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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第1章 出会う2人の道
20/52

第20話 一般人として戦う勇者

今日もサイレント遅延な中央線。乗り換えがあるのに、乗り換え先は待ってはくれない。

遅延するなら連携してくれ!_:(´ཀ`」 ∠):


読んでくれた皆様!

ブックマーク、評価、いいね。くれた方々も。

ありがとうございます(*'ω'*)

 今日は色々あったな。

 朝から変なのに絡まれて、ボートで撃墜したり。何故か歯応えのある卵焼きとジューシーすぎる唐揚げ、そして中身が不思議なおにぎりも食べた。お腹の様子やステータス異常はかろうじて無い。

 そして真桜が寝てしまった後に襲いかかる様々な障害。時間もいい時間だからそろそろ帰る時間だな。


「それじゃそろそろ帰るか」

「1日ってこんなに早かったんだね。まだ帰りたくないな……」

「……爺やさんも心配しているだろう?また月曜になれば学校で会える訳だし」

「そうなんだけど。そう言う事じゃないと言うか?」


 まだ帰りたくないとか、そんな台詞を聞く日が来るとはな。爺やさんを言い訳にしているけど。実際は少し日和った自分。情けないなって思う。


「まぁまだ時間はあると思うし。焦らなくても大丈夫だよね……んー!」

「ずっと歩いて少し疲れたか?」

「疲れは全然大丈夫。お昼寝もしたからむしろ元気なくらいだよ」

「そうか。何にせよ今日はいろいろあったな」

「あの変な男の子人は出てくるかな?」

「そう言う事を口にすると……」

「ん!」


 慌てて口を塞ぐ真桜。


「帰りは行きと違う出口から出ようか。電車に乗らなくても帰れるし」

「電車に乗らないの?そうなると手も……」


 もじもじしている真桜の考える事は分かってしまう。さっきは日和ったが、これくらいは許されるよな?


「真桜。手を……繋ぐか?」

「え?……はい!」


 驚いてはいたが、真桜は素直に俺の手をとる。そして帰らないとって言ったけど、少しでもこの時間が続くようにゆっくり歩いた。




 このまま何事もなく帰れれば良かったんだが。


「フラグって面倒だな」

「私が口にしちゃったから?」

「アイツが暇なだけだろうな」

「待ってたぜ!」


 目の前には真桜に寄ってきた男。ボートのところでめちゃくちゃ怒られた腹いせだとか。聞きもしない事をペラペラと喋ってくる。


「それで何がしたいんだ?」

「何ってお前をボコす!」

「言ってる事は子供だな」

「っは。手なんか繋ぎやがって、彼女の前で恥をかかせてやるぜ」

「コイツはボクシングやってるから。油断してるとすぐ終わっちゃうよ。気をつけなよ、おにーさん」

「……(鑑定)」


 ボクシングをやっているか。そうなればそれなりのレベルとスキルが……レベル4?思ってたより低いな。格闘スキルもないし、もしかしてこけ脅しか?まぁ全国に行く桐花でレベル5って考えるとそこそこ高いのかも?

