海賊船~最下層での戦闘~油断も隙も無い
『ノーモーション』……そんな、言葉を思い出す。それ程、唐突な『短剣攻撃』だった。
「うおっ! っとぉっ!」
慌てて、短剣を盾で止め、攻撃を逸らす。ふぅ……危ない……危ない……
「おや……『鎧』は、『貫通』できても、『盾』は、できないのか。船長ぅ……。」
「ふっ……余所見は、禁物だぜぇっ!」
今度は、左手だ。おいおい……いつの間に、左手で短剣を抜いた……持っている事も見えなかったって言うのに……油断も隙も無い……
「成程……『剣』で受けても、『貫通』できないのか。色々、分かって来たな……。」
「さがれ! 相棒!」
BJの叫び声に反応したと言うより、身体の方が反応してしまった。咄嗟に後方へ飛ぶ。
「ほぉ……完全に『殺気』を消したのだがな。よく気付いたな。女……。」
まずい。さっきまで、だらりと下げていた右腕が、いつの間にか、前へと延びていた。
また、両手をだらりと下げる船長。
「よくやったぞ! BJ。」
だが、『如何にして気付いたか』等と言う無駄な質問をしない。それに、対策を立てられてしまっては、元も子もないからだ。おそらく、短剣に付着した血の匂い辺りだろう。
「ふっ……俺の場合は、『静』も『動』も自在。『静』が、通じないなら……死ぃゃぁっ!」
今度は、右足を跳ね上げる船長。蹴りか……
「うっ! ゲェッ!」
すんでの所で、身を引いて避ける事ができた。さっきまで顎が、あった場所を通過したのは、靴の先端から伸びた刃物だった。刃渡りは、短剣よりやや短い。とは言え、マヂかよ……
「成程……聖騎士の皆様を、切り伏せてきたのは、伊達じゃない。そう言う事か……。」
「勘違いするな。『左』を抜いたのは、最後の聖騎士を斬った時が、『初』だ。『足』は、お前が、『初』だ。……そう言や、お前、名前は?」
「……ウィリアム・ユーロック。貴公は?」
「アメン……。」
「よし! アメン船長。降伏しないなら、斬り捨てるのみだ。いくぞ!」
左半身の姿勢から、盾を前面に構えて、突進する。狭い廊下ならではの戦法だ。
「おひおひ……壁まで押し込む気か? そんなに簡単にできるなら、誰も苦労しないだろう。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「死ぃゃぁっ!」
上段蹴り! だが、盾で止める! 盛大な打撃音と、硬い金属音が響く。なんて重さだ……
「上だ! 相棒!」
何時の間にか、盾を『踏み台』に、天井まで跳躍し、両手の短剣で攻撃するアメン船長。
「ちぃぃっ!」
何とか、1本の剣で、2本の短剣を捌く。盾を使いたいのは、山々だが奴には、足にも刃物がある。その対策として、残しておかなければならない。
まさかとは、思うが『壁男』……『マット』と同様に、壁や天井を歩くかもしれない。
その為に、BJには、忍耐を強いている。合図するまで待ってくれ。
「おひおひ……そりゃ、船長……アメン船長が、壁や天井を歩いて逃げるって言いたいのか。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
だが、何処にでも『まさか』は、存在する。それを痛感させられる瞬間が、やって来た。
* * *
次回予告
第158話 海賊船~最下層での戦闘~『まさか』
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