第22話 理解しようとする勇者
漫画が面白くて、なろうに小説が上がっているのを知り、全て読んでいたんですが。更新が去年で止まっていた(°▽°)書籍は最近出たから、進んでいるはず!早く続きがよみたいです!
読んでくれた皆様!
ブックマーク、評価、いいね。くれた方々も。
ありがとうございます(*'ω'*)
色んな情報を受け取りすぎた真桜。会話が支離滅裂で面白かったりはするが、転校したばかりで1年の復習とか確か大変かも知れんな。
「それなら勉強会をしよう。ちょうど連休もある訳だし。真桜ちゃんならなんとかなると思うよ」
「諏訪様!」
「それは私にもやめて欲しいなぁ。むず痒い」
「すいません!」
まぁ陽は毎回神社の手伝いとかで、旅行に行かないから教える時間はあるだろう。正直真桜の授業態度や姿勢があれば、連休使えばなんとかなりそうだな。
「じゃ。頑張れよ真桜」
「え?」
「おい。神野君……流石にそれはないだろう」
「そうだよいっくん。それは人の所業じゃない」
「委員長コンビがいれば俺はいらんではなかろうか?」
そんな事を言えば2人してないないと首を横に振る。俺は数学だけの男だぞ?他の教科は2人に勝てるわけがない。
「真桜の数学は俺と変わらないレベルであるなら、俺が教えられる事はないぞ?」
「いっくん。三人寄れば文殊の知恵ってことわざ知らないの?」
「陽こそ分かっているのか?真桜と委員長2人で3人だろう」
「出来ない子をカウントしてどうするのよ」
「はぅ!?」
俺を引き止めるつもりで言った言葉だったが、真桜が少しだけダメージを負っている事に陽は気づいていない。
「神野君。三本の矢は折れにくいと言う言葉を知っているのかい?」
「あれだろ。大胆な金融政策が一の矢で……」
「何を言っているんだい?」
「持続的な経済成長についてだろ?株を嗜むからな、政治や経済は頭に入れているんだよ」
「毛利元就が発した『三子教訓状』の話なんだが?」
「あ〜そっちか。俺なら三本くらい余裕だぞ」
「神野君は諏訪さんと深淵さんを折るのか?」
「何故そうなる?」
「確かに数学だけは出来るが、それ以外の矢は的にすら届かないんだぞ?」
「はぅ!?」
お前らは真桜を追い込みたいのか?俺がどうこう言う前に、真桜のHPがなくなるぞ?あ、俺のHPもまずい。そろそろ甘い物成分がなくなる。
「神野さん……爺やのホットケーキは美味しんですよ」
「行こうか。ほら、何をしている2人とも」
「え?今日から?」
「いや、俺達は委員会があるんだが」
何だそれ。何で俺を誘う流れだったんだ?
「元から連休の話でしょう?連休なら私の家でやろうとか色々考えていたけど」
「俺の舌はもうホットケーキを求めている。どうしてくれるんだ?」
「それならいっくんが1人で教えればいいじゃん。連休は連休でまた連絡するし。あ、そうだ真桜ちゃん。ID教えてよ」
「真桜はケータイないぞ」
「え?またまた〜……本当に?」
「高校生で持ってない人もいるんですね」
「なんかすいません」
真桜が持ってない事で2人に謝る。別に高校生だから持っていなければいけない理由はない。最近の世の中では小学生も持っていると聞くが、家庭の事情で持たない理由でもあるんだろう。
「てか。ケータイないのもだけど。いっくんが知ってるのは意外だよね」
「神野君は最近一緒に帰っているし、この前の休日は2人で出掛けたと聞いているけど」
「あーそれ真桜ちゃんから聞いた」
「細かい事は明日決めればいいだろう。それじゃ」
「あ、ちょっと」
「お二人とも委員会頑張って下さい。また明日です〜」
何か追求される前に真桜を連れて教室を出る。まぁ今逃げても明日もあるから、結果はあまり変わらないと思うけど。
そしてそのままの勢いで真桜の家まで着いた時に気がついた。
「突然来ても良かったのか?」
「どうだろう?聞いてくるね」
「おや?彼氏君。今日も真桜ちゃんを送ってくれたのかい?」
「はい。それとおばちゃん、俺は神野です。彼氏ではないです」
「はっはっは。どっちでもいいじゃない。今日もどこかに行くのかい?」
