12 おくれてしまったおもい
こちらも『訳アリ男子高校生!』にて、訳ありな高校生たちと出会ったあーくんのお話
電車に揺られて、あーくんはいつの間にか寝ていました。
目覚めて辺りを見渡すと、何人か男の人たちがいます。けれど、やはりさゆりはいませんでした。
「さゆりお姉ちゃん……」
あーくんが呟くと、何人かのうち一人の男の人がこちらにやって来ます。
「お前……さゆりを、知ってるのか?」
その男の人はぼさぼさの黒髪で、眼鏡をかけていました。
服装もジャージというラフさで、とても信じられないような顔をしています。
「う、うん……」
「松風ちゃん、どうしたの~?」
「どうしたんだ?」
「急に行くから……びっ、びっくりしたよ……!」
すると三人の男の人たちも、あーくんの所へやって来ました。
「ねぇねぇ。この子、迷子なんじゃない?」
あーくんを迷子だと気づいた男の人は、白い髪の毛に赤い目をしていました。日焼けや防寒対策なのか、赤いパーカーを被っています。
「マジかよ。なぁ、自分の名前やお母さんの名前言えるか?」
あーくんを心配してくれた男の人は、金髪に黒い瞳をしています。耳には、きらりと光るピアスをしていました。
「ま、迷子なら、たっ、助けないと……」
おどおどしながらも勇気のある男の人は、紺色の髪に青い瞳をしていて幸薄そうな感じです。
「おい、お前らやめろよ……。この子が困ってるだろ」
色んな人と声が混ざってあーくんは混乱しましたが、最初の松風という人が仕切ってくれました。
「だ、だいじょうぶ」
「俺は松風。こいつらは桜花、木村、蒼井だ。賑やかなやつらだが、よろしくしてやってくれ」
あーくんは、お兄さんたちに笑顔で自己紹介をします。
「お兄ちゃんたち、よろしくね。あーくんだよ」
「可愛い~!」や「よろしく」といった声がかかるなか、松風だけは難しい顔をしていました。
「まつかぜお兄ちゃん、どうしたの?」
「あぁ……。お前、本当にさゆりを知ってるんだな?」
「うん、知ってるよ! さっきおはなししたの」
「はは、お話したのか……。そうか……」
松風の顔は次第にしょぼくれていきます。
あーくんは、『たぶん、この人がさゆりお姉ちゃんのすきな人だ』と察しました。
「あのね、まつかぜお兄ちゃん」
あーくんが松風に声をかけると、松風は暗くて沈みそうな顔をしていました。
「あのね。さゆりお姉ちゃんがね、まつかぜお兄ちゃんのこと、好きだって」
「伝えられなくて、こころに引っかかってたんだって」
そして、松風の瞳に一筋の光が差し込みます。
「そうか……。さゆりが……」
「俺も……。さゆりことが、好きだ……。好きだったんだ……!」
松風は静かに泣いて、後悔と告白の言葉を繰り返しました。
しばらくすると電車は駅に止まり、松風以外の人たちは先に降りました。
「……ありがとうな。お前に出会えて、良かった」
「あーくんも」
「じゃあ、またな」
最後に松風はあーくんの頭を優しく撫でて、電車を降りました。
ドアが閉まり、アナウンスとともに電車が発車していきます。
「あーくんも、みんなに出会えてよかったよ」
あーくんはお星さまに包まれて、また別の場所へと消えていきました。




