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あーくんあのね、きょうね。  作者: 吐 シロエ
ねがいとぼうけん
19/38

19 おとなのじじょう

「違うんだよ……。ぼくは、わたしは……」


 くらげさんの瞳から涙がこぼれます。今までののんびりと雰囲気とは全く違い、心が壊れかけていました。


「くらげさん、大丈夫……?」


 あーくんはくらげさんの背中を優しくさすり、頭を「よしよし」と言って撫でました。


「うん、大丈夫……。ありがとう」


 くらげさんは笑顔を見せますが、あーくんは心配で仕方がありません。


 どうすれば、くらげさんを忘れないようにできるのか。どうしたらくらげさんを助けることができるのか。


 あーくんは必死で考えますが、なかなか答えが出てきません。


「お星さまの力を使えばいいんだよ」


 言い出したのはこぐまさんでした。吐き捨てるように、何か諦めたような表情で口を開きます。


「そうすれば旦那も、くらげも、幸せになれる」


「そうだろ?」


 こぐまさんはくらげさんに向かって言いました。鋭い視線が、くらげさんを突き刺します。


「……あの人を利用するのはやめてよ!」


 怒りのこもった声が森に響きました。こんなに感情をあらわにしたくらげさんは少し怖くて、あーくんの体がすくみます。


「あの人はずっと一人ぼっちで辛い思いをしているのに……。これ以上、お星さまに酷いことするのはやめて!」


 一人ぼっち? つらい? ひどいこと? あーくんには状況がいまいちつかめません。


 あーくんが願い事をするたびに、お星さまは傷ついてしまうのでしょうか。


 それでもあーくんは、お星さまが傷つく理由が分かりませんでした。


 あーくんが願い事をすれば、お星さまは喜ぶ。そう思っていたからです。


「あーくんは……」


「……君は黙ってて」


 突然の拒絶にあーくんは戸惑います。くらげさんの圧力はすさまじく、注意しなければ気絶してしまいそうです。


「これは大人の話なの」


 冷たく言い放ったくらげさんに、あーくんは信じられませんでした。


 今まであんなに仲良くしていたのに、結局は大人の事情だと突き放すのです。


 あーくんは驚き、しばらくしてからどうしようもない怒りがこみ上げてきました。


「……くらげさんなんか、しらない!」


 やり場のない怒りに、あーくんは泣き叫んでどこかへと行ってしまいます。


「旦那!?」


 こぐまさんがあーくんの手をつかもうとしましたが、あーくんは消えて空回りします。


 あーくんがどこかへ行った後、くらげさんが静かに呟きました。


「……やっぱり、ぼくとあーくんは関わらない方が良かったんだよ」


「……くそ」


 くらげさんは涙をこらえ、こぐまさんはやるせない顔でくちびるを噛んでいました。

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