第10話 色々やらかした勇者
久しぶりに映画館で映画を見た!めっちゃ良かった!
ネタバレかけないけど。あんな作品書けるようになりたいな。とても良い刺激になりました。
ブックマーク、読んでくれた皆様!
ありがとうございます(*'ω'*)
どうもこんばんは。勇者です。
昨日は《空間収納》が出来る事が判明。漆黒シリーズを装備して、今日こそ魔法の確認をする為に広い公園へとやって来ました。
「何故に、君がいる?」
「僕は黒騎士様の部下だからね!」
「いや、部下にしたつもりは……」
「じゃ配下です」
「どっちも意味は一緒では?」
どうしよう。仲間が増えたって考えてはいたが、本当にまた会うなんて思ってもいなかった。原因は俺がベラベラ喋ったせいなんだけど。あ、そうだ。
「俺の事を他の者に話したりしたか?」
「お兄ちゃんとクラスの仲がいい子に話しました!でも誰も信じてくれなくて、仲間にはなってくれそうにもないです」
だろうな。自分で言うのもアレだが、黒いフルメイルなんて変出者以外何者でもない。それに魔王を探すているって、どう考えても頭がおかしい人である。あれ?俺やばい人じゃん。
「あまり他言無用で頼む」
「あ!言っちゃダメでしたか?」
「俺も前回に言わなかったのが悪い。しかし魔王を探している事がバレてしまうと、魔王は逃げるか隠れてしまうからな」
「確かに!そこまで考えに至りませんでした。次からは秘密裏に動きます……なんか秘密結社って感じがしてきた!」
大丈夫かな〜?この子中々に頭のネジがおかしいけど。
「それで黒騎士様!今日も魔王を探すために歩きますか?」
「ん?いや、今日はこの世界に来て間もないから、どこまで戦えるか確認したくてな。魔法も未だ発動の意図が掴めていない」
「魔法!?」
あ。つい本当の事を話してしまった。隣を見ると目をキラキラさせて、興味深々です!って顔をしている。なんかこの子と話すと、向こうの世界の人と話している感覚になる。
「これも他言無用でな」
「はい!」
「とは言え、マナがこの世界では少ないと聞いているからな……」
「マナ!?」
「魔法を使う上での精霊の残照とでも言うか。とにかく魔法を使うための燃料みたいなもんだ」
「この世界にも存在するんですね!?」
どうだろう。別にマナが見える訳でもないし、神様が少ないと言っているからあるんだろうなとしか言えん。
「さてと。魔法を使うにはどうしたものか。ただ詠唱するだけでは出来なかったし」
「黒騎士様は魔法を使う時は素手なんですか?杖とか剣は使わないんですか?」
「言われてみれば、戦う際は剣や杖を使うな。何かあったか……《空間収納》」
「!?」
―ブーン
目の前に黒い四角い箱に手を当てて、何かちょうどいい物がないか探す。
「あの〜黒騎士様?」
「ん?なんだ?」
「その黒い箱は何ですか?」
「これか?空間に装備やらアイテムを入れておくもの」
「それって魔法じゃないんですか?」
「……」
え?これ魔法なの?向こうの世界でも当たり前のように使ってたから、基本的なシステムのやつではないのか?
「物を収納する事が出来るとなりますと、次元もしくは時空を操っている事になるかと。それは光や闇といった属性の固有魔法ではないのですか?」
「詳しいな……」
「全て書籍やゲームの受け売りですけど」
この収納について深くは考えた事がない。ゲームであればこう言うのはあって当たり前。でも普通の人からすれば、これも立派な魔法なのか?あっちの世界では闇とか光系統も使えたけど、周りも使えると思ってたから気にすら止めなかった。
「ふむ。これが魔法であるならば、他の魔法も使える可能性が出てきたな」
「ゲームじゃ当たり前に使えてますけど。僕達はそんな事は出来ませんし。魔法じゃないと説明つかないのは確かかと」
「それでは闇と光で試してみるか」
「おぉー!」
―ブゥゥン……
アイテム欄にあった一本の杖を取り出す。
「万有の杖〜」
「四次元から取り出したかのように……」
別に意識してないぞ。効果音は言ってないからな!
