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あーくんあのね、きょうね。  作者: 吐 シロエ
であいとなかなおり
11/38

11 ゆうれいれっしゃ

『訳アリ男子高校生!』にて、もう会えない女の子と、あーくんのお話です

 あーくんが目覚めた場所は、電車の中でした。


 気づけばあーくんは長くて赤いソファに座っていて、電車に揺られ運ばれていきます。


「だれも、いない……?」


 周りには誰もおらず、行き先も分からない。列車が揺れる音だけがあーくんの耳に響きました。


 窓に映る景色を見てみるとビルや店はモノクロで、今いる場所が現実ではないみたいです。


「こ、これって……」


 あーくんの背中に鳥肌が立ちました。前に本で見た、『ゆうれいれっしゃ』にそっくりだったのです。


 『ゆうれいれっしゃ』はその名の通り幽霊に出会え、終点を迎えると死んでしまう恐ろしい電車です。


「ゆうれいれっしゃ……」


「ねぇ、そこの君」


「ひえぇぇ!?」


 あーくんは突然声をかけられてびっくりしました。


 もしかしたら、幽霊に連れ去られるかもしれない。そんな考えが頭をよぎりました。


「あの~……隣、いいかな?」


 夏服の制服を着た女の人は、苦笑いをしながらあーくんに話しかけます。


「は、はい……」


 あーくんはと言うと、涙目になりながら答えました。


「ねぇ、君の名前は? 私は西村さゆり」


「あーくんは、あーくんだよ」


「あーくんか……。いい名前だね!」


「あーくんも、そう思う!」


 そう言って、あーくんとさゆりは笑い合います。さゆりと話していると、なぜだか心地いい気持ちになりました。


 そして、あーくんは白ウサギと交わした約束のことを話します。


「へぇ、大人になっても忘れない物ね……」


「うん。あーくん、それを探してるの」


 さゆりは「うーん」と考える素振りをして、「あ、分かった!」と何かを思いついたのか手を叩きます。


「え、何……!? なんだろう……」


 あーくんも一生懸命考えますが、なかなか答えが出てきません。


「ねぇ、答えおしえて!」


 しびれを切らしたあーくんは、さゆりに答えを求めました。


「ふっふっふ……。それはね、あーくん。『心』だよ」


「こころ……」


 あーくんは自分の胸に手をそえます。トクン、トクンと心臓が動くのが分かります。


「そう、心。白ウサギさんは、君が大人になっても子供のように純粋な心を忘れないで、っていう意味で言ったんだと思う」


 さゆりは、あーくんにも分かりやすいように教えてくれました。けれど、さゆりの表情は悲しそうです。


「……どうしたの?」


「ちょっとだけ、思い出していたんだ」


「好きな人に思いを伝えられなかったのが、私にとって一番の心残りかなぁって」


 さゆりは何か諦めたように笑いました。


 あーくんにはそれが、胸が締め付けられるような悲しい気持ちになります。


「……好きな人、大切な人にはね。思いを伝えるのが一番だよ。私みたいに後悔してからじゃ、遅いんだ」


「でも、さゆりは……」


 あーくんが言い終わる前に、さゆりの足は透けて見えました。


「死んだらもう……会えなくなるから」


 さゆりは嗚咽をもらしながら、あの時流せなかった涙をこぼしました。


 すると、さゆりの体がどんどん透明になって消えていきます。


「さゆりお姉ちゃん、体が……」


「……もう、時間みたい。あーくん、話を聞いてくれてありがとう」


「ううん、いいの。それより……」


「あーくんが代わりに、さゆりお姉ちゃんのすきな人に思いを伝える」


 さゆりは目を見開き、涙を流してとびきりの笑顔で答えました。


「……あーくん、ありがとう!」


 さゆりが光とともに消えた後、あーくんも少しだけ涙がこぼれます。


 電車が『ゆうれいれっしゃ』ではなくなって、景色の色味が帯びていったのは、あーくんには気づきませんでした。

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