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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第1章 出会う2人の道
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第18話 甘い時間を過ごす勇者

ニュースで人が潰されるのを見た。怖いな〜って思っているけど。今電車がそんな感じだと気がつく\( ̄^ ̄( ̄^ ̄)ノ

踏ん張ると腰が痛い……


読んでくれた皆様!

ブックマーク、評価、いいね。くれた方々も。

ありがとうございます(*'ω'*)

 今日は休日だが、真桜を誘って公園に行く。てるてる坊主が功をなしたからか、外の天気は雨予報が嘘のように晴れている。


「空が割れている……き、気のせいだろう」


 都合の悪い事は見ないようにした。少し出発するのには早い気がするが、家でこうして待っていても落ち着かない。


「もう出るか。このでかいてるてる坊主はしまっておこう。材料がこの世界にないものだからな」


 改めて見ると可愛い顔をしている。恩が書き足してくれた顔って言うのもあるが、割と作るのに苦労したからな。あ、どこかでハサミ買わないと。


 俺のてるてる坊主をしまい。恩のてるてる坊主は机に飾っておく。


「次もまた頼むな」


 忘れ物はないかもう一度確認して、俺は待ち合わせ場所であry真桜のアパートに向かう。




 道中何事もなく無事に目的地まで着いた。ちょっと早いから少しくらい何かあっても問題なかったが、こう言う時に限って何もないものである。


「あら?待ち合わせはまだ先だったと聞いてたけど?」

「あー何と言いますか、時間前に行動する癖がありまして」

「ふーん。楽しみすぎて家でじっとしてられないのかと思ったわ」


 このおばちゃんはまた確信を突いてくるな。俺は特に何も答えないでただ待つ事にしよう。


「真桜ちゃーん!彼氏が来たよ」

「おばちゃん。だからそんな仲ではないと……」

「はいはい。もう来るはずだからここで少し待っててね」


 俺の否定もおばちゃんはさらっと流される。


 ―ガチャ


 扉を少し開けて覗いてきた。何だあの可愛い生物は……


「照れてんじゃないよ。シャキッとしな!」

「おばちゃんが突然あんな事を言うからですよ」

「へへ。おはよう神野さん」

「おう。おは……」


 可愛いだけじゃない。ピンクのワンピースで甘さを出して、少し夕方の気温の変化に対応できる白のジャケットで少し辛みを出している!?公園に行くから靴は歩きやすいもの。

 まさにこの前見たファッション誌に書いてあるような感じ。今年のトレンドはグリーンやブルーにオレンジとか書いてあった気がするが。真桜にはピンクがよく似合う。自分に合った色を着こなすスキルが高い!あ、黙っていたらダメだ。ファッション誌でも褒めるところは褒めろと書いてあった。


「あーすまん。可愛くて見惚れてしまった」

「!!!」

「はっはっは!中々の殺し文句だ!女をすぐ褒められるのは、偉いじゃないか」

「おばちゃん。そんな叩かれても……」


 そんなこんなで話していると、爺やさんと言われてた人が俺の前に現れた。


 ちゃんと挨拶は出来たと思うけど、握手の際の力が半端なかった。人としての限界を超えているんじゃなかろうか?まぁ娘のためを思って力が入ってしまっただけかも知れない。


「神野君。君にこれを託そう」


 少し大きめなバスケットを手渡される。こんな大きさで中に何が入っているんだろう。


「真桜に持たせるなよ。せっかくの苦労がダメになっては可哀想だ。いいか?決してメチャクチャに揺らしたりするんじゃないぞ?」

「はい。分かりました」

「力比べはそれくらいにしときな。真桜ちゃんが待ってるじゃない」

「ふむ。仕方がありませんね」

「それじゃ行こうか真桜」

「……真桜ぉ?」


 ―ゴスッ


「行こうか真桜……さん」

「爺やは気にしないで。いつも通りでいいから!」

「う、うむ」

「いってきます!」

「いってらっしゃい」


 真桜もなかなかにいい拳を持っていそうだ。脇腹を抑えながらもしっかり見送ってくれる。真桜を心配しているだけで、基本的には良い人なんだと改めて思った。


 その後は少しだけ大変だった。駅の人の波に攫われそうになったり、変な男に声をかけられたり。さりげなく手を繋いでいるけど、離したらまた何かトラブルに巻き込まれるのでは?って感じる。

 そしてボートに乗っている時に手を繋ぐ訳にはいかない。結果的にトラブルはやってきてしまった。フラグを立てたのは俺自身か?


