、たまに打ち込みに付き合わされるらしい藤宮。そこは俺のせいじゃないけど。一応謝っておく。
「次はめぐちゃん」
「え?私もやるの?」
「そうよ。カロリーは強敵よ」
「私、蹴った事ないんだけど」
「大丈夫だよ!蹴りなんて重心落として、こうやって蹴るだけだから!」
手本を見せる桐花だが、恩はバスケットをしているだけで。日常に蹴るようなシーンはないはず。そんな見よう見真似で出来るとは……
「えい!」
―バスッ
「形は綺麗だけど。全然軽いわね」
「中学3年生の蹴りに何を求めてるの?」
「私の娘ならもっと出来るはずよ!さぁもう一回!」
「えぇ……」
その後、何回か蹴ってみるが威力は変わらない。
「はぁー疲れた!真桜さん交代!」
「え?」
「良いわよ。未来のお嫁さん候補。その強さ見させてもらいましょう」
「えぇ!?」
何言っているんだ母さん。どこの世界に姑に蹴りを入れる嫁がいる……じゃなくて、何が嫁候補だ!?真桜もびっくりしてるじゃないか。
「私もやった事ないですけど……頑張ります!」
「その粋や良し!来なさい!」
何このスポ根漫画みたいな展開。真桜だって日常で蹴るような事は今までなかっ……
―ズバ!
「あら。型は少し変だけど。威力だけで言えば、めぐちゃんより強いわね」
「あ、ありがとうございます!」
そう言えば、真桜ってレベル5はあったな。恩より基礎ステータスが高いから、あの威力って言うのも分かる。いや、やっぱり分からん。真桜は格闘家ではないはずなんだ。
「いい蹴りね。これは少し鍛えれば強くなれるわ」
「はい!けいちゃん!」
「深淵さんって何か格闘技でもやってるのか?女子高生ってそんなものなのか?」
「運動全般は苦手だと思ってた」
「さすが師匠が認めた人。初心者とは思えない蹴りです」
「認めたって……」
母さんの桐花も真桜をどう考えてるんだよ。別に俺らは何も始まっていないんですけど。
―ポスッ
「ひゅ〜ひゅ〜」
「大丈夫か真桜?体力ないんだから無理すんな」
「はひ」
「力は強いけど。体力がないのが課題ね。次は祝!」
「え?俺もやんの?」
「当たり前じゃない。貴方の成長を見せてみなさい」
「頑張って下さい師匠!」
「兄貴。分かってると思うけど。本気でやらないよね?」
「さすがにそれは……」
本気で人を蹴ったら、動く動かないのレベルじゃない。下手したらどこかに吹っ飛ばしてしまう。母さんにそんな事出来る訳ないし、そもそも人間技じゃないのを見られるのも良くない。
「さぁ来なさい!」
「やらないって選択肢が欲しい」
「ダメよ。めぐちゃんも真桜ちゃんもやってるのに。男の祝がやらないのはねー」
まぁ俺にはスキルで【手心】がある。とは言え、前に不良を蹴ったら吹き飛んだんだよな……
「さぁ来なさい祝!」
「あーうん。それじゃ少しだけ」
母さんが構えてあるミットに軽く蹴りをする。
―パスッ
「何その蹴り?形だけ綺麗で全然威力ないじゃない」
「いや、母さん相手に蹴りを入れるとかな」
「それならしばらく甘いもの抜きにして、激辛料理を出すけど」
「真面目にやろうじゃないか。どうなっても知らないからな!」
「兄貴……お母さんの手のひらすぎる」
母さんの甘いものが食べられないのもだが、激辛料理はマジで洒落にならない。以前に食べた時は、しばらく甘いものの味が分からなくなった。あれは何をした時だっけか……
「いくぞ母さん!」
―ッシュ、ズバァァァン!
「うん。さっきよりはマシね」
「嘘だろ……」
「めぇちゃんのお母さん凄すぎです」
「そうなの?私にはよく分からないんだけど」
「さっきの師匠の蹴りはね。ミットの音がするまで蹴ったの見えなかったんだよ」
「そうだった?」
やべ。つい本気で蹴ってしまった。威力はスキルで誤魔化せたが、速さび関しては関係ないらしい。そんな事より母さんがマジで動かないんだけど。レベル3のチンピラ吹き飛ぶくらいの威力はあるはずなんだけど?
「確かに蹴る速さも型も綺麗だったわ。でも何か違和感があるのよね。何かの力で手加減されたような……」
「俺の蹴りより。一歩も動かない母さんの方が異常だと思うんだけど?」
「蹴りに合わせて力を受ければ、動かないくらいは訳ないわよね?」
「そ、そう言うものなのか?」
桐花が俺の蹴りを見えないって言ってたんですけど。それに合わせるって事は、母さんにはあれが見えてると?レベル100の勇者である俺の蹴りが?
