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俺は静かに暮らしたい  作者: 一尾
5/6

協力

あの戦いから3日はいつも通りだった。

4日目、また面倒ごとがやってきた。金の鎧を着た男が、また来た。今度は、一人だから何しに着たのかと思ったら、謝ってきたのと食事へのお誘いだった。

「あのおっさん懲りずに、面倒なことを持ち込んで来るなよ。」

と美味しい料理があるかもという期待をしているのがバレないように俺がぼやくと、一名を除き皆が同意見というような顔をした。それを見てエリナは

「面白そうじゃん!皆んなで行こうよ。」

と興奮気味に、行く気満々の発言をした。

「罠かもしれないでしょう。」

とアリサが落ち着かせようと試みるが、惨敗に終わった。今のエリナには行くという選択肢しかないのだろう。アリサの言葉を無視して、俺に視線を向けてきた。

やめてくれ、この状況で俺に意見を求めないでくれと思ったのを内に隠して、アリサの矛先が向かない程度の中間的な回答をする事にした。

「行くのなら罠だということも考慮して、慎重にいかないとな。いかないのなら、料理とかは食べないということで……」

失敗しました。料理食べたいのバレバレな発言しちゃいました。

エリナが便乗するように、

「ほら、ノリアも食べてみたいって言ってるじゃん!」

と味方だと言わんばかりに横で堂々と胸を張っている。

やめて、これ以上俺の内心を暴かないでアリサに怒られるから。と心の中の俺が悲鳴をあげるのだった。アリサが

「分かりました。ノリアも食べてみたいようなので、いいでしょう。」

「いいの⁈」

と俺は、口に出してしまった。アリサは気にした様子なく続けた

「ですが、罠だった場合一週間全ての仕事を二人でやる事。」

と言った。エリナは「やったー!」と声を上げた、きっと彼女には罰などという不都合な要素はないことになっているのだろう。俺は、もしかしたら罰は俺一人でやる事になるかもしれないと思った。

こうして、皆で王国に行くこととなった。(俺は不本意なおまけ付きではあるが………)




その頃、王室では騒ぎになっていた。

「畜生、こんな王国の存亡がかかった一大事に、ライノスの野郎!」

とクリア王は怒鳴った。

ハーバットを送り出した後、隣国であり最大の軍事国家である帝国が、宣戦布告の手紙を送りつけてきたのだ。内容は《今日から10日後に、国境付近のヤハク平原にて、開戦の狼煙と共に王国に攻め入る》ということだった。

「本当に間が悪い。」

と憤慨しながら、未明に出発し行き帰り計約10時間かけ、招待状を届けに行ったハーバットは言った。その言葉に、その場にいた評議員や近衛一同頷くしかなかった。

何故なら、以前ノリア達に虐殺された。戦士団100人は王国でも精鋭であり一騎で一般兵100人分の戦力を担っていた。そして、王国の全体戦力の3割を占める戦力であったのだ。それを失った、王国に帝国と伍するだけの力は残されていなかった。それに加え、明日にはその100人を殺した。当人達が来るというのだ。

こう立て続けに、王国存亡の危機が起きては国王や、将軍、評議員達、そして軍部の役人達も唸ることしかできなくなっていた。

将軍が、閃いた顔をして

「では、例の魔物達を引き込み利用してみるのはいかがでしょう?」

と王に進言した。それを聞いた王は興奮で震え

「ハーバット将軍!君は天才か!」

と喜びの伺える大声を放った。

ハーバットは人は窮地に陥るとキャラが変わるものなのかと思ったが、当然口に出す事はなかった。

「しかし、どうするべきかの〜?」

と王は呟いた。

それから、場にいる全員でどう引き込むべきか考えるのであった。




翌日の昼下がり、王都の城門には二人の門番が立っていた。そこに異様な存在がやって来た。岩から掘り出したような馬車を火だるまのような馬が引いている。御者はいない。馬車の中から青が所々に混じった髪の女性が顔を出し、国王からの招待状を見せると門番は溢れんばかりに目を見開いた後、すんなりとその馬車を通した。

