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護衛~侯爵

「大儀であった。ユーロック卿。」

 あの後、すったもんだしたものの、捕縛した連中を、村で借りた荷車に詰め込んで、ここまできた。ここ、とは『ミリオネア侯爵』の居城だ。

「勿体なきお言葉にございます、侯爵閣下。」

「おひおひ……『大儀』って、それじゃ西洋の貴族と言うより、日本の大名だろう。」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。

「して、報告にあった。賊の件、デライラは、無事なのか。」

「はい、侯爵閣下。『デライラ嬢』の貞操を狙う不届き者は、成敗しました。」

「それは、なにより。で、その者達は、生かして捕らえてあるのだったな。当然、儂に身柄を引き渡す為であろう。違うか、ユーロック卿。」

「仰せの通りにございます、侯爵閣下。」

「よく言った。ユーロック卿。……何と言う不届き者共だ。折角儂が、手に入れた新品未開封の愛人を、汚らわしい手で触れおってぇ……おい!」

 側に控えていた執事に、声をかける侯爵。打てば響くように返事をする執事。

「ユーロック卿が、捕縛した賊共は、全員去勢しろ! 術後の経過も適切にして、少しでも長く生きられる様、計らうのだ。」

「承知いたしました。侯爵閣下。」

「よし! ユーロック卿、褒美は何がいい。何なりと言うがよい。」

「では、恐れながら、申し上げます。契約通りの報酬を受け取った上、早々に出立したいと存じます、侯爵閣下。」

「……おや? ユーロック卿、貴公は確か『廃嫡』したと聞き及んでいる。事実か。」

「はい、事実にございます。侯爵閣下。」

「なら、仕官の口が、欲しかろう。ユーロック卿。」

「つまり、私を家来にしたい。そう言う訳か。ついでに、『彼女達』も欲しいか。」

 等と言う無駄口を叩かなかった。

「恐れながら、申し上げます、侯爵閣下。私は、非才の身。『井の中の蛙』でございます。更なる修練が、必要にございます。」

「しかし、此度の働き見事だった。そうだ! 爵位は欲しくないか。男爵までなら問題ないぞ。儂の領内で代官が、必要なのでな。……なんだ、その『カワズ』とは。ユーロック卿。」

「恐れながら、申し上げます、侯爵閣下。それは、『井戸の中にいる蛙は、そこだけが世界の全てと誤認している。』です。井戸の外に広がる世界を、知らないのです。」

「つまり、貴公は、……そう言う事か。皆まで言わずともよい。だが、気が変わったら、また何時でも来るがよい。歓迎するぞ。」

「ありがたき幸せにございます、侯爵閣下。」


 * * * 



次回予告

第107話 インターミッション(1)-1

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