ダブルデート
受験も終わり、落ち着きを取り戻した頃、宣言通り友子は『いい男』をゲットしていた。
とはいえ、優子の恋人高志に紹介してもらったのだが……
安田信一郎。
高志の後輩で、最も信頼できる人物だと高志は言う。
学生時代から二人の信頼関係は続いており、今は高志の父親が経営する会社で一緒に働いていた。
上司と部下という関係ではなく、信頼できるパートナーであり、ライバルでもあった。
ライバルとはいえ、対等の関係で信頼を築こうとしている高志に対して、信一郎は高志をリスペクトしていることが見てとれた。
そんな信一郎を高志が連れてきたのは、優子のバースディパーティーだった。
優子は生まれてこの方バースディパーティー等というものを開いてもらったことはなく、せいぜい子供時代に誕生日会を開いてもらったくらいだ。
招待された友子もそれは同じで、高志主催の豪華なパーティーに、二人して目を白黒させていた。
そんなパーティーで、高志が連れてきたのが信一郎だった。
友子は優子から、信一郎は高志から、それぞれ親友の話としてしょっちゅう話題にのぼるので、お互いに興味を持っていた。
それもあってか、高志に紹介されて初めて会った時から意気投合し、お互いに連絡先を教え合ったと思ったら、いつの間にか交際していたのだ。
『なんか、最近ぜんぜんユウコと遊んでない気がする。』
『あ、それ私のセリフだよ。』
久しぶりに電話で話しているとき、そんな話になった。
『まー、お互いデートで忙しいからねー。』
『べ、別にそーいう訳じゃ……』
優子は弁明しようとするが、実際会えていないのは事実だった。
優子も友子も、それぞれの課題で忙しいらしく、たまに時間が出来ると、どうしてもデートを優先してしまう。
それを友子は『デートで忙しい』と言ってからかったのだ。
『じゃあさ……今度ダブルデートしない?』
『ダブルデート?』
『そう。高志さんと信一郎さんて同じ職場だから、基本的に休みは一緒でしょ?』
『そうだけど……』
『なぁにぃ~?私達と一緒だと、チュッチュッしながらデートできないから嫌なの~?』
『べ、べべ、別にそんなしょっちゅうチュッチュッしてないから!』
『じゃあ、いいじゃん。』
友子にからかわれて動揺した優子だったが、ダブルデート自体は楽しそうだなとは思った。
しかし、高志の前でデレた姿を友子に見せるのが恥ずかしかったのだ。
まぁ、何度も見せてその度にからかわれてはいるのだが、一日一緒となるとどれだけからかわれることか……
『あ、でも……』
見たことない友子が見られるかもしれない……
そしたら、からかってやろう……
優子はそう思ってクスッと笑った。
『なぁに?』
『ううん、なんでもない。
ダブルデート楽しみだね。』
友子は一瞬怪訝な顔をしたが、
『じゃあ、高志さんから信一郎さんに言ってもらってね。』
と言って、いたずらっぽく笑った。
『ど、どうして高志さんから?』
『だって、優子達の方が付き合い長いじゃない。私達はまだ付き合いたてのホヤホヤだから、経験豊富な先輩にお願いする訳よ。』
『け、経験豊富って……』
『まー、まー、細かいことは気にしない。』
『もうっ!』
仕方なく、優子からダブルデートの提案をすることになってしまったのであった。
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