馬車の中では

「やっぱり、この馬車目立ってるぽいからさっきの門の前から歩いた方が良かったんじゃ」

と俺が言うと、招待状をしまいながらアリサが

「いえ、歩いたとしても異なる種の4人が共に歩いているのも相当目立つでしょう。それを考えると目立っても姿を見られない馬車の方が良いでしょう。」

と返して来た。たしかに納得である。この世界では、街中でも時より魔物の姿が見えるが、少数であり小さいものではペットや見世物であったり。それなりの大きさがあっても、奴隷だったり農耕や工業での動力のように扱われている。会話できる、つまりレベル30以上の魔物が街に入っていること自体が異例のようなものなのだ。

この異様な馬車のお陰で、勝手に道が開き王城にあっという間に着いてしまった。

王城に入る際の招待状の提示もまた、頭部だけで言えば最も人間に近いアリサに任せ遂に王城へと着いた。ここまで、ざっと五時間程馬車に揺られていたため、皆気が滅入っていた。特に、エリナなど出発30分で景色を見るのにも飽きて、寝てしまっていた。



応接室までの道中?の着くような歓迎を受けやってきた。所作は丁寧だが苦笑いでの対応だったのだ。

応接室に着くと、そこには例の金の鎧のおっさんと白い髪をオールバックにしたようなワイルドな爺さんがいた。服装と態度を見る限りこの爺さんが王様だと、思われた。

すると、その爺さんが口を開き

「儂は、この王国の国王クリア・ブルム・モーリスというものじゃ。」

と、俺は危うく「やっぱり」と言いかけて口を噤んだ。その代わりにか、アリサが

「私はアリサ・シエル・テトラと申します。この度は、食事に招待して頂き誠にありがとうございます。と丁寧に挨拶すると、金色のおっさんが(鎧というのを面倒だから略した)少し動揺を見せた。どうやら王国では三節の名前は王族のみらしい、貴族で二節らしい。気分で付けた名前がまさかの王族貴族とおんなじ数だとは思わなかった。などと考えていると後の2人も挨拶を終えたので自分も自己紹介をした。

「俺は、ノリア・テトラ。見ての通り悪魔だよ。よろしく。」

なんと礼儀のない挨拶かと、自分でも思ったが、敬語を使うとディアブロに睨まれそうだったから仕方ない。そう思い、ふとディアブロを見ると万足そうに頷いていた。

国王は、俺たちに椅子を進め姿勢が整ったところで、再び口を開き

「先日、討伐隊を送ったことを、まず謝罪させてほしい。」

ほんとだよ。こっちは手を出してないってのに。と心の中で思った。

「そして、今回はその詫びと言ってはなんだが、食事への招待をさせてもらった。また、来てくれて大変嬉しく思っている。この機会になんだが、今後についても話したいと思っているのだが、どうかね?」

いや、どうかね?って何。自分、食事だけ貰ったらすんなり帰るつもりだったんだけどもなどと、余計なことは口に出さずにアリサに視線を向け丸投げした。

アリサは不服そうな顔をしながらも、王に向き直り

「そちらに関してはどのような内容かによりますが、こちらにも何か益があることなのかどうかといったことが問題になってくるかと…」

と答えた。

王は「了解した。」とだけ言って、

「では、一先ずは遠いところから疲れたでしょうから、休息をその後夕食をご一緒させて頂こう。」

と続けた。その言葉を聞いた、いつから居たのか定かではないメイドの案内を受け、応接室を出て客間へと向かった。

客間は4人で使うには広すぎる程大きいものだった。壁越しにベッドが四つ等間隔に並んでいる。コレは、ここに止まれと訴えているのだろう。机の上には果物がバスケットの中入れて置いてあった。その他にも、高価そうな椅子や調度品がある。

