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大江戸銀鈴あやかし絵巻  作者: 徳井ヒロシ
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幕間 りん

わがはいは猫である。


名前はまだにゃ()い。


ん?何かおかしなことを言ったかにゃ?


細かいことは気にするにゃ。



あたしは気ままに暮らしてたにゃ。


住み家も無いし、父ちゃんも母ちゃんも知らないにゃ。


腹が減ったらおばばの所にいけば良かったし、足りなければ、魚のいっぱい置いて

ある、あそこに行けばよかったにゃ。


ただ、一つ困ったのは、おばばがあたしの首に鈴を付けたせいで、歩くたびにうる

さいにゃ。


おかげで魚を取りに行くと、あのでっかい奴が棒をもって追っかけてくるにゃ。


簡単には捕まるわけがないけど、さすがにあのでっかい奴は怖いにゃ。


いや、怖いといってもちょっとだけだにゃ。


本当にゃ!本当にちょっとだけにゃ!


ちょっとだけだけど、困った時にしか行かないことにしてるにゃ。


運がいいとちっちゃい奴が出てきて、でっかいのに内緒で魚をくれたにゃ。


あいつはいい奴にゃ。あたしの子分にしてやってもいいにゃ。



あの時は、おばばが何日も寝っ転がったまんま、飯をくれなくなったにゃ。


突っついても、ちょっと噛んでみても、おばばは起きなかったにゃ。


ただ、いつもと違っておばばがひんやりと冷たかったから、少し気持ちよかった

にゃ。


仕方がないから、あそこに魚を取りに行ったにゃ。


でも、あの怖い奴の隙を見ているうちに、なんか動けなくなったにゃ。


腹も減ってたし、暑いし、なんか頭もふわふわして何も考えられなくなったにゃ。


なんとなくだけど、このまま眠ったら、二度と起きられないのがわかったにゃ


でも、もうずっと飯を食って寝るだけの繰り返しだったし、起きて飯が食えなくな

るだけだからまあいっかって思ったにゃ。


そのまま寝てたら、あったかいものに包まれたにゃ。


はっきりと覚えてないけど、なんか周りの暑さとは違う、とっても心地いいあった

かさだったにゃ。


気付いたら、あたしは人間になってたにゃ。


いや、人間じゃない。正確には猫又っていう妖怪みたいにゃ。


そしてあたしは、葉介と出会ったにゃ。


その日から、あたしの名前は 『りん』 になったにゃ。



最初は名前なんていらなかったにゃ。


そんなもの無くても飯は食えるにゃ。


でも、皆が何度もあたしの名前を呼ぶようになったにゃ。


あたしはこの名前が……好きにゃ。 

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