9 しろとくろのふたご
『からっぽな頭と僕の日記』のIFルートでもあります。悲劇が起きなかった白黒双子と、あーくんのお話①
次にあーくんが目を覚ました場所は、大都会のストリートでした。
文字や映像が至るところにあり、町の人々は野外カフェでの会話を楽しんでいます。
子供たちはヘルメットを被ってスケボーをしたり、ジャンクフードの買い食いや携帯ゲームで盛り上がっているようです。
「わぁ……!」
あーくんの頭上には、首が痛くなるほどの高いビルがところ狭しと並び、とにかく人であふれていました。
あーくんが住んでいるのどかな町や、先ほど行き着いたお茶会の世界とは大違いです。
「都会って、すごいなぁ……」
あーくんが町を眺めていたら、どこからかボールがはねる音と、シューズがリズムよく鳴る音が聞こえてきました。
「……にいさん、こっちこっち! ヘイパス!」
「……ライム!」
「オッケー!」
声のする方へ向かうと、少し古さびたフェンスで囲まれた公園の中で、二人の男の子がバスケをしていました。
白い髪の毛をしたオッドアイの男の子が、もう一人の男の子にパスをします。
バスケットボールを受け取ったもう片方の男の子は、小麦色の肌に黒い髪、こちらも左右の瞳の色が違いました。
そして、黒くて小麦肌の男の子が見事にシュートを決めると、二人は喜びを分かち合って笑顔を浮かべます。
「さすがにいさん! いいパスだったよ」
「あ、りがとう。ライムも、ナイスシュート」
「えへへ、照れるなぁ」
そんな人たちをあーくんはフェンス越しに、憧れと尊敬の目で見つめます。
「おにいさんたち、すごく上手! あくしゅして!」
「あはは、僕たちは選手じゃないけどね。ありがとう」
「何も言え、ない……」
「にいさん!?」
有名な水泳選手が言ったように、白い髪の毛の男の子は泣く真似をします。
黒髪の男の子は本当に『にいさん』が泣いたと思い、あわあわと慌てふためきました。
「ふふっ、あははっ」
その光景を見たあーくんは、思わず笑顔の花を咲かせます。
しばらくの間、あーくんと白黒の二人は笑い続けました。
「ねぇ、君。君の名前はなんて言うの? 僕はライム。こっちは、双子の兄のアルトにいさん」
「どう、も」
ライムが自己紹介すると、アルトは律儀にお辞儀をします。
「あーくんは、あーくんだよ」
「そっか。よろしくね」
「よろし、く……」
あーくんも自分の名前を名乗ります。しかし『あーくん』はあだ名で、本当の名前は別にあるのですが、あーくんはすっかり定着してしまいました。
「ねぇ、僕たちバスケしてお腹空いたんだ。お昼もいい頃合いだし、よかったら一緒にハンバーガー食べない?」
「うん、食べる!」
ライムの素敵なお誘いに、あーくんは連れていってもらうことにしました。