 全体を把握しようと周りの奴も鑑定でレベルを見てみる。殆どがレベル2か3だった。


「やっぱり多少の問題児は少し高いのかもな」

「何を言ってやがる。ッシュ!」


 シャドウボクシングで煽ってくる。しかし俺はステータスを見て知っている。大した事がないか、こけ脅しと言う事が。


「神野さん……」

「あれくらい問題ない。少し大人しくさせてくるから、ここで待っててくれるか?」

「はい」


 あまり不安にさせる訳にはいかないから、なるべく派手にしないように速攻で決めるか。手心のスキルもあるからあまりダメージは期待できんが。


「ようやく手を離したか。って事は準備が出来たって事か?」

「チンピラ発言の割には律儀なんだな。問答無用でかかってくればいいのに」

「っは。俺がお前に負ける理由がないんだ。そんな下っ端みたいな事ができるか」


 自信だけは立派な事で。周りの奴らも一緒に戦う事はしそうにもない。逃げられないように退路を塞いでいるに過ぎない。


「彼女に手を出さないと思っていいのか?」

「女はお前を倒した戦利品だ。ここでどうこうするつもりはない」

「ここで……って事は是が非でも倒さなきゃな」

「っは!貴様みたいなひよっこに俺が負けるか!」


 お喋りはここまでのようだ。全面的に信用はしていないから、他の奴が真桜に近づかないようには気を配る。


 ―ヒュン


「な?避けただと?」

「そんな右ストレート打ちますよって動作で、避けられないって思っていたのか?」

「ひよっこの割にはなかなかやるみたいだな」


 見た目で判断しているあたりは素人同然。一応軽く威嚇のスキルは使っているんだけど。馬鹿には効かないようだ。周りの奴も誰も怯んだ様子はない。逆に一般の人達が怖がって離れていく。


「っは!っしゅ!っしゅ!」

「お前ボクシングやってないだろう?顔を狙うだけのスポーツじゃないからな?」


 ―ドス


「かはぁ!?」


 顔目がけてブンブン振り回す拳を回避して、ガラ空きな脇腹に1発入れる。


「舐めやがって……」

「やっぱりスキルあると拳が軽いな。数発入れて力の差を見せるしかないか?」

「ぶつぶつ何を言ってやがる!」


 大振りの1発を回避する為に後ろに下がる。俺に言われたからしっかり体を狙ってきた。


「俺も習った訳じゃないけど」

「お前もボクシング?」

「ただ見様見真似の構えだ。習った事はないと言っただろう?同じ土俵で戦ってやるだけだ」

「そんな真似で出来るほど、ボクシングは甘くない!」


 ―ヒュン


「くそ!何故当たらないんだ!」

「そんなバレバレな動きをしているからだろう?」

「くそ。お前……何か格闘技やってるな!」

「何もしてないって。ただの一般人。高校生だよ」

「嘘つけ!一般人がこんな避けられる訳ないだろ!」


 そんな事を言われてもな〜勇者やってましたって言えない訳だし。この世界での俺は帰宅部で習い事もやっていない。そうなればただの一般人と言うしかない。


 ―ドス、ドスドス。


「っく!パンチは軽いのに……」

「分かんないの?わざとだぞ?」

「分かってるわ!!!」


 ―ブン!


 心配して見ていたであろう通行人達も、危なげなく攻撃を回避している俺を見てそのまま過ぎ去る。

 誰かが通報してくれたらって期待もしていたんだけど。ん?周りにいた奴らが通行人に声をかけている?あーなるほど、通報されないように根回しをしてるのか。大方、スマホで撮影しているとかなんだろうな。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「体力ないなー攻撃に無駄が多すぎるし、足運びも雑なんだよ」

「お前……が……おかし……いんだ」

「だから一般人だって」


 もう満足したかな?攻撃は当たらない上に、手加減してますって発言したパンチを受けてる訳で。戦意がなくなってくれるのを待っているんだけど。


「神野さん凄いです!」

「いや、これくらいはな。そんじゃ帰ってもいい?」

「お前ら!」

「「「おう!」」」


 やっぱりダメ?最後は全員で囲む作戦?まぁタイマンで勝てなきゃ数を揃えるよな。


「しかしお前にプライドはないのか?少しは仁義がある奴だと思ってたんだが」

「うるせー……舐められて終わる方がむかつくんだよ!」

「えー少し舐めプし過ぎた?仕方がない……」


 ―ガシ


「そい!」

「ちゃ、うわぁぁぁ!?」


 ヘロヘロな男を掴み、仲間の1人に投げつける。カメラを構えている奴はカモフラージュで残しておく。もう1人は……


「っくそ!」


 真桜に向かって走っていく。悪役ならではの人質か?シナリオ通りならそのまま見ていてもいいんだが……


「それは認めない」

「は?さっきまであそこに!ごふぅ!?」


 吹っ飛ばした仲間の上にもう1人積み重ねる。


「すまん。少し怖かったか?」

「全然!神野さんが助けてくれると思ってましたし。それに私だってただじゃやられませんよ?っしゅ!」


 パンチをして強いところを見せようとする真桜。腰は入ってないし、とても強いとは言えない。レベルだってきっと1だろう……

 気になって真桜を鑑定してみた。


「え?マジか」

「ん?何が?」

「あ、いや。なんでもない。アイツらも満足しただろうし帰ろうか」

「うん」


 真桜を鑑定したらレベル5もあった。あのボクシング野郎よりも高いだと?見間違いかと思ってもう一回見てみる。


「……」

「どうしたの?じっと見て。何かついてる?」

「あ。いや、気のせいだった」

「そう?」


 やっぱりレベル5ある。妹の恩や父さんはレベル1だったのに、レベル5って事は空手で優勝する桐花と一緒?見た目で判断するなんてって言ってたけど。この世界は分からないもんだなぁ。


