19 おとなのじじょう
「違うんだよ……。ぼくは、わたしは……」
くらげさんの瞳から涙がこぼれます。今までののんびりと雰囲気とは全く違い、心が壊れかけていました。
「くらげさん、大丈夫……?」
あーくんはくらげさんの背中を優しくさすり、頭を「よしよし」と言って撫でました。
「うん、大丈夫……。ありがとう」
くらげさんは笑顔を見せますが、あーくんは心配で仕方がありません。
どうすれば、くらげさんを忘れないようにできるのか。どうしたらくらげさんを助けることができるのか。
あーくんは必死で考えますが、なかなか答えが出てきません。
「お星さまの力を使えばいいんだよ」
言い出したのはこぐまさんでした。吐き捨てるように、何か諦めたような表情で口を開きます。
「そうすれば旦那も、くらげも、幸せになれる」
「そうだろ?」
こぐまさんはくらげさんに向かって言いました。鋭い視線が、くらげさんを突き刺します。
「……あの人を利用するのはやめてよ!」
怒りのこもった声が森に響きました。こんなに感情をあらわにしたくらげさんは少し怖くて、あーくんの体がすくみます。
「あの人はずっと一人ぼっちで辛い思いをしているのに……。これ以上、お星さまに酷いことするのはやめて!」
一人ぼっち? つらい? ひどいこと? あーくんには状況がいまいちつかめません。
あーくんが願い事をするたびに、お星さまは傷ついてしまうのでしょうか。
それでもあーくんは、お星さまが傷つく理由が分かりませんでした。
あーくんが願い事をすれば、お星さまは喜ぶ。そう思っていたからです。
「あーくんは……」
「……君は黙ってて」
突然の拒絶にあーくんは戸惑います。くらげさんの圧力はすさまじく、注意しなければ気絶してしまいそうです。
「これは大人の話なの」
冷たく言い放ったくらげさんに、あーくんは信じられませんでした。
今まであんなに仲良くしていたのに、結局は大人の事情だと突き放すのです。
あーくんは驚き、しばらくしてからどうしようもない怒りがこみ上げてきました。
「……くらげさんなんか、しらない!」
やり場のない怒りに、あーくんは泣き叫んでどこかへと行ってしまいます。
「旦那!?」
こぐまさんがあーくんの手をつかもうとしましたが、あーくんは消えて空回りします。
あーくんがどこかへ行った後、くらげさんが静かに呟きました。
「……やっぱり、ぼくとあーくんは関わらない方が良かったんだよ」
「……くそ」
くらげさんは涙をこらえ、こぐまさんはやるせない顔でくちびるを噛んでいました。