「いや、今日は勉強をする事になってます。真桜……さんが爺やさんに聞いているとこです」
アパートの前で待っていると、おばちゃんと遭遇して色々と話をする。俺が来る時はいつも出てくるけど、タイミングをいつも狙って出てきているのではって思う。
「神野さーん。いいですよ〜入って下さい」
「おや。許可がおりたみたいだね」
「お邪魔します」
「どうぞごゆっくり〜」
おばちゃんに挨拶して、2階にあつ真桜の部屋まで向かう。
―ガチャ
扉が開くと隙間から真桜がちらっと顔を出す。可愛いかよ。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいました」
「……こほん。神野君こんにちは。私もしっかり居りますので」
「爺やさん!こんにちは!お邪魔いたします」
「邪魔はしないで欲しいけどな」
―ゴスッ
「かはぁ……」
「あっちに机あるからそこでいい?」
「あ、あぁ」
後ろから不意打ちのブローで爺やさんが沈む。前に真桜のレベル5だと見たけど、もしかして爺やさんを倒した経験値が……
「(鑑定)」
お腹を抑えながら沈む爺やさんに、生存確認の意味で鑑定してみた。
「え?」
「どうかした?」
「あーその……爺やさんは大丈夫なのか?」
「これくらい大丈夫だよ。いつもの事だから」
いつもとは言え、脇腹に不意打ちブローはかなり来るだろうに。真桜は自分がレベル5ある事は知らないだろうから、何も知らない一般のおじさんが本気で殴られたらやばいかも知れない。
でも爺やさんはレベル9と、ここ世界に来てから1番高い人。不意打ちとは言え、いつも爺やさんを倒しているから真桜のレベルは高いのかも知れない。
「爺やはいいから。しばらくすれば回復するから」
「お、おう」
スキルに『自然治癒力A』ってあったのは見て知っている。野生の魔物とか動物であるのは見たことあるけど。人にもこのスキル適正あったんだなぁ。
いつまでも立っているとおかしいから。真桜の出してくれた机の前に行き、どこに座るか悩む。これは隣か?それとも正面か?
「はい。どうぞ」
「失礼します……」
どうしようかと思っていると、隣にクッションを置いてここに座るように催促されたので座る。
「少し近すぎやしませんか?」
「爺や。うるさいよ?」
「しかし真桜さん。それでは手が当たってしまうじゃないか……」
「広い部屋じゃないんだからしょうがないでしょう」
「それであれば向かい合っても……」
「正面って恥ずかしいじゃない」
横に座るのは恥ずかしくないのだろうか?真桜の感覚はよく分からない。
「もう勉強しましょう!どれから勉強すればいいですか?」
「ん〜まずは分からないところを理解するところからだけど。じゃ国語からで。分からないところってなんだ?」
「国語ですか?あ、聞きたい事があったんですよ」
「お。そう言うのいいな。それを解決していけば、きっと数学みたいに簡単に解けると思うぞ」
「はい!それでは……死んでしまった作者さんの気持ちが、どうして皆様は分かるのでしょうか?生きている方でも分からない問題もあると思うのですが?」
「…………」
え?何その質問。国語ってそんな哲学な話だっけ?文章から読み取れって話じゃなかったか?
「今は古文とか色々昔の人が思った事を学んでいるじゃないか」
「はい」
「この詩や物語を読んで、自分がどう感じたかを書けばいいんじゃないか……な」
苦しい。なんか言い訳している感じがする。そもそも作者の気持ちなんて分かる訳ない。近しい存在であればあるだけ分からないものだ。
「私がどう感じたか……どうしてだろう」
「考え方は人それぞれだからな。明日、陽や藤宮にも聞いてみるといい」
「人それぞれですか……爺やはどう思いますか?」
「ほ?」
お茶を持ってきてくれた爺やさん。真桜が不意打ちで聞く。
「相手の気持ちを理解するのは、とても難しいのですよ。まずは相手の気持ちになるであったり、相手の事を知ろうとする事から始まるのではないでしょうか?」
俺の苦しい説明より凄くしっくり来る!さすが爺やさん!