「なぁ。真桜は何か格闘技とかやってたりするのか?」

「え?さっきのパンチの事かな?あれは真似しただけ。本当は戦うとか武器持ったりもした事ないよ」

「そ、そうだよな」


 武器は持った事ないと言っているが、剣術スキルがEあるのが気になる。それと調理スキルEランク…………料理苦手なんだろうな。

 見てしまえばいろいろな事が分かってしまう。でも鑑定をして知っているだけで、どうしても知ってるのって疑われないようにしないと。突然知らない事を言われたら気味が悪いからな。


「ちなみにだけど。剣とか持ってたりする?」

「剣?あー私専用の武器があったわ」

「え?」

「ピンクで先は丸まったやつで可愛いんだよ?今日のお料理でも使ったんだ。えい!ってね」


 シルエットと料理で使ったってワードで、包丁だと言う事が分かる。だがしかし、一刀両断する動きは包丁で使うはずがない。いや、調理スキルと剣術スキル…………包丁って剣術スキルとれんの?

 異世界では剣が当たり前のようにあったから、そんな条件で取得できるとか知らんかった……普通は調理スキルしか上がらないと思ってた。


「でも私が包丁使うのは、爺やが見ている時だけって言われているの。1人だと危ないって言うんだよ?私だって料理くらい1人で出来ると思うんだ」


 それは爺やさんに従って欲しい。手元ミスって指を一刀両断とか洒落にならない。


「今度また料理した時は、美味しいのを作るからね!」

「あーうん。でも必ず爺やさんと一緒にやるんだぞ?」

「神野さんもそう言うこと言うのー?」

「あれだ……1人でやるより2人の方が楽しいだろう?料理は黙々とやるもんじゃないって事だ」

「確かに!お湯が沸くのじっと待つのも退屈だもんね」

「そうそう。お湯?」


 今日の料理にお湯を沸かす必要のある調理があったか?きっと違う工程を想像しているんだろう……たぶん。


「この辺見た事ある景色だね」


 気がつけばいつもの通学路近くに来ていた。


「帰るまでが遠足だからな。車とかに気をつけるんだぞ」

「大丈夫。神野さんが手を握っててくれるから」


 気が付かなかったけど。自然と手を繋いで歩いていた。


「ふふ。今日は楽しかったね」

「ああ。また一緒に行こうな」

「うん!」


 今日はこのまま真桜を送って解散なるだろう。




 そして家に帰った俺は妹に一つの動画を見せられる。あの公園で絡まれた時の映像だった。


「これ兄貴?」

「さ、さぁ?似てる人なんてたくさんいるだろう?」

「服も全く同じで?まぁ怪我はないみたいだから、別にいいけど」

「心配してくれるのか!」

「違うし。あまり問題起こさないでよねって事!」

「あー気をつける」

「やっぱり兄貴なんだ。格闘技でも始めたので?」

「…………風呂入ってくる!」


 これ以上聞かれないようにその場を退散した。まぁ食事の時に母さんと妹に事情聴取されたんだがな。

爺や「どうでしたか?」

真桜「お弁当は喜んで全部食べてくれたよ」

爺や「彼に異変は?」

真桜「何それ?別に何にもなかったよ」

爺や「それは……胃袋強めな方で良かったですね」

真桜「変な事言うのね。神野さんは少し歯応えがある卵焼きに、ジューシーすぎる唐揚げだったって食べてくれたわ」

爺や「殻に油を切ってなかったか……私が見ていたのに?」

真桜「おにぎりは何が入ってるか予想できないって楽しんでくれたわよ」

爺や「……少し彼が可哀想になります」

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