頭目~降伏
「ほわぁっ!」
扉の陰に身を潜め、リリィ、『頭目』の順に通過する。その瞬間を狙って、短剣をリリィに突き付ける『頭目』へ、足払いをかけた。
「ぺぷしぃっ!」
転倒し顔面を床に、したたかに打ちつけた『頭目』の悲鳴は、「ぺぷしぃっ!」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某炭酸飲料とも無関係に相違ない。
「若君ぃっ!」
リリィにハグされたので、彼女に、マントを着せ、背後に庇う形を取る。
「これで、ようやく声を出せるな。おい、『閃光兵団』の『頭目』だな。」
「ふざけるなぁっ! ナニモンだ!」
「『黒龍騎士団』。貴公の様な、田舎者でも、名前くらい、聞いた事があるだろう。」
確かに、『廃嫡』された後であれば、『黒龍騎士団』と名乗るのは違法だ。
しかし、私の『廃嫡』は、『今月末』に、正式な物となる。よって、セーフだ。
「おひおひ……それって、『法の網の目』をかいくぐってるだけじゃん。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「『黒龍騎士団』……嘘だ! あいつらの本拠地まで、馬で数日かかる! 今日ここにいる筈が無い!」
「それって、今日ファンスター村を略奪しても、さっさと逃げれば、逃げ切れるって事か。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
虫か何かの様に、床に這いつくばる『頭目』。何時でも動ける様にと言う所か。
「リリィ、マントの背中を、見せてあげなさい。」
振り返るリリィ。そこに描かれた『紋章』を目にした『頭目』。思わず、と言う感じで、立ち上がってしまった。
「バッ……ばかな……本物……だとぉ……。」
「疑問は、晴れたようだな。そこで、私も疑問を呈したい。貴公、部下を『殿』に送り込んで、自分だけ助かろうとした時、貴公の『羞恥心』は、どちらの方角を向いていた?」
「おひおひ……それって、『頭目』は『恥知らず』だとでも、言いたいのか。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「しょうがねぇ……人質も取られちまったし、降伏するさ。」
頭を垂れ、帽子をとろうとしたのか、帽子に手をかけた『頭目』だった。
* * *
次回予告
第29話 頭目~切り札
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