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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第1章 出会う2人の道
2/52

第2話 逝きたい勇者

始めの何話か5000文字近くなってしまう。そしてどんどん書きたい事が増えていく。

やっぱり新作はテンションが上がります(´∀`=)


読んでくれてありがとうございます(*'ω'*)

 無気力でわがままな勇者は、逝きたい。


 魔王討伐目前で、目的の魔王がまさかの逃亡。

 呆然としていたところに気を利かせた神が、現代へと勇者を送り込む。と言うか、元いた世界に戻されただけである。

 目が覚めると自宅のベットの上。再び冒険を夢見た勇者は転生する為に逝きたい。


 そして物語は異世界から現代へ……




「いやだぁぁぁ!?」


 軋むベットの上で目が覚めた。


「なんだ夢か……」


 夢オチかと安心してもう一眠りしようと布団を頭からかぶる。


 ―ダンダンダン……


 何かが階段を登ってくる音がする。ドタバタやかましいな〜朝くらいゆっくり寝かせて欲しいものだ。


「うるさいよ兄貴!」

「ん?この声は?」


 かぶった布団を強制的に奪われ、閉めていたカーテンが勢いよく開けられたことで日の光が射し込む。


「眩しい……」

「はぁ明日から学校なんだから。今日くら早く起きたら?」

「もう世界は平和なんだから、少しくらいゆっくりしても神様は許してくれる」

「平和って何寝ぼけてるの?どうせ夜遅くまでゲームでもしてたんでしょう」

「ゲームか。懐かしい響きだ…………ん?妹?」

「残念ながら兄貴の妹ね」


 どう言うことだ?俺は異世界で勇者をしていた。妹もこの世界に飛ばされたのか?


「おまえいつこっちの世界に?」

「こっちの世界?よく分からないけど。15年かな」

「そんな前から来ていたと言うのか!?今までいろんな街に行ったが、出会わなかったぞ!?」

「何言ってるのよ。一緒に住んでるんだから、毎日あってるでしょ」


 一緒に住んでいるだと!?


 慌ててベットから起きると、視界に入ってくるのは本棚と机。それに異世界にはなかったテレビ。


「ここは……俺の部屋?」

「お母さーん。兄貴がゲームの世界から帰ってこないよ〜」

「どう言うことだ……」


 最後の記憶は確か教会に出向いて……




 ♢




 役目を終えた俺は、始まりの街に戻って来た。


「色々あったが、ここがスタート地点だったんだな」

「お疲れ様です勇者」

「おう。敵前逃亡だから不完全燃焼だがな」

「こちらも魔王が逃亡するとは考えもしませんでした」


 俺はこの世界で勇者と呼ばれ、色んな人物と出会い成長していった。そして仲間と共に魔王城へと出向いたまでは良かった。


 しかし魔王討伐を目前に、魔王の母親によって討伐対象は逃亡された。不完全燃焼だが、当初の世界を平和にはできた。もうやることがない俺達パーティは、それぞれの国へと報告の為に一度解散した。そして行くところがない俺は、もしかしたら神様はいるんじゃないかと始まりの街へと帰って来た。


「まぁ世界は平和になったんだから。あれこれ出来なかった観光でもして、異世界ライフを満喫しようかな」

「…………勇者」

「なんだ?」

「魔王はまだ討伐されていないんですよ」

「そうだな」

「それでは真の平和とは言えません」

「そうか?魔王不在の魔族達は停戦を申し出たんだし。平和じゃね?」

「それで私は勇者に新たな試練を与えます」

「なんだ?裏ボスでも出てくるのか?」


 どこからか聞こえてくる神の声。そして地面から光が空へと浮き上がる。


「ん?これはなんだ?」


 足元を見ると足元に魔法陣。


「勇者よ!魔王を見つけ出して討伐して下さい!」

「は?ちょっとこれはなんのつもり……!?」


 足が魔法陣から離れない。話がどうも変な方向に進んでいる気がする。これはとてもよくない!剣に手を伸ばそうとした。


 ―ジャラ……ガチン!


 魔法陣から出てきた鎖が俺の手の自由を奪う。


「それでは勇者。貴方の活躍を祈っています」

「待て!これはなんだ!?せつ……」


 眩い光に包まれ、俺の意識はそこで闇へと引きずり込まれた。




 ♢




 そうか。俺は神様に新たな試練を……


「なんで俺の部屋?」

「もういいから。今日はお母さんがハニートースト作ってくれてるって。兄貴が来ないなら私が食べちゃうから」


 ―グゥ


 腹が減っては戦は出来ない。それにこれは夢かもしれない。それなら母さんのハニートーストを味わえるチャンスを逃す手はない!


