6 ひとりぼっちのなみだ
「んん……」
次の日、あーくんが目覚めると朝になっていました。
外では小鳥が歌い、窓から覗くお日さまはとても清々しいものです。
「く、ぐるじい……」
「んあ、あーくんだぁ。おはよぉー」
「くらげさん、おはよう!」
くらげさんはこぐまさんの上に寝転がり、こぐまさんはとても苦しそうでした。
昨日の夜に無くなっていた重力が、くらげさんの体重とともに上乗せされているのです。
しかし、あーくんとくらげさんはこぐまさんを放っておいて話の続きをします。
「昨日の夜は本当に楽しかったねぇ。こぐまのやつ、寝てたなんて本当に損だよぉ」
「うん! きのうのはほんとうに楽しかったから、また『ぼよんぼよん』したい!」
「ね、こぐまさん!」
あーくんは無邪気な笑顔で、こぐまさんの方を向きました。くらげさんは耐えきれず、口に手をそえてにやけています。
「本人の知らないところで、楽しそうなことやってんじゃねぇぇ!!」
こぐまさんは怒り出し、くらげさんに「どけ!」と言ってあーくんと向き合います。
あーくんは怒鳴られると思いましたが、こぐまさんは顔を真っ赤にしながら叫びました。
「今度はオレも混ぜろよ! オレをぼっちにさせるんじゃねぇ!」
こぐまさんの目には、涙が浮かんでいるように見えます。けれど、あーくんには分かりませんでした。
「うん、わかった!」
あーくんはこぐまさんの手をつかみ、屈託のない笑顔を咲かせます。
あーくんの笑顔を見て、こぐまさんの黒い瞳に一筋の涙が流れました。
こぐまさんはあーくんに気づかれないように、素早く後ろを向いて涙を拭います。
「くそっ……旦那の野郎、マジで調子狂うぜ……」
「あ、こぐまのやつ泣いてるぅ。あとで皆に言いふらしてやーろう」
くらげさんはガラケーを取り出して、こぐまさんの泣き顔を撮影します。
「え、こぐまさん泣いてるの……!? どこかいたいところあるの?」
「ねぇよ!!」
あーくんとこぐまさんのやり取りに、くらげさんはげらげらと笑います。
くらげさんが満足するまで笑った後、聞こえるか聞こえないかの声で呟きました。
「……こぐまは一人ぼっちじゃないよ」
「あ? くらげ、何か言ったか?」
あーくんも何だろうと思い、くらげさんを見つめます。
「なんでもないよぉ。こぐまの気のせいだってぇ」
「……おう」
こぐまさんは「変なやつ」と口をこぼしながら、あーくんの方を向き直しました。
「なんのお話してたの?」
あーくんは何の気なしにこぐまさんに尋ねます。
「旦那、それはな」
こぐまさんはどこか諦めたようなため息をついて、ふっと笑ってみせました。
「大人の事情ってやつだ」




