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02 見えるステータス

「ただいま」


「おかえりなさい、お兄ちゃん」


 王都に住む貧民層が住まう地区、イーストエンドの集合住宅。

 途中で寄った闇市からボロボロの靴を片方だけ購入し、それを履いて帰宅した俺を妹のリエラが出迎える。


「起き上がらなくていい。横になってなさい」


「……はい」


 リエラは他界した両親と同じ病にかかっており、自分の足で歩く体力がないまでに衰弱している。

 王都の最先端の医学であれば治療することも可能だが、高額な手術代を用意することが出来ずにいる。

 今の稼ぎでは、病の進行を遅らせる薬を購入するので手一杯である。


 それでいて今日の稼ぎは0Gと来たものだ。


「夕飯を買ってきたから、食べなさい」


「うん……お兄ちゃんの分は?」


「俺は帰る途中に露店でてきとうに済ませてきた」


 勿論嘘だ。


「……」


 妹は何か言いたげにしていたが、何も言わずに俺の手から夕飯を口に含み、ゆっくりと咀嚼して飲み込んでいく。

 俺に似ていない可愛らしい顔の妹だ。

 手足は枯れ枝のように細く、頬は青白いが、病気になる前は活発で笑顔が眩しい村一番の美少女だったと自負している。


「……お兄ちゃん、どうしたの?」


 妹に腹の音を聞かれないように注意しながら、明日からのことを考える。

 今日の稼ぎはゼロ。貯金もほぼゼロ。

 いくら金がないとはいえ、俺を見捨てたパーティにもう一度雇ってもらう程バカではないので、また別のパーティに雇って貰う必要がある。

 荷物持ちと宝箱を開ける盗賊に欠員が出ているパーティを都合よく見つけられるだろうか……。


「なんでもないよ。ほら、もう寝なさい」


「うん」


 リエラの髪を撫でながら毛布をかけてやると、やがて寝息をたてはじめた。


「くそ……俺がふがいないばかりに……」


 窓から入る月明かりに照らされたリエラの寝顔を見下ろし、自分を責めているとふと、視界に変なものが映った。


「なんだ……これ……?」


 なんと表現すればいいのか、リエラの上に厚みのない板みたいなものが浮かんでいるのだ。

 触ろうとするも板は俺の指を透過し、何やら文字が書いてあるのを認める。



リエラ・ノウエン

8歳

レベル1

HP15/15

MP6/6

筋力1

防御1

速力2

器用2

魔力1

運値1

スキル【なし】

魔法【なし】

状態【黒石病:進行度6/10】



「なんだ……これ?」


 この文字の羅列、見たことがある。

 冒険者協会に冒険者登録した際、冒険者の能力を数値化するアーティファクトで自分の能力値を測って貰った時もこんな感じにまとめられていた。

 心当たりがあれば先程謎の金髪エルフ幼女に眼球に何かを流し込まれたのが原因だろう。


 ダンジョン下層に一人でいたにも関わらず飄々としていた謎の幼女。

 見た目に騙されてはいけない。

 彼女は俺より遥かに強力な力を持っていて、俺に他者の能力を測る力を授けてくれたのだと思われる。


「これ、俺自身の能力も測れるのか?」



エドワード・ノウエン

16歳

職業:盗賊

レベル6

HP40/40

筋力5

防御5

速力12

器用12

魔力3

運値9

スキル【短剣術Lv1】【開錠Lv1】【鑑定LvMAX】

魔法【なし】



「うお。やはり自分のも見れる」


 悲しいくらいに貧弱なステータスだ……。

 鑑定スキルというのだけ見覚えがないが、これはあのロリエルフが授けてくれたものとみていいだろう。

 だが、いくら他者の能力値を盗み見ることが出来ることが出来ても、これで俺の冒険者ライフが劇的に良くなるとは到底思えない。


「取りあえず、今日はもう寝よう」


 最後に妹の髪を梳くように頭を撫で、俺も自分のベッドで寝ることにした。

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