第14話 心に誓う勇者
あれこれ色々書いてきましたが、今回みたいな描写は憧れます。学生に戻りたい(゜∀゜)
ブックマーク、読んでくれた皆様!
ありがとうございます(*'ω'*)
俺はいつもの日課でコンビニのスイーツをチェックしたり、お店で新作がないかスマホでもやっている。しかし最近はお店に行く頻度は確実に減っている。
「神野さん。今日はどこかに寄りますか?」
「寄りたいところなんだけど。毎回寄り道してると、お財布に優しくないからな」
「学生ですからね」
なんだかんだでいつも一緒に帰るようになった真桜。一緒に回ってくれる異性がいるだけで、俺のスイーツ探索は順調そのもの。気になるスイーツも真桜がいれば買う事ができた。
しかしそれが原因か、俺の財布の中身が急激に減っている。
「そう言えば真桜は部活入らなかったのか?」
「悩んだんですけど。勉強も追いつくのがやっとで。部活をしていると、疲れて寝ちゃいそうで」
「あー分かる。俺も体育ある日はぐっすりだよ」
そう言えば最近、夜の街に出てないな。魔王探さないといけないけど、糸口も何もないから妙にやる気が出ない。学校もあるし甘い物巡りも順調だから、このままこの世界で生活しても良いかなとすら思う。
ふと横にいる真桜を見る。そう言えば真桜と帰るようになってからだよな。
「ん?」
見てるのがバレた。一つ一つの動作がいちいち可愛い。って俺は何を考えているんだ。
「何かついてます?おかしなところありますか?」
「いや。何もついてないし、おかしいなんて事はないぞ」
「そうですか?それなら良いです」
そう言うと真桜は俺の前に出て止まる。
「神野さん。この後何か用事はありますか?」
「いや。何もないけど」
「それでしたら、もう少し歩きませんか?」
気がつけば真桜の家の前に到着している。
「もう着いたのか」
「ね。真っ直ぐ帰るとこんなに早かったんですね」
「おや?真桜ちゃんおかえり」
「おばちゃんただいま!ちょっと爺やに言ってきますね。ここで待ってて下さい」
「おう」
真桜は少し早足で階段を登っていく。そして残された俺。
「真桜ちゃんは可愛いでしょう?」
「え?あ、はい。そう思います」
「歯切れが悪いねぇ。若いんだから己の見たままを言えば良いんだよ」
「見たままですか」
「そうさ」
このおばちゃんは誰だろう。箒を持っているから、このアパートの住人だろうか。真桜とも仲が良さそうだから、悪い人ではないんだろう。
「それでお前さんは真桜ちゃんのなんなんだい?」
「あ、初めまして。真桜さんのクラスメイトの神野祝と申します。いつも真桜さんにはお世話になってます」
「祝君だね。礼儀正しい子は好きだよ。覚えておくわ」
「はい。よろしくお願いします?」
なんでか挨拶しておいた方がいいと思って、挨拶したけどこの人は真桜のなんだろう?