「そっか。その人がどんな人か……。理解したい場合は相手を知るって事ね。国語は何となく勉強方法が見えてみました。次は理科なんですけど」
こんな感じで真桜が思う疑問を爺やさんと一緒に考える場になった。てか今回はマジで爺やさんに助けられた事が多かった。俺の方が勉強になった。
「お二人ともそろそろ休憩としましょうか」
「そうだね〜ずっと考え事してると疲れちゃうもんね」
真桜の勉強に対する考え方は効率がものすごく良い。今一緒に一つの問題を考える事はせず、どうやって勉強すればいいかなどの方法を探すやり方。
皆で勉強する時間は限られている。1人になった時にどうやって勉強するか。マジで今日は来てよかった。
「神野さん?」
「あ……そうだな。しかし真桜は凄いな。そんな考え方しているのに、勉強会する必要はない気がするけどな」
「私1人だとダメなんだよね」
「ダメって?爺やさんもいるんだったら、聞いたら分かりそうだけどな」
「真桜さんは何で?が止まらなくなるのですよ。私が言っても止まらないのです。ですからご友人の言葉で、どこで止めればいいか。それを知れる事が大きのです」
真桜って意外と考え込むタイプなんだな。
「困りました」
「どうかしましたか?」
「ホットケーキを作るのに卵が足りないのです」
「それはやばいわ!おばちゃんに貰えないか聞いてくる!」
「あ、おい。真桜……」
止める間もなく真桜は出ていってしまった。部屋には俺と爺やさんの2人。
「すいません。なんか……」
「真桜さんがホットケーキをご馳走すると言ったので気にする事はありませんよ。それにこれはこの前のお礼も兼ねていますから」
「お礼?」
何かお礼を言われるような事はしていないと思うんだけど。
「君と出会ってから真桜さんは楽しそうに学校の話をしてくれるからな。今までは決まりで遠出も学校もあまり行く事が出来なかったんだ」
「そうだったんですね」
真桜は学校に対してあまり慣れていない感じがする。どこか探り探りな事が多い。知っているであろう常識も少し欠けているのは、そう言った事情があったんだな。
「それに歯応えのある卵焼き……その正体は殻であるろう?」
「まぁ入っちゃったもんは仕方がないです」
「ジューシーすぎる唐揚げ。最低限の準備は手伝いましたが、美味しそうに食べてくれたと聞き……嬉しい反面、貴方の胃袋が心配にもなりました」
まぁ生だったりおかしな調味料を使ってないから、食べれない事はない料理だったからで。それは爺やさんのフォローがあったからだと知り、心の中で感謝した。
「ですからこれはお礼です。真桜さんの気持ちを汲んでくれた事に対して」
「それでは……ありがたく」
「しかしこれを食べたからと言って、真桜さんとの交際を認めた訳ではありませんからね」
「え?」
「先程も言いましたが、相手をもっと理解する必要があるんです。私は貴方について何も知りません。おばさまは信用できると言っていましたが、私は自分の目で見るまで信用は出来ませんから。真桜さんが楽しそうにしているのは、感謝していますがそれとこれは別です。真桜さんは小さい頃からずっと私が一緒に見てきたんです。小さい頃はおねしょ……」
―ゴスッ
「げほぉ!?」
「ただいま神野さん」
「あ、あぁ。おかえり」
「爺やを1人にしたのは間違いだったわ。変な事言ってなかった?言ってたとしても忘れてくれると嬉しいな?」
「あー大丈夫だ。真桜が大事だって話を聞いていただけだから」
「それなら良かった」
俺と爺やさんを見ている目が全然違う。横からだけどあの冷たい目は俺に向けられたものではないけど、背筋がピシッとなる感覚にゾクゾクしてしまう……ってそんな性癖はないと思う。
今日真桜の家に来て分かった事がたくさんあった。今回は国語の作者の気持ちって感じで話していたが、もっと理解したい気持ちは現実の世界でもある。
俺はもっとこの世界を理解していかないといけない。何となくそんな気がしている。
そしてこの日、食べたホットケーキは絶品だった。俺は爺やさんについても興味が出てきた。まだまだ世界は知らない事で溢れているって気づけた1日であった。
祝「こんな神の料理が存在したのか……」
爺や「神の料理とは畏れ多い。興味があれば学んでみては如何かな?」
祝「私は食べる専門なんですが」
爺や「好むのを否定はしません。しかし作ると言う事は、その甘い物をさらに理解する」
祝「そうか……理解するのは何も人物だけではないっと?」
爺や「考えるのです。この世界は広いのですよ」
祝「はい!」
真桜「なんか2人とも凄く仲良くなってない?」