ここまで案内してくれたメイドが

「何かありましたら机の上のベルを鳴らしてください。直ぐに、参りますので。」

と丁寧にお辞儀をしながら言った。

「ありがとうございます。」

と俺が返していると、後方から爆音が聞こえた。メイドが目を見開いているので、その視線を追うと一番手前のベッドが爆ぜていた。その横で、エリナが慌てふためいていた。

「エリナ何したんだ!」

と俺が怒鳴ると、

「い、いやぁ〜柔らかそうなベッドだったからにダイブしたら………」

と、レベル100になるとそんな事になるのか気をつけようと思いつつも、露ともそんな事は面に出さず

「そうか、弁償するにもお金ないしな。それ高価そうだし…」

と、メイドの方に向き直った。アリサとディアブロが激おこなので俺は怒るのやめた。俺が怒らなくても、恐ろしい2人の鬼がやるなら(1人は本当の鬼だが)これからは気をつけるだろう。

メイドと目があった。

彼女は自分の目で見たのに信じられていないのか、少女がつっこんだだけで壊れたベッドに時より目をやっている様子だか、俺は気にせず。

「うちの仲間がすいませんでした。あの〜、どうしましょう。弁償したいんですけど、俺たちお金無くて……」

と謝罪すると、メイドはその言葉で意識を引き戻したのか、焦りながら

「私では判断しかねますので、うちの上司に取り合ってみます。」

とだけ言い残し部屋を去って言った。



その後、特に何を言われることもなく夕方になった。

暇なので、俺は椅子に座りフルーツをちまちま食べていた。アリサとディアブロは並んでベッドに座りエリナを未だに叱っている。ざっと2時間は叱られていた。エリナがずっと立ちっぱなしだったので今にも倒れそうだ。俺も可哀想に思ったが口出しすると、矛先が俺に変わりそうなので黙っておいた。すると、突然客室の部屋のドアをノックした者がいた。4人全員が一斉に立ち上がった。(エリナはすでに立っているが)皆んなベッド破壊の件について何か決まったのかと思ったからだ。

「どうぞ。」

とだけ言うと、ドアが開き黒いタキシードを着た執事風の男が入ってきて「失礼します。私は、クリア王の執事をさせて頂いております。ゴードンと申します。」

どうやらリアル執事だったようだ。

ゴードンは続けて、

「こちらで、食事会の準備が整いましたのでお声をかけに上がりました。」

と、エリナがベッドの事など忘れて大はしゃぎしている。それを見てアリサは情けなさそうに溜息をつくが、近くに立っていたディアブロは安心の溜息をついていた。

「では、皆さん案内しますので私について来てください。」とゴードンが部屋出て歩き出したので、俺を先頭にアリサ、エリナ、ディアブロの順番だ。

部屋に着くと、そこは客室の3倍近くのの広さがあった。部屋の中心には赤いテーブルクロスがかかった部屋の奥から手前までを貫くようなテーブルが堂々と置いてあった。その上に料理と銀食器が置いてある。上座に国王が座り、テーブルの中程に四つ並んで料理が置いてある。つまりは、ここに座れと言うことだろう。なので、俺たちはここに来た順番のまま席に着いた。つまり、国王の一番近くに俺、次にアリサ、エリナ、最後にディアブロの順だ。

席に着いて思ったが、遠くね。

会話できるのこの遠さでやりにくくないと?と思っているのが皆の顔にも出ている。

クリア王は、そんな表情など気にせず(いや、きっと見えていないだろう。そのくらい遠いのだ。)

「では、全員揃ったところで頂くとしよう。どうぞ、遠慮せず食べてくれ。話は食事の後にしよう。」

と進めて着たので

「では遠慮なく。」

と言い俺が手を合わせると、横の三人も手を合わせ、揃える意図は無かったが打ち合わせをしていたかのようにぴったりと息を合わせて、「「「「いただきます」」」」と言って、食事を食べ始めた。何故か、クリア王は目を丸くしていたのに気付き、

