貴女の名は……
取り敢えず、やんちゃ坊主の首を、抱きしめるように顔を近づけて、ひそひそと、確認した。
「私の指示は、全て達成したんだな。」
「当然やったよ。あんちゃん。」
「なら、あの女は何者だ。」
「おひおひ……そりゃ、お前の『情けは人の為ならず』で、呼びつけたんだろ……。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「『迷子』だってさ。『王都』までの道を教えて欲しいんだってさ。」
これが、『情けは人の為ならず』の『欠点』だ。
「おい! さっき、さんざっぱら『凄い能力』だって持ち上げといて、今更『欠点』かよ!」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
先程も触れたが、『情けは人の為ならず』によって、不自然の無い様に、『現実改変』並びに『記憶改変』が、為される。
だが、これでは『彼女』が、『王都』とは『逆』の方へ向かう予定だったのを、『王都』に向かうと、『現実改変』並びに『記憶改変』されたのか。
或いは、『王都』に向かう途中で、『ファンスター村』に、『到着』したと『現実改変』され、『道に迷った』と『記憶改変』されたのか。
私には、知りようが無いのだ。私にもたらされるのは、『結果』のみだ。つまり、どれだけ『彼女』の『人生』を『改変』してしまったのか、知りようが無いのだ。
あくまで、『不自然の無い様に』の一文を信じるしかない。これは、『召喚術』全般に、言える事でもあるのだが。
また、重ねて言うが、『彼女』に来て欲しい。そう願った事は、一度もない。
これも、『情けは人の為ならず』が、見つけてきた『適切な人材』、それを信じるのみだ。
「分かった。私が、話しをするから、お前は、村長の守りに着きなさい。」
やんちゃ坊主を下がらせてから、『彼女』の方へ目を向けよう。旅装束としては、一般的なフード付きのマントで、身体を隠している。あの中で、短剣を抜かれても見えないな。
勿論、既にフードを外して、長い黒髪と二十歳そこそこの、若い美顔を晒していた。
「で、『お嬢ちゃん』。『王都』までの道を教えて欲しいそうだな。実はこの村は、今たてこんでいてな。『お嬢ちゃん』の為に、時間を割く余裕がない。が……。」
「待ちな、『お坊ちゃん』。その『お嬢ちゃん』ってのは、やめて貰おう。」
「しかし、私は、貴公の名を知らない。当面はそれを受け入れて貰おう、『お嬢ちゃん』。」
「なら、『お坊ちゃん』。ここは、互いに名乗った方が、よさそうだな。」
* * *
次回予告
第19話 BJ
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