「さぁどんどん来なさい!」
「マジか……」
一回だけじゃ満足できない母さんは、この後もどんどん蹴りを要求してくる。何十回か打った時には、俺の方が疲れてしまった。
「中々いい蹴りだったわ。母さん少しだけ燃えてきちゃった。だから……はい」
俺にミットを渡す母さん。これはもしかしなくても?
「次は私ね。女の子に任せる訳にはいかないから。祝がお願いね?」
「何もしていない男子が1人いるんだけど?」
「ば!?空気と化した俺を売るな」
「桐花ちゃんの蹴りで吹き飛んじゃうって聞いたわよ。それだと危ないじゃない?」
さっき話していた内容聞こえてた?桐花の蹴りを受けてたはずなんだが。
「さぁ構えて。カロリーやっつけるなら、100回くらいでいいわ」
「いやいや、多いから」
「大丈夫。そんなかからないから」
―ビュン!
軽くその場で蹴りをする母さん。今、風を切る音がしたのは気のせいではないよね?
「いくわよ祝!しっかり受け止めてね!」
「ちょ!?」
―ズバン!
いきなり顔を狙った上段蹴り。俺の構えたところに蹴るんじゃないんですかね?ミットのないところ狙ったら、顔面に綺麗な蹴りが決まるところでした。
「今のを受けるなんて……さすがは私の息子ね!」
「その笑顔が怖すぎ……って!!」
―ズバン!ズバン!ズドン!
中段、上段かたの回し蹴り。思わず一歩後ろに下がり受け止めた。
「今のも受けられるのね。誰も受けられなかったんだけどね」
「え?」
受けられなかったって、誰かにこれをやったって事?それってどう言うこ……
母さんは一歩下がった俺に近づくために一歩前に出てくる。その顔が本気過ぎて、また数歩だけ後ずさる。
「あら?逃げてはダメよ?逃さないけど!」
「ちょ、止めて恩!」
「私には無理!頑張れ兄貴」
覚醒した母さんを止められる人は誰もいない。ミットを蹴るだけのはずが、母さんはフェイントまで入れてくる。その蹴りは容赦なく俺の顔面にくるから、俺は受けずに回避する事を選んだ。
そして何分かして、母さんの覚醒モードは終了した。
「今ので100ね。皆もいるし、打ち込むのはここまでにしましょう」
「お、終わった……」
「神野さ……祝さん。大丈夫ですか?」
「俺の首、ちゃんと繋がってるよな?」
「はい。しっかり繋がってます」
「あはは。祝は大袈裟ね」
笑い事ではない。本気で首を持っていかれるかと思ったし。何発受けたとか数えてないから、俺はずっと死ぬ気で防いでた。マジで鍛えていてよかったわ。
「それじゃ〜……次はこれね」
母さんが出したのはグローブとパンチングミット。あのカバンにはまだ何かあるのかも知れない。だけど触れたら最後な予感がするから、今回もなんで入れているかは聞かないでおく。
「せっかくだ。桐花は俺が相手しよう」
「本当ですか!?」
「えー祝。私は?」
「せっかくだから師匠ぽい事しようかと」
「それもそうね。それじゃ私はめぐちゃんと真桜ちゃんうぃ鍛えた後に、藤宮君にお願いしようかしら」
「え?」
「今回は吹き飛ぶ心配はないからね。なんなら避けてくれてもいいのよ?」
「いやいや。絶対危ないやつじゃないですか!?神野君!?」
「さー少し離れようか桐花」
「はい!師匠!」
藤宮の助けを求める声がする。さっきの100連蹴りを見たら、そう思ってしまうのも無理はない。恩と真桜もいるんだ。2人に任せよう……南無さん!
「とりあえず打ち込んでこい」
「いいんですか?この前までの私とは違いますよ?」
「ほぉ……(鑑定)」
鍛えたと言っている桐花。一応どれだけ強くなったか力量を見る。レベルは5で変わってない。
やっぱり誰かを倒すような事をしないとレベルは上がらないんだろう。
ん?そうなると真桜のレベルが高いのは何故だ?
「師匠!準備出来ました!」
「お、おう!」
今は目の前に集中しようか。
―バシン!