「どうしました?」

と尋ねると、

「いただきますとは何なのだ?」

と逆に尋ねられた。

成る程、こちらの世界には「いただきます」の概念がなかったのか。ということに思い至り、口を開こうとした。だが、横のアリサが先に

「これは、ノリアが食事を取る前にいつも行なっていたので、何をしているのか尋ねましたところ、命を頂くことへの感謝を声に出しているのだと仰られまして皆でするようにしていることなのです。」と答えた。

それを聞きクリア王は納得したように、また不思議そうに頷いてみせたので、アリサがまた食事を再開した。俺も、説明は終わったからまた料理を口へと運んだ。

料理はステーキだったが、味付けはやはりソースなど森の中では決して出来ない調味料が使われていた。アリサとディアブロが美味しそうに落ち着いて味わっている中、エリナはすでにお代わりを貰っていた。


食事が終わり、クリア王との会話が始まったが、やはり遠い。でも、美味しい食事を貰った後だったから文句を言うのはやめて置いた。

「ところで、ゴードンから聞いたのだが客室のベッドを壊してしまったようだね。」

とクリア王が、俺は心臓が跳ね上がった。

「その件なので、弁償はしなくていい。」

おぉ、なんと寛大な王なのだろうかと思った。だが、うまい話には裏があるというのがこの世の常出ある。

クリア王は続けて

「代わりといっては何なのだが、儂のために一つ働いてはくれんか?」

と聞いてきた。

「内容にもよるけど、できる限りのことはするよ。」

と俺は返した。王は心得たように頷き

「実はな、この王国には隣国に東は帝国と西は不死系の魔物が集まった国、不崩国と北には君たちの住んでいた森林を挟んで魔王国がある。南は海だが、沖にはこの国と同じ程の大きさの島があり海の神マリアスが作ったとされる海上国家マリアスが在る。その他にもこの大陸には国があるのだが一先ずこれだけにしておこう。そして、帝国から昨日宣戦布告を受けた。だが、今の我らには帝国に太刀打ちするだけの戦力はないのだ。何故なら、帝国はこの大陸で魔王国や不崩国に次ぐ軍事国家であり、前までこの国にいた精鋭は君たちに殺されてしまった。ということなのだ。」

と言った。

いや、前半はこの国の周辺の説明だったが、後半はなんか俺たちへの文句に聞こえたのだけど…。あれは、そっちから仕掛けてきたはずなんだけどな。

「それで、何して欲しいの?」

と俺は、少し不服な言い方をした。

すると、王はちょと焦ったぽく。直ぐ本題に入った。

「つまり、君たちには帝国との戦争に助力してもらいたいのだ!」

それを聞き俺はやっぱりそうかと思った。

そして、問題はただ一つ

「それって、俺たちの平穏を侵すようなことなのか?」

と問うた。

クリア王は拍子抜けしたのか

「えっ?あぁー、それはそうだな。戦争になれば色々生活に問題は怒るだろう。」

「例えば?」

「動物の警戒心が強くなって獲れなくなるとかだな。」

と少し自信なさげに答えた。

俺は、その可能性もあるか。それは確かに困る。流石に俺たちは種族の特性上、寿命は無いが餓死はするかもしれないからだ。

そこで、俺は

「確かに、それは困るな。皆どうだろうか?」

と3人に聞いた。

「確かに、ありえない話では無いかと。」

「我は、ノリア様の御心のままに。」

「私は、美味しいご飯が食べたいよ。」

とそれぞれ答えた。

結論は出た。

「分かった。協力させて貰おう。」

「おぉ、有り難う。君たちが、協力してくれれば帝国とも均衡を保てるだろう。」

と王は感謝を述べてきた。


その後、話し合いどのように協力するかを決めた。俺たちは、正直手加減できない。ということで、結局それぞれ先頭にたって隊を率いることになった。

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