「こほん。これは万有の杖。万物から重力と言う枷を外す効果のある杖だ。主に床が滑るところや、踏んだら痛いところを移動する時に使っていた」
「氷の大地や毒や落とし穴とか、回避するのにもってこいですね」
まさにそう言うところで使っていたんだけど。てか、この子向こうの世界を体験でもしてきたのか?
「まぁ細かい事はいいか。試してみよう。《アンチグラビティ》」
―トン!
別に魔法を使う時に何か言う必要はないんだけど。隣に視聴者がいるから、使ったと分かるようにしているだけだ。
「……特に変わった事はないな」
「この魔法はどう言う効果なんですか?」
「重力をなくす魔法だ。この地が滑ったり毒でもあれば、その効果が分かると思うんだけどな」
「重力がないって事は、思い切り跳んでみたら分かるとかでしょうか?少し跳んでみましょう」
そう言うと隣にいた少女が試して跳んでみる。
―トン
「ひゃぁぁぁぁ…………」
軽く地面を蹴ると、少女はみるみる小さくなる。暗闇だから見失いそうになる。
「どうやら成功していたようだな」
しかし空に跳んで戻ってくる様子もない。
「あ、重力ないから降りて来れないのか」
―トン!
跳んでいってしまった少女に追いつくため、少し強めに踏み込んで空へと追いかける。
「っほ!ふん!この!」
「何をしている?」
「黒騎士様!?大変です!泳いでも何ともなりません!」
「海ではないからな」
「そっか!水がなければ浮力や抵抗力もないもんね」
何この子?天才か?
空に浮いているこの現状にも動じない。跳んだ時に変な声は出てたけどな。特に何も言われないから少女を観察してみる。空の上で泳いでみたり、口から息を大きく吐いてみたりしている。
「随分と冷静なんだな」
「私、ずっとこう言うのに憧れてて。チャンスが来たら、色んな事をやりたいって考えてたんです」
「肝がすわっているな。あまり知らない俺の魔法だぞ?危害を加えられるとか考えはしないのか?」
「え?黒騎士様はしませんよ。敵意がないですもの。僕、そう言うのは分かるんです」
敵意が分かるとはどう言う事だろう。この平和な日本で、相手の敵意を感じる場面があるのか?深くは聞くつもりはないけど、この歳でレベル5って色々あるんだろうなって思った。
「そろそろ降りるぞ。4月とは言え空は冷える」
「っよ!っほ!そうですね。でもどうやって戻るんですか?」
それは考えてなかった。異世界の武器は万能に見えるかもしれないが、装備一つで重力全てを操れる訳ではない。この万有の杖は重力を無効化するだけ。重くしたり軽くする事は出来ない。それじゃ地上に降りる為にはどうするか?
「俺に掴まった方がいいと思うがどうする?」
「是非!ってかどうするか初めに……」
―ブゥゥン
杖を黒い箱にしまう。すると効果を受けていたものは、無重力から解放される。
「知っているか地球の重力は……」
「はい。1Gは毎秒9.81mです」
「やはり重力についても知っていたか。君は中々に賢いな」
「もしかして……」
「杖がなくなった事で無重力は維持出来なくなる。結果は地球に任せると言う事だ」
「それ、落ちるってぇぇぇ…………」
俺にしがみついてくる少女。空では平気そうだったが、流石に突然起きる事象に耐える事は出来ないようだ。まぁ人の脳細胞の伝達スピードを考え……
「黒騎士様!何か別の事考えてますよね!?今は着地の事だけ!!!」
「おっとそうだったな」
しっかり威力を相殺しないと、俺は平気でも腕の中にいる少女は無事ではいられない。どれくらいの高さまで跳んだろうか。雲に突っ込んでないのと、少女が普通に喋れたりする高さ。
「1,000以下だと思うから。空気抵抗は多少するとして……9.81×秒数っておおよそでどうするんだよ。速度が分からんと相殺する加減がなぁ」
「怖い怖い!」
「あーすまん。なるようになるから、君は安心しているといい」
「はい!」
俺への信頼度高いなぁ。俺は何一つ好感度を上げる事はしていないつもりなんだが。
「3……2……1……ここだ」
―ストン
少し足音がしてしまったが、腕の中の少女も無事だし無事に着地……
―ピシッ……
待てよ。今俺は漆黒装備のスキル【隠密】が発動しているはず。少女にバレてるとは言え、地面に着地した際に音が出ると言う事は。
「あまりにも大きい音は不自然じゃない程度に軽減される」
「え?」
「まずいぞ少女。この場は逃げるぞ」
「え?」
―……
足音を立てず俺は公園を後にする。この後起きる災害から、少女を守る為に仕方がなくだな。
―ドゴォォォン!!!