「ふははは!ハニートーストは俺の物だ!」

「あ。ちょっと私のはあげないんだから!」

「早い者勝ちだ!」


 妹と階段を駆け降りて、慣れ親しんだ廊下を走りリビングに飛び込む。


「朝からあんたらは仲が良いわね。ほら、二人の分はちゃんとあるから座って食べなさい」


 目の前には机にハニートースト並べてくれる母さん。懐かしい人物に俺は固まってしまった。


「何よ。ジロジロ見て」

「あ、いや」

「私の分はあげないわよ?皆に一つずつ、喧嘩しないように平等よ!」

「はは。その言葉……母さんだ」

「ゲームの世界から戻って来てないのは本当みたいね」

「遅いと兄貴の分も食べちゃうからね〜」


 あれ。なんだろう。この何ともない会話が懐かしく……


「ちょっと何泣いてるのよ!?あんたの分はあるから!」

「兄貴のは食べないから!って食べられそうだからって泣くこと!?」

「あーすまん。ちょっと別のことを考えてて」


 席に着くと皿の上にはハニートースト。その横には追いシロップと蜂蜜が置いてある。


 それをそれぞれ手に取り、ビシャビシャにするくらいかける。


「相変わらず体に悪そうな食べ方よね」

「あ、私も使うんだから全部かけないでよね!」


 甘い香りが鼻腔をくすぐる。そして蜜が滴るハニートーストを頬ばる。


「美味い。甘い。最高だ」

「いつもそうだけど。あんたは大袈裟よね」

「ん〜朝から最高!」

「二人ともこれ食べたらちゃんと歯磨きすんのよ」


 そしてぺろっと平らげた俺は、母さんの言うことを聞いて歯磨きをして自室に戻る。


「美味い……美味かった……夢とは思えない程に」


 改めて部屋を見渡すと間違いなく俺の部屋。窓から見える景色も間違いなく現代。


「魔王を探し出して倒せって言ってたが。もしかして魔王はこの世界に?もしかして異世界に居たこと自体が夢?」


 自分の手を見る。


 どっちが夢か分からないから。とりあえず自分の頬を軽く叩いてみる。


 ―バチーン!


 痛い。


 この世界は夢ではない。


「ゲームの世界か……」


 足元には出しっぱなしのゲーム機のハード。傍らに転がるソフトは確かオンラインゲーム。


「このゲームどんな内容だったっけ?」


 裏の説明書きを見る。

 平和な世界に突如現れた地球外生命体。この危機に立ち上がった戦士達は、古代兵器乗り込む。


「思いっきりロボゲーじゃん。ファンタジー関係ないし」


 俺が居た世界は剣と魔法のファンタジー。古代兵器は敵で出て来たけど。ロボに乗るようなことはしていない。


「……ステータスオープン」


 手を眺めながら呟いてみたが、手にはなんの変化もない。やっぱり神様も魔王も夢…………


 正面を向くと視界に入るステータス画面。


「うわぁ〜……出ちゃったよ」


 名前の欄の横には確かに勇者と書いてある。そしてレベルもステータスも最後に見たものそのまま。スキルなんかも書いてあるけど、何個か光が消えたみたいに黒く表示されている。


「転移魔法と魔法創造が消えてるな」


 これはきっと自力で元の異世界に行けないようにしたんだろうな……冒険している時は放置気味だったのに、こう言うところは徹底してやがる。


「後は……え?マジか。魔法が禁じられてない?」


 これはミスか?いやいや、あの神様に限って見落としたなんてことはないはず。するとこれはわざと?


「ふっふっふ。大きな魔法は家が危ないからな。初歩の初歩で……《ファイヤーボール》!」


 …………シーン。


 なんて音が聞こえてきそうなくらいの静寂。広げた手のひらが虚しく感じる。


「そ、そうだよな!家で使っちゃ危ないもんな!きっと気持ちのどこかでセーブしたのかも知れないな!あはは!」


 はぁ〜手の上に浮かび上がらせるイメージが危ない?魔法のコントロールにおいて、初歩魔法で躓くはずがない。


「《サンダーボール》!《ウォーターボール》!《エアーボール》!」


 …………シーン。


 使えないのかよ!なんでだ!現実世界だから?

 あ。もしかして現代にマナが存在してないとか!?それとも何か条件があるって言うのか?


「使えないから。わざわざ禁止にしなかった可能性があるな」


 いや!今はその時じゃないのかも知れん!きっと何か他にあるはずなんだ。そうじゃなきゃ転移魔法と魔法創造を禁じた理由がない。


「いいだろう。魔法がなくとも俺にはこの身体がある。資本は身体!鏡はこの部屋にはないか……洗面所か」


 そして鏡の前に立った俺は服を脱いだ。


「これは……何と言うか。完成された美?高2の身体じゃないな」


 引き締まった腹は見事なシックスパック。細すぎずしなやかな筋肉を備えた俺の腕。振り向いて背中を見てみるが、般若が笑うって程ではないが。


 ―ガラガラ


「あ」

「え?え?え?」


 扉を開けて妹が入ってきた。


「き……」

「き?まさかキモイか!?キモイのか妹よ!」

「きゃぁぁぁ!!??」


 ―バタン!!!