 何とか真桜をボートに乗せて、湖の真ん中でぷかぷか浮いていると人の声が増えてきた。


「見つけたぞ!」

「え?」


 ―バシャバシャバシャ……


 アヒルボートが俺達のボートに近づいてくる。あれは入口で追い払った虫……じゃなくて男。


「さっきはよくもやってくれたな!」

「台詞が悪役そのものだな」

「うるせー!さっきのようにはいかないぜ。なんせこっちのボートはアヒルだ」


 カッコつけて言う台詞ではない事は確かである。しかし相手はそんなの関係なしでこっちのボートに突っ込んでくる。


「真桜。ボートにしっかり掴まっててな。あと絶対に身を乗り出さないように」

「え?うん?うひゃ!?」


 ―シャン……


 ボートを一漕ぎして、アヒルから距離をとる。


「おい!話されてるぞ!もっとしっかり漕げよ!」

「兄貴も漕いでくださいよ〜」

「仕方がない……」


 俺らに追いつこうと必死に漕いでいる。それなりの男が2人で足漕ぎされれば、追いつく事も難しくはない。俺1人であればもっとスピード出して逃げられるんだけど。真桜を乗せている以上無理をさせる訳には……


「あは。速い速い〜」


 ボートにしっかり掴まっている真桜は、怖がるどころか楽しそうにしている。それなりにスピードは出てるはずだが。


「怖くないのか?」

「何で?神野さんが漕いでいるんです。心配な事は何一つないです!むしろ楽しいです!」

「真桜は絶叫系が得意な人か」

「ん?よく分かりませんけど。おばちゃんの車の運転に比べれば快適です」


 おばちゃんの運転に比べられているが、このボート以上にハードな内容なのか?


「神野さん来ます!」

「っく。回避!」

「くそ!」


 こっちはローボートだから、ぶつかられればひっくり返る可能性だってある。そうなればこの湖に投げ出される。真桜は泳げないとか言ってたし、それだけは絶対回避だ。それにボートの真ん中にあるバスケットは、爺やさんに慎重に扱えと言われている。湖に落としたと言ったら……


「くそ。あのアヒル叩き斬りたい……」

「え?どうかしましたかー?」

「何でもない!少しスピード上げるぞ。舌噛まないように!」

「ん!」


 動作がいちいち可愛いな。


「待てコラ!」


 外野が煩い。正直これは景色どころではない。


「頑張って神野さん」

「おう!」

「いいな……美女の声援」

「いいから漕げよ!」


 真っ直ぐこっちに近づいてくる。これだけスペースが確保できれば……こっから回頭!


「っば!?通り過ぎてんじゃないか!」

「アヒルボートで小回り勝てないっすよ」


 完全にアヒルボートの後ろをとった俺。このまま逃げ切ってボート乗り場に行く手もあるが……


「やられっぱなしは気に入らないからな」


 振り向いてオールを構える。そして船尾にあるスクリュー目掛けて投げる。


 ―バキィ!ガキン!


「兄貴!ペダルが回らないっす」

「なんだと!何が起こった!?」


 これでアイツらは動けないだろう。後はゆっくり帰っても問題ないだろう。


「あれ投げちゃってよかったの?」

「近づかれた時に巻き込まれたと言えばいいだろう」

「そうじゃなくて。このボートどうやって漕ぐの?」

「…………」


 結果的に2本あったオールを一つ失った俺達。真桜に突っ込まれて気がついた。これは俺らも詰んだ?