「なになに!?何があったんですか?」
「あーえっと」
何て説明しようかな。この少女であればちゃんと説明すれば理解してくれるはずだけど。
「もしかして魔王の攻撃があったんですか!?」
「いやその……」
魔王のせいにするか?いや、魔王になすりつけるには苦しい。この少女の頭脳があればいずれ気がつく。嘘をつく勇者とかカッコ悪い。
「俺もまだまだだな。魔法の扱いに慣れてないとは言え、浮遊と着地に加減が分からなかった」
俺は素直になる事にした。勇者よ誠実であれ何て思ってもない事を思ってみたりして。
「あ。私がいたからですよね。申し訳ありません」
「そうではない。俺の魔法だ。少女に責任はない」
「でも私がいなかったら、黒騎士様だけなら結果は変わりましたよね?」
「魔法については俺も精進する。気にするなら強くなればいいんじゃないか」
「はい!僕、黒騎士様と一緒に強くなってみせます!」
あれ?もしかして余計な事を言ってしまったかもしれない。一緒にって事は、俺が教えないといけないよなこれ。どうしようかな……向こうの世界で誰かに魔法とか戦い方を教えた事がないんだけど。
「僕、頑張りますね!黒騎士様!」
「…………おう。頑張れ」
この少女の考え方は、俺にはない何かがあると思う。異世界を体験して、魔法を当たり前と思ってしまっている俺。現実世界で魔法はないと考えていた少女。しかし俺が見せた事で、少女の中の何かが目覚めてしまったかも知れない。
もう、なるようになれだな。
「今日はもう帰ろうと思う。少女は……」
「木偏に同じ花と書いて桐花です。黒騎士様」
「桐花……」
どこかで聞いた事あるような名前だな。どこだったか?うーん、思い出せない。どこかのアニメかゲームだっけか?まぁ思い出したところでしょうがないか。
「黒騎士様はお名前はあるんですか?なければ僕が勝手につけてもいいですか?」
今日はグイグイくるな。魔法を見てテンションがハイなっているのかも知れない。それより名前どうしようかな。本当の名前で祝何て教えたら、家とか特定されそうな感じだし。
「名前はシュ……」
「黒に関係のあるものであれば、やはり宝石からとるべきです。ブラックダイヤモンド、オニキス、セレンディバイト、ヘマタイト、オブシディアン、スピネル、ブラックオパール、シャーマナイト……」
俺の話を聞かずに妄想の世界へと入っていく桐花。このまま放っておけば、黒い宝石にちなんだ名前で呼ばれ続けるのか。あーカッコいい響きで捨て難いが。誰かに名乗った時に恥ずかしくなる事が目に見える。
「待て桐花。俺は向こうの世界での名前を気に入っている」
「そうですよね!名前は親がくれた、初めてのプレゼントですからね!」
めっちゃハードル上げるじゃん。向こうでの名前なんて、自分の名前の読み方を変えただけなのに。でも祝って名前を付けたのは両親だから、親につけてもらったと言うのも間違ってはないのか?
「シュウだ」
「……普通だ!」
おい。親からのプレゼントとか、結構いい事言ってたのに。感想がそれってどうなのよ?