ミットだから受けたけど。中学生にしては力強いパンチだな。
「軽々と受けられると少し凹みます」
「桐花の拳は綺麗すぎるからな。攻撃に転じる体の動きを見れば、どこにどう打ち込むのか分かるんだぞ」
「そんなの分かるんですか?」
「今は普段着で色がある服だから、判別は難しいけど。実際は道着を着てやるんだろう?」
「そうです」
「なら分かるやつには分かるだろう」
「私にも出来ますか?」
「ん?どうかな。練習と言うか意識しないといけないと思うけど」
目を鍛えるって言うのもいいかも知れないな。格闘技について俺は桐花に教えられる事はない。しかし相手を観察すると言った、戦闘経験で話す事を出来るはずだ。
「それじゃ……」
「おぉ!」
「ただ上着を脱いだだけなんだけど」
「師匠は本当に高校生ですか?」
「そうだけど?」
「兄と比べて体が全然違います」
「妹を守るお兄ちゃんは強くなきゃいけないからな」
「……きゃ」
恩達の方を見ると、真桜が俺を見て顔を逸らしてくる。俺、何かしただろうか?
「まぁいいや。いいか?スローで体を動かす。それを見ながら攻撃を避けてみろ」
「え?あ、はい」
構えた桐花にゆっくりとパンチを繰り出す。
「遅っ!」
「無駄話はするな〜体の軸や重心、筋肉の動きや予備動作も見ていればこれでも早い方だ」
「はい!」
「まずは重心。相手の足を見る。そしてそこから足に力を入れているか、腰から腕に力を伝えるかを見極めようか」
「……」
俺の言った意味を即座に理解して、俺の足をじっと見る。今回はそのまま上段の蹴りをする。じっと見る桃花の目は真剣そのもの。ゆっくり頭を狙って蹴りを繰り出せば、じっと見ている桐花。
―コツン
「避けろよ……」
「は!集中しすぎました!」
「だからゆっくりやっているんだ。これに速くしたら無理だろ?」
「確かにそうです。今の動き私もやってみていいですか?」
「あぁ」
俺の蹴りを真似る事で自分の筋肉がどう動いているかを見るのも重要だ。桐花は何も言わずに自分でそれに気づく事が出来る。やっぱり戦う事に関しての才能があるって事だろうな。世界が違えばきっといい格闘家になっただろうな。
「い〜き〜ま〜す〜」
言葉までゆっくりになってるのを聞いて、少しだけ笑いそうになったけど。桐花は本気だから笑ってはいけない。
「と?っとと」
「もう少し速くしても大丈夫だぞ?」
「……師匠。さっきの動きをゆっくりやって、よく体勢崩れないですよね」
「まぁ鍛えてますから」
「私には体幹も筋肉も足りないって事ですか。帰って筋トレの回数増やさないと……」
「過度な筋トレは禁止だ。自分が動かす筋肉を理解してから、どこにどう乗せるか。柔軟性も重要だからストレッチもしっかりな」
「さすが師匠!師匠もそうやって筋トレを?」
「俺は長く動けるようにしなやかな筋肉を意識してたな。腕は重いものを持てるようになりたくて鍛えた」
戦闘中にばてたら勝てる戦いも勝てないからな。何時間もぶっ続けで歩いて戦闘。しかも重い剣や鎧なんかを着ながらだから、やわな鍛え方してたら冒険なんて絶対できない。ゲームみたいに何時間もレベル上げとか現実じゃ出来ないんだよな。
「師匠?」
「あーすまん。とにかく交互にこれをやっていこうか。慣れてきたと感じたら速度を上げていくからな」
「はい!師匠!」
俄然やる気の桐花。こう言うのも向こうの世界で少しやってた時期もあったな……
どれくらい経ったか分からないけど。母さん側の3人がばててへたり込んでカロリーを倒す目的は無事に達成出来たようだ。
「もっと、やりたかったですけど」
「これなら1人でも出来る内容だから。感覚掴みたいなら兄に付き合ってもらえ」
「はい!」
「お、おい。今、俺の事言ったか?」
「大丈夫だ。ゆっくり蹴るだけだから、当たってもたぶん痛くない」
「なんだそのたぶんとか!」
この数時間で桐花の目はだいぶ鍛えられた。始めに比べたら速さもだいぶ上がってきた。何度かやってたらあっという間に進化していくだろう。そうなれば藤宮が避けきれず当たる日も近いだろう……南無さん!
そうして何故か勉強会のはずの集まりが、遊んで体を動かして終わりとなってしまった。
明日もあるし。なんとかなるでしょう。
真桜「……きゃ」
恵「あらあら。祝も本気ね」
恩「兄貴……また筋肉増えた?」
真桜「あんな姿……恥ずかしくて見てられません!……ちらっ」
恵「男の子の腕ってなんか目を奪われちゃうわよね。分かるわ〜」
恩「お父さんはそう言うのは皆無じゃない?」
恵「あら?お父さん見た感じは弱そうだけど。これ以上は言えないわ……きゃ」
恩「…………聞かないでおくね」
真桜「藤宮さんを見て落ち着きましょう。すーはー」
藤宮「深淵さん。俺をさりげにディスってる?」