「私が誰かって?」
「あ、はい。気になりますけど。なんで分かったんですか?」
「顔に書いてあるよ。この人は真桜ちゃんの何だろうってね」
自分の顔を隠す。俺はそんなに分かりやすい顔をしていたのか。ちょっと、てかかなり恥ずかしい。
「はっはっは。別に隠す事でもないよ。私はこのアパートの大家さ。行くとこない2人を拾っただけのおばちゃんさ」
「拾ったって。だけとかのレベルじゃないですよね?」
「そうかい?困っている人を見たら、助けるのは当たり前じゃないかい?」
「それはそう思います」
―カンカンカン……
「お待たせしました!」
「デートかい?あまり遅くなるんじゃないよ」
「デート?デートって何ですか?」
「そこの色男に聞いてみな」
「俺に振らないでくれ……」
「はっはっは。いってきな!」
「いってきます!」
真桜が歩き出したので、俺もそれに着いていく。
「…………」
ふとアパートの方から視線を感じた。
「…………」
真桜のお父さん?にしては若く見えるな。そう言えばさっき爺やに聞いてくるって言ってたっけ。
俺は深々とお辞儀をしておく。
「神野さん?って爺や!何出てきてるのよ」
「真桜……」
「ほら。行こう!」
真桜に背中を押されて俺達はアパートを後にする。
「い、いいのか?俺、挨拶とかした方がいいんじゃないか?」
「いいの!爺やは心配性なだけだから」
「真桜が言うならいいけど」
「いいの。近くに公園あるからそこに行こう!」
振り向くとおばちゃんが手を振っている。そして俺は見えてる事に気づくと、親指をグッと立てる。どう言う意味よそれ……
そして俺達は公園に来た。正直言って自然があるだけの散歩道。2人でただゆっくり歩くだけ。
「ん〜ここだけ空気が良い気がするね」
「まぁ東京ぽくないよな」
「なんか懐かしい感じがする」
「そう言えば真桜はここに来る前はどんなとこにいたんだ?」
「え?ん〜なんて言うのかな……自然はあるにはあるけど、砂が多いとこ?」
「砂?海沿いとか?」
「川はあったけど。海はなかったかな」
自然があるにはあって、砂が多い川がある場所ってどこだ?
「神野さんは、ここじゃない場所に行った事ありますか?」
「ここじゃない場所?」
ここじゃない場所ってどう言う意味だろう。異世界とか言えないし。きっと田舎がどこかって話だろうか。たまに真桜の言う事はよく分からない時がある。まぁ出会って間もないから、俺が真桜の事を知らないだけか?
「ここじゃない場所……」
「私はこの街結構好きなんだけど。神野さんは?」
「え?まぁなんだかんだ言って落ち着くよ」
「このままずっとここにいたいなぁ」
なんだろう。微妙に話が噛み合ってない気がしなくもない。
「真桜は自然が好きなのか?」
「そうかも。なんかここだけ別の世界って感じがする」
「別の世界か……」
真桜にはどう世界が映っているのか。俺には見えていない景色が見えているのか。
「今度、もっとでかい公園行ってみるか?」
「え?そんなとこあるの?」
「あぁ。電車に乗るけどそんな遠くないし。そこはでっかい木があったり、湖なんかもあるぞ」
「本当?行ってみたいなぁ」
「今度の休みに行くか?」
「うん!絶対だよ!」
「俺は嘘は言わん」
「知ってます」
公園に誘っただけなのに、あんな嬉しそうにされるとは。誘われて浮かれているのか、くるくる回る真桜。
「目が回るぞっ!?」
「大丈夫です〜」
スカートが捲れてるから!はしゃぐのはスカートじゃない時にしてくれ!俺は視線を違う方に向ける。でもバレなきゃちょっとくらい……
「あわわ」
「真桜!?」
自分の足に躓いたか、目が回ったからか真桜が転ぶ。たまたま視界に映っていたから、転ぶ前に抱える事に成功した。俺はあくまで真桜が転ばないようにみていただけでって誰に言い訳してんだよ……
「まったく。危ないだろう」
「へへ。ごめんなさい。でも神野さんなら掴まえてくれるかなって思ってました。ちらちら気にしてくれてましたよね?」
「え!?」
見ている事がバレた?俺はどうすれば!いやいや、ここは素直に謝ろう。
「ごめんなさい」
「何がですか?助けてくれただけで、謝られるような事はありませんけど?」
バレてない?てか、真桜はどんだけ男を信用しているんだよ。これは爺やさんに心配されても仕方がない。俺も真桜が男といるところを想像すると……なんか嫌だな。
「神野さん。ここ何があったか知ってますか?」
「ここは……」
いつのまにか封鎖されていた広場に来てしまっていた。
何があったか知ってるかと言われて、当事者ですとは言えない訳で。確か恩が携帯のニュースになってたって言ってたっけ。
「ニュースでやってた場所だよな」
「隕石が落ちたって話ですけど。でも爺やは違うって言っているんです」
「ち、違う?」
「はい。黒騎士の話は学校で知ってますよね?」
「あぁ……藤宮の妹が見たって話のやつか」
まずいぞ。やっぱりこれだけ派手にぶっ壊したらバレるよな。もしかして真桜は俺の正体を?
