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虚構と現実  作者: 東堂 アカリ
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犬山家の場合

西暦20××年×日×日


その日はいつもより落ち着かない日だった。道を走る車もスピードが速く、ろくに確認もせず道を曲がってきてぶつかりそうになるし、スーパーに行けば多くの人が店休日前でもないのに食料品をカゴいっぱいに入れてレジを待っている。そういうサヤも滅多に買わないワインとチーズをカゴに入れたのだけれど。


「ただいま。」

「お父さん、おかえりなさい。」

「おかえりなさい。今日は早かったのね。」

「頑張って終わらせたんだよ。部長も早く帰ってテレビを見るんだってさ。」

アキラは着替えもせずに椅子に座るとテレビをつける。

「会見って、7時からだっけ?」

「8時よ。まだ始まらないから、着替えて食事にしたら?」

「そうする。」

アキラが席を立つと、いつもはテレビを独占している子供たちも落ち着かないようにうろうろし始めた。

「ねぇ、お母さん。今日はテレビで何が始まるのかなぁ?」

「学校でもみんな言ってたんだよ。税金が上がるとか、そういうことかな?」

「コウ、マキ、落ちついて。何年か前に税金が上がった時は、こんな風にいきなり発表されなかったからきっと違うわよ。」

「本当~?」

「多分…ね。もう少しでテレビが始まるから。」

子供たちにそう言いながらも、一番落ち着かないのは私自身だ。今回のテレビでの会見はインターネットでも同時配信されるらしく、テレビがなくても何らかの形で見れるようになっているから、国民は見るようにと言われていた。そのため、今日はほぼすべての店が早く閉店している。いつもは遅くに帰ってくるアキラでさえ、早くに終わらせて帰ってきた。

何の発表なのかわからないので、テレビのコメンテーターたちは「税金が上がる」とか「物価が上昇する」など、不安になるようなことしか言わないので、サヤはここ何日かテレビを消していて、ニュースを見るのは久しぶりだ。

「8時だ、始まるぞ!」

アキラの声でハッとして、皆でテレビの画面を見つめた。



『本日、重大な発表を致します。20××年△月△日より、二ホンにお住いの二ホン国民全員に一律20万円を支給することを宣言いたします。』


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