「いや。俺なら出来る!」

「ふふ。頑張れ」


 真桜は張り切る俺を見て微笑んでくれる。これ以上の失態をしないようここは無理にでも進む以外選択肢はないな。


「右、左、右、左……」

「頑張れ頑張れ」


 可愛い声援のおかげで俺はボートを片手で漕ぐ技術を手に入れた。


「ん?オール流しちまったか?たまにいるんだが、よく一本でここまで来たな」

「途中にアヒルボートに襲われて……オール取られちゃったんです」

「なんだと!?誰だそんな危ない事をする奴は」

「あっちで止まってる男2人です」

「あーなんか強面の男が乗っておったあれか。マナーを知らん奴はワシが懲らしめておくぞ」

「ありがとうおじさん」

「せっかくのデートなのに災難だったな。これに懲りずにまた来てくれると嬉しい」

「うん!また2人で来る!」

「ははは。ありがとうお嬢さん」


 おじさんは俺達に手を振り、小屋の中に入っていった。すると入口の方から警備員が数名走ってきた。


「……あれは怒られるやつかな」

「自業自得だよ」

「真桜ちょっと怒ってる?」

「それは怒るよ。だってせっかくのデートだよ?私すっごく楽しみにしてたんだから。あんな邪魔されたら怒るよ」

「お、おう」


 少し怒っている真桜は少しだけ目が険しい。そんな一つ一つの動作が学校では見ない姿で、俺はその度驚いたりしている訳で。


「おじさんも言ってたが、またいつか来ような」

「本当?絶対だよ!」


 怒った顔がパッと明るい笑顔に変わる。ころころ表情が変わる真桜はずっと見ていても飽きなさそう。

 あーここで抱きしめたりしたい。いやいや、何を考えているんだ俺は。


「どうしたの?」

「何でもないぞ。さて次は大きい木がある広場に行ってみようか」

「はーい」


 真桜は桜を見上げながらゆっくり歩く。俺もその歩幅に合わせて隣を歩く。たまに吹く風に桜の花びらが降ってくる。


「見て下さい。桜の中にいるみたいです」


 俺は咄嗟にスマホのカメラで写真を撮る。奇跡的に周りに誰もいない。真桜が桜の中を泳いでいるかのような写真が撮れた。


「ん?何それ?」

「あ。すまん。写真は嫌だったか?」

「写真?」


 隣にきた真桜は俺の横からスマホを覗き込む。


「わぁ〜私が桜の中を泳いでるみたい」

「だろ?なんか撮りたくなって……」


 スマホを見ようと、俺にくっついているのに気づかない真桜。すごくいい匂いが……って俺は変態か!?


「これすごいね。こんな小さな機械でそんな事出来るんだ」

「そう言えば真桜はスマホ持ってないのか?」

「これスマホって言うの?私は持ってないな〜」

「そうなんだ。まぁない人もいるって聞いた事はあるな」


 このご時世でスマホを持たないとかあるんだ。あの爺やさんの性格からして、位置情報が分かるアプリとか入れたスマホを持たせそうなもんだけど。


「これ私しかいないけど。神野さんは入れないの?」

「誰かに撮ってもらえれば……誰もいないな。後は自撮りか?」

「うわぁ!私達が映った」


 カメラを反転させ自分の顔が映ると真桜はまた驚いた。本当にスマホの事分かんないんだな。


「これどうやって撮るの?」

「ここの丸いボタンのとこ押すだけだ」

「こう?」


 ―カシャ


「あ。目つぶちゃったかも!もう一回!」

「お、おう」


 写真を撮るのに夢中でもう肌がくっつくくらい近い。真桜は気にしている様子は全くない。俺だけずっとドキドキしたまま。


「撮れた?写真は見れたりするの」

「こ、これを押せば……ほら」


 閲覧できるようにして、真桜にスマホを渡す。


「本当に写ってる。すごーい」


 写真の見方と撮り方を教えると、初めて与えられたおもちゃを喜ぶ子供のようだ。桜を撮ったり俺を撮ったりといろんなものを撮りまくる。


「はぁ〜近くにいるといい匂いが……日和ってスマホ渡さなければもっと近くに……」

「神野さーん!」


 手を振って俺を呼ぶ真桜。この公園デートは俺も楽しみにしていたし、実際はマジで楽しいと思う。しかし我慢をしなきゃいけないって、少し辛い時間もあるのも事実。


「可愛いって罪って誰かが言ってたよな……」

「おーい!神野さーん!」


 動かない俺を見て手を大きく振り、軽くぴょんぴょん跳んでいる。あれは本当に高校生か?俺と同じ年には見えない。見た目は可愛くて、何もしてない時は絵になるくらい綺麗。それでいてはしゃぐ姿は幼さが残る。


「俺はこの時間を耐え抜く事は出来るだろうか」

「あ。これ!てるてる坊主ですか?」


 写真は俺が作ったてるてる坊主。


「神野さんもちゃんと作ってくれてて嬉しいです!」

「あぁ。晴れて良かったな」

「はい」


 2人で見る空は青くどこまでも広がっている。


真桜「スマホって言うんだこれ。写真って技術もすごいよね」

祝「技術?まぁ昔のガラケーから比べればすごいかもな。でも俺は最近の機種じゃないから、もっと凄いのはあるみたいだぞ」

真桜「へぇ〜そうなんだ。新しいのはそんなに凄いのかな?」

祝「今度爺やさんと見に行ってみたら?」

真桜「神野さんは一緒じゃないんですか?」

祝「行くのは構わないが、契約事は俺じゃダメだからな」

真桜「契約?」

祝「そう。契約。月々お金がかかるものだからな」

真桜「お金がかかる……いくらくらい?」

祝「機種代含めて安くしても5,000くらいはいくんじゃないかな」

真桜「板チョコが110円として45個分も……」

祝「ちゃんと税込で計算するのな」


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