飛行魔法具の作製
飛行魔法具を作るために製材所の一角を朝から借りている。
タイカは俺より木工が上手い。悔しいから、いつも建設の仕事を手伝っているからだと思いたい。でもタイカが作ったのはボート型の板で、ボードというそれに、両手で掴める幅で前後にしっかりした取手が付けられ、その間に二人がゆったり腰掛けられるスペースがある。
俺はボードに魔法陣を組むだけの簡単なお仕事だ。さらにタイカは終わったら塗装まで請け負ってくれた。
でも、なぜかタイカとタルトの盾まで作ってきて、それに飛行魔法陣を組まされた。
フォルテは自分で飛ぶからいらないらしい。フォルテは今朝は少し体調が悪いとかで、勉強をしながらエアちゃんとお留守番をしている。
「昨日より操作しやすいかな」
「タイカに合わせて、チューニングしたからね」
「だったらリンちゃんのも作った方が良かったかな?」
「リンの魔力に合わせ直したから、もっと改良点が見つかってからで良いと思う。それにリンの要望も聞きたい」
「そうなんだ。そういえばリンちゃんとタルトちゃんの体調も気になるね」
「フォルテは気が残ったせいな?」
「たぶんだけど、二人の様子を見てだね。今日は来ないのかな?」
「今日はこれを作ると言っておいたからどうかな。タイカが手伝ってくれて助かった。ありがと」
「どういたしまして、腕時計のお返しがしたかったからね」
「材料費は持つよ」
「だったら実費の半分は御願いするね」
「了解です。でも車に載るかまで考えてなかったから、タイカが気付いてくれて助かった」
「そうでしょう。乗って帰るしかなかったから、私の分が必要だったの」
大きいボードをタイカが乗って帰ればタイカの分まで必要は無いけど、報酬だと思うことにした。
「そうだね。そんなに車に載らないから、フォルテの盾はどっちにしても無理だったね」
「そうね、後は塗装して速乾の魔法を掛けたら終わりだからお掃除をお願いね」
「はい、喜んでー」
◆◇◆
タイカが乗ったボードを先行させて、俺の車が追随しているとリンが歩道を盾に乗ってのんびり飛行している。
車道と歩道のどっちを飛ぶのが正解なのだろう?
俺達に気が付いたリンは俺の車の上を飛び越しタイカと並んだ。飛行するのに法律が分からないな、今のは大丈夫なのか?
俺が持っている法律検定三級なんて、初級の二択が五択になった程度のレベルだから常識程度くらいしか分からない。テスト前の課外授業と問題集の暗記で受かったようなもんで、法律集すら持っていない。
フォルテは二級持ちだから俺とタイカより上だし、法律はフォルテに教われば良いよね。
車から玄関で荷物を下ろし、車を駐車場に置いて戻るとリンが飲み物を持って待っている。
「こんにちは先輩。柑橘ミックス飲料ですが、どうぞ」
「ありがとうリン。タイカは?」
「シャワーを浴びると言ってました。私はボードを乗りたくて先輩を待ってました。ボードを貸してください」
「良いよ、リンにも専用で作るから改良点とか考えて乗ってみて」
「はい、分かりました」
キスしたからなのかリンを意識してしまう。俺にタイカとフォルテがいて良かった。
うん?リンは‘パンツを見るなの魔法’を掛けて無い。ヤバいことを知ってしまった。
リンは俺にパンツを見せているのか? いや、勘違いするなよカサヲム。
リンには何の魔法が掛かっているのだ。いや気にしてどうする。それを知ってリンに何をするつもりだカサヲム。
「白爵、こんにちは」
「こんにちはアパレ君。今日は彼女と一緒ではないの?」
「ここで待ち合わせしています。それでミリちゃんのこと、白爵に背中を押して頂きました。ありがとうございました」
「良かったね。俺もミリさんに助けてもらったから、よろしく言っておいて」
「ははは、気を覚えるにしても自力か、ミリちゃんに覚えてもらい注いでもらいます」
「ぜひ、そうしてくれ」
ミリさんと合流してアパレ君が去ってくれた。
アパレ君にドキドキする必要ががなくなって、本当に良かった。
「先輩、ただいま。それで先輩も一緒に乗ってもらえませんか?」
「魅力的なお誘いだけど止めておくよ、風紀員に注意されているし、リンのパンツが見えているからね」
「とっても残念です。ブルマなら良いですか?」
「それも風紀員に注意されそう、何か改良点とかあるか?」
「先輩と二人で乗るのは今度にしますね。とりあえず中に入りませんか?」
「了解。リンと一緒に飛ぶのを楽しみしてる。それで俺はフォルテに飲み物を買ってくるから先に行って良いよ」
「はーい。ボードを預かります。飛ぶのは約束ですよ」
リンに荷物を頼み、リンからもらった飲み物と同じもの買ってフォルテの部屋へとお邪魔した。
「空を飛ぶ時の法律は、特に無いと思いますけど確認します」
「無いの?」
「それより先に車の法律が必要です」
「ゴーレム車は無いよね?」
「あんなノロノロとは違います」
「確かにね。それじゃ、フォルテにお任せするね」
「はい承りました。それでリンちゃん、今日はタルトちゃんはどうしたのですか?」
「ご家族がいらしているので、休みの間はもう来ないと思います。その間にタルトちゃんに追い付きたくて、気を注いでもらおうと思い来ました」
「リンちゃんはまじめですね」
「それじゃ、リンちゃんのお部屋に行こうね」
「はい?分かりました」
なんとなく分かった俺はタイカと一緒にリンの部屋に向かう。
「タイカさん、どういうことですか?」
「フォルちゃんはリンちゃんとダーリンがキスするのを見たくないらしいの」
「そうなんですか」
「そのうち理解できるわ」
「そのうち」
「それもそのうち、それでキス付きで大丈夫?」
「はい。カサヲム先輩。よろしくお願いします」
「はい、喜んでー」
「良かったわね、ダーリン」
「タイカが先で良いかな?リン」
「はい、勉強させてもらいます」
「良かったわね、ダーリン」
「怖いですよ、お嬢様」
「だって、二人が嬉しそうなんだもん」
「・・・・タイカさん」
うん。理不尽だね。