「テレビのインタビューで、誰かが空に浮かぶ黒い人影を見たと言ってました。神野さんは勇者っていると思いますか?」
これは何と答えれば正解だ?俺がそうだと言ってはいけない気がする。言ったら何かが終わってしまうような。
ここは全力で誤魔化そう。
「ゲームや小説には出てくるよな。それがどうしたんだ?」
「勇者っていると思うんです。そして藤宮さんの言っていた黒騎士がその人だと」
「……」
「魔王を探しているとも言ってました。それってここが戦場になるって事ですか?」
そうか。真桜はこの自然がなくなるのが悲しいのか!そうなら不安そうな顔も納得できる。
「大丈夫だ。勇者が仮にいたとしても、この自然を街を壊す事はしないはずだ。でも魔王が暴れたりしたら分からんが……」
「魔王もきっとしないと思います。だってもし魔王がいて暴れるような人であれば、この街はきっともうなくなっていると思うんです」
「確かにな。でも魔王はこの街にいないかもしれないぞ?」
「そう……だと。良いですね」
なんか歯切れが悪い。まぁ俺がぶっ壊した公園を見て、それが勇者の仕業だと考えれば不安になるよな。
「もしも……ここが戦場になるなら。俺が真桜を守るよ」
「え?…………それはダメです」
「どうしてだ?」
「それって勇者とか魔王と神野さんが戦うって事ですよね?私は神野さんに傷ついて欲しくないんです」
「俺は鍛えてるから大丈夫だ」
「それでも危ないです」
「そしたら逃げる。真桜を抱えて走ってみせるよ」
「ふふ。遅刻しそうな時を思い出します」
やっと笑った。やっぱり不安そうな顔は真桜には似合わない。この笑顔を守るためにここを戦場にさせる訳にはいかないな。俺が勇者だと言う事はしないけど、もしも魔王を見つけてもここで戦う事はやめよう。
「真桜。ここは危ないから違うとこを歩こうか」
真桜が不安にならないよう。俺は手を差し出す。
「……そう。ですね。もう少しこの時間が続けばいいな」
そう言って俺の手をそっと掴む真桜。触れた手は細くて、力を込めたら壊れてしまいそうだ。俺はその手を優しく、そして出来る限りの力で握る。
すると真桜も俺の手を離さないように、力を込めてくるのが分かる。
「なんか。くすぐったい気がします」
「ごめん!嫌だったか!?」
「そんな事ありません。小さい頃はよくお父さんに手を繋いでもらいました。どれほど安心したか」
お父さん……まぁ今は心配そうな顔がなくなったから、お父さんでも構わないか。
「あ。神野さんはお父さんじゃないですからね」
「お、おう」
手を握り隣を歩く真桜は少しだけ頬が赤い気がする。
俺はどうだろうか。それを確認する術はない。けど少しだけ顔が熱い気がしなくもない。真桜に見られないように少しだけ前に出る。引っ張って真桜が転ばない速度で歩く。
俺達はしばらく目的もなく、ただ手を繋ぎ公園を歩く。2人の間に会話はなかったけど。
俺はとても嬉しかったのは覚えている……。
爺や「なんか。よくない感じがします」
おばちゃん「あんたも心配性だね。祝君は大丈夫だよ」
爺や「ですが、彼も男性ですし。真桜さんを守るには少し細すぎませんか?」
おばちゃん「筋肉ムキムキの男が好みかい?真桜ちゃんと歩くには絵がねぇ〜」
爺や「……想像してしまいました。それは無しです」
おばちゃん「保護者なら黙って見守りな」
爺や「ですが……」
おばちゃん「やれやれ。散歩に出てからずっとこの辺うろうろしてると邪魔だよ。外にいたいならこれを貸してあげるから」
爺や「これは?」
おばちゃん「箒だよ。その辺の道を綺麗に掃除するものよ」
爺や「気も紛れると言うもの……やりましょう!」
おばちゃん「助かるよ。それじゃ私は韓国ドラマでも見てくるかな」