1 やくそくのよる
4つ目の連載小説です…!冬休みが終わる頃には完結できるかチャレンジ 2018.11.14
「あーくん。夜ふかしせずに、今日はもう寝なさいよ」
「うん、わかった」
お母さんに言われて、あーくんは読んでいた本を片付けました。
あーくんが読んでいた本は『星の王子様』。有名なお話で、誰もが聞いたことがある本です。
あーくんは本をちゃんと元に戻した後、ベッドに入って布団を被りました。布団はふかふかで、いつもあーくんを暖かく包み込んでくれます。
「あのね、お母さん。あーくん、きょうはね」
あーくんは今日あったことを、一生懸命にお母さんに話そうとしました。けれど、お母さんはあーくんを早く寝かせてゆっくりしたいようです。
「お話しの続きはまた明日。明日になったら、またお母さんに聞かせてね」
「おやすみなさい、あーくん」
「……おやすみなさい」
そう言って、お母さんはあーくんの頭を優しく撫でてくれました。
お母さんが、部屋の電気を消して部屋のドアを閉めます。
けれど、あーくんは少し不満そうです。
本当はもっと話したかったのに、お母さんはいつも話をさせようとしません。
あーくんは話し出したら止まらないので、仕方のないことです。
「ねぇ、こぐまさん。きょうも一緒にぼうけんしよう? きっと、楽しいよ」
あーくんは、熊のぬいぐるみに話しかけました。茶色く、黒いつぶらな瞳をしていますが、片方の目はボタンで縫われています。
「きょうはね、森のなかをたんけんするの。どんぐりを拾ったり、まつぼっこりを見つけたりするんだ」
まつぼっこりは松ぼっくりのことです。未だにあーくんは、松ぼっくりのことを言えません。
「やくそくだよ? やくそくやぶったら、罰金ひゃくおくまんえん!」
もちろん返事は返ってきません。しかし、あーくんはそんなことはお構い無しです。にしし、とあーくんは笑います。
ひとしきり笑ったら、なんだか眠たくなってきました。
あーくんは『こぐまさん』を抱きしめて、少しずつ夢の世界へ入っていきます。
「だから、あーくんとたんけん……して、ね……」
すぅすぅと寝息がたった頃には、窓にはお星さまがきらきらと光っていました。