ー2ー
優子の胸に顔を埋めた友子は、そう言っ目を覚ました優子の目の前に母がいた。
『あ、お母さん。おはよう。』
『おはようじゃないわよ。』
眠そうな顔で見上げる優子に母和子は笑った。
『え?……あれ?……ここどこ?』
キョロキョロする優子。
『全く、あなたは呑気でいいわね。』
『え?なんで?……ここ……病院?』
『そうよ。』と言って、和子は笑いながらため息をついた。
『あなた、自分が倒れたことも覚えてないの?』
『え?』と
優子は思い出そうと、こめかみあたりに手をやって、『イタッ!』言った。
『あなた、倒れたときに頭を打ったのよ。』
優子は頭に巻かれた包帯に手をやり、考えてみた。
『そういえば、ダブルデートの話をしてて、なんかクラッときたような……』
『おかげで、とんだ初めましてになったわよ。』
そう言って腕を組む和子。
『え?高志さん来てるの?』
優子はベッドから飛び起きた。
『ちょっと!まだ目が覚めたばかりなんだから、安静にしてなさい。』
和子はそう言って優子を寝かしつけた。
『友子ちゃんが呼んでくれたのよ。』
『友子が?』
『信一郎さんも一緒よ。』
『え?』
『とんだダブルデートになったわね。』
母にそう言われて優子は苦笑いをした。
その時、病室の扉が開いて顔を出した友子が、『あ、優子!』と言うと、飛びついてきた。
『もー、心配したんだからね!』
て優子を見上げた。
『ごめんごめん。』
優子はそう言って友子の頭を撫でた。
そして、病室の入口に目をやって、そこに高志と信一郎が立っているのに気付いた。
急に気恥ずかしくなり、顔を赤らめた優子を見て、高志は安心したように笑った。
『ホントにビックリしたよ。』と言いながら病室に入ってきた高志は、
『おかげでお母さんに会うことが出来た。』
と言ってウインクをした。
それを受けて和子は、
『もー、あんたは高志さんからもお母さんを紹介してって言われてたらしいじゃないの。』
『そ、それは……』
『それはじゃないわよ。』
『だって、恥ずかしかったんだもん!』
そう言って布団を両手で叩いた優子を見て、みんなが笑った。
『でも、大したことなくて良かったよ。』
そう言う高志を不安げに見上げる優子に和子が続ける。
『色々検査をしたけど、特に異常はないって。お医者さんは貧血じゃないかって言ってたわよ。』
『そうなの?』
優子は今まで貧血など起こしたことはなかったから、多少疑問は残ったが、みんなの笑顔を見ていたら、不安は消えていった。
『今日一日様子を見て、明日には退院だから、来週のダブルデートは、予定通りね。』
和子がそう言ってウインクすると、優子は『もうっ!』と言って布団を叩いた。
それを見て周りからドッと笑いが起こる。
大したことなくて良かった。
そう思って安心している人達を尻目に、優子の体の中では確実に何かが進行していた。
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