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また、傾ける  作者: 山手 聡
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出逢う

「また、来てしまった…」

浅草駅の地上出口から空を見上げ、そんな言葉が出た。


それは、それは立派な電波塔がそこにある。

「まさに空まで伸びる木といったところか」


「さて、いつもの戯言はさておきそろそろ向かおうか」と愛がない友人に急かされ僕たちはあの場所へ向かった。


古き良き日本の伝統が感じられる町、Asakusa。国内外問わず観光客で今日も、ごった返している。そんな魅力がある町の中で僕たちが向かう場所は…


「そう!浅草演芸ホールだ!」


「今日も調子よさそうでなによりだー入るぞー」そして愛がない友人に手綱を握られ演芸場へ入っていく。


場内に入ると芸人の甲高い声が響き、観客の微かな笑い声がこだましている。(そんなにウケていない様子だ)


「途中からじゃん」とぶつぶつ文句を言いつつも

トモはまばらに空いている席から丁度よさそうな2人分の席を見繕ってくれて、そこに腰を落ち着かせることにした。


落語研究(見るだけ)が趣味となった理由は次の通りである。


部活もしておらず、これといった趣味もなく浮いた話もない男2人が一緒の趣味を作ろう!というなんとも気色の悪い提案から血眼になって、探した興味がそそられるものが落語研究(見るだけ)or人間観察という、一択同然のような二択になり、全会一致で(2人しかいない)落語研究を趣味とすることになった。


ちなみに人間観察は意外と面白いということをプレゼン出来るが、これはまた別の機会に取っておこう。


落語を趣味とするまで2人とも落語を観たことも聴いたこともなかった。そんな初心者の2人だが、落語の沼にハマるのにはそう、時間はかからなかった。


話し手となる落語家が、まるで劇を観ているかのように錯覚させる言葉巧みな表現力で僕たちの意識を夢中にさせた。


そのネタのことや話し方のことなどでファミレスで大いに盛り上がって散財してしまったのはいい思い出だ。この経験からサイドメニューは安いと思って頼みすぎないことを学べたから良しとしよう。


そうこうしているうちに寄席では漫才が終わり、次の芸人は落語家と来た!

「待ってました!」と心の中で消化させ、グググと前のめりになり、ネタを聴き入る。


とすると、そこで横の席から「スーー」と気持ちの良さそうな寝息が聞こえてきたもんだ。


なんとトモが睡魔に負けて眠ってしまったようだ。確かにさっきの芸人は微妙だった。ただ、頑張ってた…


しかし、一緒に来たからには起こさないと後で「なんで起こさなかったんだ!」と言われては申し訳が無い。


だが、寝起きのトモは悪魔の大王も恐れるほど、すこぶる機嫌が悪くなる。つまり、起こそうとしても地獄、起こさなくても地獄なのだ。


そうこうしているうちに一本目の題目は中盤に差し掛かっていた。


早速起こそうと試みるも岩石の如く動かず、さっきまでの寝息も嘘のようになくなり、もはや動かない石像と化していた。

こうなってしまったらしばらくは起きることはない。諦めるべきかと考えていたところ。


「はぁぁあぁーーくしゅーん!!」

トモが大きなくしゃみを出した。一瞬凍りつく場内。そしてなによりも驚いたことはトモと目があった…


そして再び、眠りについた。


これは起こさなくてもいいということなのか…

寝起きの頭では、後で詰め寄られた時に釈明しても「覚えていない」と言われればそれまでだが…


あれこれ悩んでいたが、トモの赤子のような可愛らしい寝顔を見ていると何もかもどうでも良くなってしまった。とりあえず僕は好きな落語でも観ていよう。

と集中して観ようとしていた矢先に一本目のネタは終わってしまっていた。


もう一度トモの顔を見るとさっきまで可愛らしく見えていたはずの寝顔が無性に腹立たしく見えた。


終わったものは仕方がない。腹いせに、このままトモは起こさないということを腹に決めて二本目を続けて観ることにした。


すると、そこで丁度空席だった隣の席に同じ年くらいの女の子がスッと座ってきたではないか。


他にも席は空いているにもかかわらず、わざわざ僕の隣に…


これって、もしかして…脈アリなやつかなと下らない妄想の世界へ移動しているところで二本目の題目が始まった。


そこで確信した。

今日の落語はまともには観られないと。




また近日中にあげます。

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