ゴブリン活性化事件~密談
「で、ゴブリンに関して、誰か何か付け加える事は、無いな。……よし、無いなら、ここから先は密談タイムだ、いいな。」
BJ、アム、パリー、ミンゴの同意を得て密談を始める。
「さて、既に気付いている者もいよう。が、ここではっきりさせておこう。今回急にゴブリン共が、湧いて出た。そう考えている者も多い筈。だが……」
「だが、突如湧いて出た訳では無い。連中は、別な場所から移動して来た。ですわね。ウィル。」
「正解だ。そして、今回の一件、奴が関与……否、奴こそが、『元凶』だ。それは……」
「バジリスク。」
私とパリー、ミンゴの声が、唱和した。
「さて、今回の一件、バジリスクが、元凶なのは疑い無しだが、念の為、説明しよう。」
「皆さま、ウィル様の言下です。拝聴いたしましょう。」
「元々、背骨山脈の北側は、魔物が跳梁跋扈する領域で、人の住める場所ではない。」
「ですから、版図に背骨山脈が存在する場合、山頂を国教と定め、山頂にはほぼ等間隔に砦を築いて、警戒に当たります。ボヘミア王国では、『黒龍騎士団』が、担っていました。」
「その通りだ、ミンゴ。で、北側……通称『魔境』は、背骨山脈に近ければ近い程、弱い魔物が、反対に離れれば、離れる程、強い魔物が、生息している。いいな。」
「『南弱北強』ですわね。ですが、強いと言えば、東の火山に住んでいる『邪龍』が、有名でしょう。ウィル。」
「一説によれば、魔物の王が、最北端で眠っているそうですね。ウィル様。」
「そうだな、二人共。で、先日倒したバジリスクだが、あれ程強い魔物、本来ならもっと北にいた筈。が、何故か突如南下した。すると、割を食うのは誰だ。」
「……ゴブリン……ですわよね。ウィル。」
「つまり、バジリスクに、怯えての逃亡……と言う事ですね。ウィル様。」
「2人共、正解。連中に国境など無い。よって、ここまで移動して来た。また、逃亡した部族は1つだろう。が、斥候を放ち、バジリスクの姿を発見したらどうなる。」
「! ……つまり、連中は、我先に逃亡。数は膨れ上がった。訳ですわね。ウィル。」
「結局、この近隣に住み着いていた連中と衝突した。だが、この近隣の連中は、バジリスクの事を知らない。よって、やって来た連中を『侵略者』と見做して攻撃して来た。」
「そこで、また逃亡。今度は、衝突を避け、山を登る訳ですね。見事な推理です。ウィル様。」
「すると、逃亡してきた連中に、自分の縄張りを荒らされてなるものかと土着の連中も山を登る。結果として、数が増えたかのように見える訳ですわね。凄い洞察力ですわ。ウィル。」
* * *
こう言う具合に、『遠隔通話』を使った密談をまとめることができた。が、さっき言わなかっただけで、懸念もある。とは言え、こちらは手の打ちようが無い。
ここ、テイル王国は、ボヘミア王国の西にある。連中も、私達も徒歩だった。移動速度は、人数が多い分、連中がやや遅い。だが、こちらは護衛の仕事で寄り道した。
更に、出発した時期を含め、このタイミングで着いた理由だろう。とは言え、人数など詳細な情報が不明なので、憶測の域を出ない。
しかし、反対側はどうか。つまり、東だ。そちらに逃亡した連中は、いないのか。恐らくいるだろう。
だが、連中だって、馬鹿じゃない。『黒龍騎士団』とまともにやり合って、勝てるはずも無い。その程度の、経験法則くらい把握しているはずだ。
もし、連中が『黒龍騎士団』と衝突していたら、その情報は、私も元へももたらされる。
それが、無い以上、連中が『黒龍騎士団』に、挑んでいない事の現れだ。
つまり、ボヘミア王国の国境を越え、反対側の国へと向かったに相違ない。
よって、現状の私達では、手の打ちようが無い。
* * *
次回予告
第115話 ゴブリン活性化事件~食事
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