まぁ子供の頃は、イワイと言う名前に少し抵抗があった。学校の先生もシュク君とかシュウ君?とよく読み間違われていた。
「す、すいません!親からのプレゼントですよね!きっとそれにも意味は必ずあるはずです」
「意味ねぇ……」
「すみません!」
「まぁ普通で構わないがな。難しい名前にすれば呼びづらいし」
「分かりましたシュウ様!」
「様はいらないんだけど」
「いえ。これは譲れません!」
始めはグイグイくる子でどうなるかと思ったが、別に不快に感じる事はない。
「このまま送ろう。家はどこだ?」
「あそこの黄色い屋根の家です」
意外にも近所だったんだな。黄色い屋根の家なんて、新の家以外にもあったんだな。テレビでも分譲戸建とか増えてるとか言ってたし、オシャレな色合いが流行っているんだろう。
何て思ってたけど……。
「藤宮……」
「シュウ様は漢字が読めるのですね」
「ん?あぁ言語は向こうでも同じように読み書きできたな」
「異世界あるあるの、言語変換とかあったのかも知れませんね」
「そんな能力はなかった記憶だけどな」
初めて異世界に行った時は、なぜ言葉や文字が一緒なのかと思ったけど。伝わるなら何でもいいかと、考えるのを割と早いタイミングでやめた気がする。スキルとかで言語変換とかあったか……む!
―ガチャ
「桐花!無事だったか!」
「アニサマどうしたの?」
「今、テレビで公園に隕石が落ちたって速報が!」
「あー……シラナカッター」
「隕石だぞ?それなりに地響きとか振動があったはずだけど」
「走っているから地面に足をついている時間が少ないからね。振動は衝撃は相殺を……」
「はいはい。理論の話はいいから。早く入って母さん達を安心させてこい」
―ブンブン
外に向かって大きく手を振る桐花。そんな誰かに挨拶みたいな事するとバレてしまうだろう。しかし何も言わずさるのも……
「……《ライト》」
―チカチカ、プツン
光は一瞬辺りを照らすが、すぐに電池が切れたみたいに消えた。光に気づいたか桐花は家に入っていく。
「俺も帰るか……」
きっと家族が俺の事を心配しているはずだし。
「おかえり祝。走ってきたならお風呂入っちゃいなさい」
母さんはいつも通り。
「おかえり祝。どうした?父さんの顔に何かついてるか?」
父さんもいつも通り。
「兄貴おかえり」
妹の恩もいつも通……
「無事だたったんだ。良かった」
「なんだ?何があったんだ?」
「ネットじゃもう話題だよ」
妹の恩だけが俺を心配してくれていた!お兄ちゃん感動!
俺の抱擁を回避した恩は、テレビをつけると緊急速報に映し出される公園。
『周辺住人は何か黒い物体が落ちたと言う目撃証言もあります』
『専門家の間では地面に到着するまでに燃え尽きた隕石。それが数ミリ残った石での衝撃と考えてます』
さっきの出来事なのに、この国の情報網は早いな。っと感心している。
「祝、大丈夫そうで良かったな」
「パパの子供だもの。隕石の一つや二つくらいへっちゃらよね」
「いやいやお母さん。個人の問題じゃないよ。世界問題でしょこれ」
「俺、風呂入ってくるな〜」
「祝は世界問題よりお風呂問題か」
この話題は見なかった事にしよう。うん。それがいい。飽きれば話題にもしない内容だろう。
俺は風呂に入り、何事見なかったかのように翌日を迎えるのであった。
シュウ「魔法って色んな考え方が出来るんだな」
桐花「そうですね。魔法とは人が作り出した幻想。しかしそれは私達が知らないだけ。神が作り出した創造の力なのかも知れません」
シュウ「……そこまで考えるものなのか?」
桐花「シュウ様がいるからそう考えたのですよ。夢物語と笑われていたソレが目の前にあるのですから」
シュウ「夢物語……どっちが現実なんだろうな」