 叫ばれて扉を閉められた。


「な、何脱いでるのよ!?」

「上半身だけだぞ?下は履いている」

「そう言うもんじゃないわよ!」

「昔は一緒にお風呂入った仲じゃないか」

「そんなの子供の頃でしょ!いいから服を着なさい!」

「ちぇ〜」


 渋々服を着る。とりあえず魔法の代わりの身体に問題はない。多分……


「兄貴ってゲームばかりしてるから、もっとこう……ダルダルだと思ってた」


 この反応はどっちだ?良いのか?悪いのか?ええい!聞いてみるしかない!」


「なぁ俺キモイか?」

「そんなことはないんじゃないかな……毛まみれでダルダルな体よりは」


 比べる基準が酷く底辺な気がする。


「そうか……キモくはないが変なんだな」

「変でも……ない。その……普通にいい。と思うよ」

「んな!?」


 俺に冷たい妹がデレた!?ついに来たのかデレ期!


「本当か!俺は普通なんだな!」

「ちょっと兄貴!?そんな肩揺すらないでよ!」

「おっとすまん。嬉しくてな。よぉーし!そうか〜普通か」

「普通よりはカッコいいけど……」

「ん?何か言ったか?」

「なんでもない!」


 そのまま妹はリビングに戻ってしまった。やりすぎ感があったが、妹が普通と言うのなら問題なかろう。


 俺も部屋に居てもすることがないから、リビングに入りテレビを見ている妹の横に座る。


「な、なんで私の横に……」

「ん?テレビ見るなら正面の方が見やすいだろう」

「でも私が座ってたんだけど」

「ソファは広いんだし。二人で座っても大丈夫だろう」

「もう……勝手にすれば」


 妹が見ていたのは朝の情報番組。

 俺が異世界に飛ばされた日から、1日も経過していないみたいだな。

 情報と言えば、妹はステータスとかあるのか?


「(鑑定)」


 こっそり妹を鑑定してみた。出来るか分からなかったけど、結果は見ることが出来た。

 名前の横には人間と書いてある。レベルは1か。そりゃそうか。ここでは戦う敵もいないから経験値がない。


「何よ。じっと見て」


 やば。ずっと見てるのは不自然だよな。ステータス見てましたとか言えないし。


「この番組面白いのかなと思ってな」

「朝なんて情報番組くらいしかないでしょ。別に楽しむ目的で見てないし。世の中何かないかなって見てるだけ」

「暇だと」

「明日から学校だし。遊ぶ予定もないし」

「そうか。暇か」


 そう言う俺も暇だ。確認したいことは色々ある気がするけど。何から手をつけていいか分からん。今はとにかく情報が欲しい。


『……甘くてとろけます〜今日で最後なのが寂しいですね!』


 テレビで流れていたのは、どこかの出店でアナウンサーが甘いものを食べているところだった。今日で最後と言うのは、どうやら春休み限定の出店らしい。


「妹よ。これはどこでやっているって言ってた?」

「え?近くのモール特集だから。そこら辺じゃない?」

「よし。出かけるぞついて来い!」

「なんで私が兄貴と行かなきゃいけないのよ」

「ばっか。男が1人で甘いものを食べてたら変だろう!」

「そこの自覚はあったんだ」


 どんな自覚だ。俺は1人で甘いものを食べに行ったこと……あるかも知れん。


「母さん!昼はいらないから」

「はいよ。気をつけていきな」

「任せろ。妹の命は俺が守る」

「モールに行くのに命懸け!?」

「よし行くぞ!」

「ちょっとせめて着替えはしなさいよ。パジャマで行くつもり?」

「そうか。では準備する時間は待とう」

「兄貴も着替えてよね。そのジャージで外とか一緒に歩きたくないし」


 パジャマがわりに着ていたジャージではダメか。これは動きやすいからいいんだが。しかしいく気になった妹の頼みだ仕方がない。


「おめかししていくぜ!」

「普通でいいから」


 そんな会話をしながら俺達は準備をして目的地へ向かうのである。


勇者「解せぬ……」

妹「何がよ」

勇者「主人公は俺ではないのか?」

妹「兄貴は主人公って器じゃないでしょう」

勇者「器って……確かに平凡な少年だが」

妹「……名前すら言ってないんだから。しょうがないんじゃない」

勇者「しまった!語りで名前を!?今から!」

妹「あーもう時間。次回に回しなさい」

勇者「あー!おr……」

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