二十四 泥棒
何かがおかしい……。
そのことに気付いたのは朝飯の時であった。
いつものとおり食事の支度を済ませ、りんを呼びに行く。りんはまったく食事を
作ろうという素振りも見せぬし、一度作らせてとんでもないものが出来上がってか
らは、二度と作らせてはいない。
雛が作ってくれるときは、同じ食材を使ってなぜこうも葉介の作ったものと違う
ものが出来るのかと、不思議になるほど立派なものが出てくる。しかし、迷惑であ
ろうし毎度毎度雛に頼むわけにはいかない。
りんがずうずうしくも催促したときは、顔を赤らめながら、
「葉介さんのお食事なら毎朝お作りしても……」
と言ってくれたが、きっと気を使ってくれたのであろう。
それはさておき、最初はりんを座らせ、飯をよそおうと時である。炊いたはずの
量より米が少ない。その時は、
さてはりんが腹が減ってつまみ食いをしたか。
と思い放っておいた。その割には、いつもどおりの量を食っていたのは気になっ
たが。
次に気付いたのは翌日の朝飯である。やはり同じように米が減っている。
さすがに注意せねばならぬかと思ったが、たまたま腹が減っていただけかもしれぬ
と、大目に見ておいた。
さらに翌日、おかずや漬物を並べ、りんを呼びにいく。そして戻ってみると、
「な……!」
用意しておいたものがほとんど無くなっている。これはさすがに叱らねば、りん
の今後のためにもよくないと思う。
「りん、そこに座りなさい」
「何にゃ?早く飯を食おうにゃ」
「飯は今食べただろう?それにご飯は皆で一緒に食べるもんだ。いくら腹が減って
いても一人だけ先に食べてしまうのはよくないぞ」
「葉介は何を言ってるにゃ?あたしはまだ何も食ってないにゃ」
「なんで嘘を付くんだ?もう三日も同じ事をして。なぜ腹が減ったならちゃんと言
わないんだ!」
「にゃ?いったいなんのことにゃ?」
りんは心底わからないという顔をしている。だんだんと腹の立ってきた葉介は、
この三日間のことをあげ、りんを叱りつけた。しかし、
「ひ、ひ……、ひどいにゃー!!あたしは嘘はついてないにゃー!今日だってまだ
何も食ってないし、昨日もその前も、出されたもの意外食べてないにゃー!」
予想外なことに、りんは泣き出してしまった。一瞬驚いて謝りそうになるが、
「まったく、そんな手が通用するとでも……」
言いかけて言葉を飲み込む。りんは突拍子もないことはしても、素直だし一度も
嘘をついたのを見たことがない。だんだんと冷静になった葉介は、
「ほ、本当にお前じゃないのか?」
「あたしじゃないにゃー!昨日もその前も、出されたもの意外は……、あ!!」
何かを思い出したように泣き止むりん。やはり食ったことを思い出したかと思っ
た矢先。
「雛から葉介には内緒って言われて、饅頭をもらったにゃ。
……!!しまった!これは内緒だったにゃ!」
「…………」
呆れ返ったが、この様子では本当にりんではないのであろう。
「す、すまん。実はだな……」
ここのところの不思議な現象を話す。
「にゃ!じ、じゃああたしの飯が誰かに食われていたというのかにゃ!?」
りんにはこの怪奇現象より、自分の飯が減っていたことが驚きのようだった。
しかし、いったい誰が……
この家によく出入りするのは、雛と木霊である。しかし、まさか雛がそんな泥棒
のような真似をするはずがないし、わざわざ葉介の作るまずい飯を食わずとも、自
分で作る飯のがはるかに旨いだろう。木霊にいたっては、飯を食う必要すらないで
あろうし。
まさか、狐達が……!?
ふと思い当たるが、あの二人が油揚げ以外のものを食べているのを見たことがな
い。それに、神の御使いともあろうものが、それこそ泥棒のような真似をするはず
がないだろう。もしかしたら、野良犬や野良猫の仕業かもしれない。
しかし……、犬や猫がそんな起用に米びつの蓋を取って、あまつさえ食後に蓋ま
でしていくだろうか。
「仕方ない」
手っ取り早い解決方法として、食事を用意した後、その場を見張ることにした。




