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大江戸銀鈴あやかし絵巻  作者: 徳井ヒロシ
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二十 とおせんぼ その二

 その日の夕暮れ、葉介はりんとともに野原に立っていた。一緒に行きますと言っ

てくれたが、さすがに雛を連れて行くのは心配だったし、留守番を任せることにし

た。先日の入道騒ぎのときと違って、付いて来る気満々で説得に苦労したが……。

 代わりにとあてにしていた熊吉は、


「あんときは仕方ねぇから付き合ってやっただけだ。それになんで俺が化物退治に

協力しなきゃなんねえんだ?」


 と、にべもなかった。木霊にも相談してみたが、


「ああ、そのような小物なら別に心配することはない。たとえ出会ってしまって

も、朝になれば何事もなく帰れるのじゃからな」

「しかし、実際に町の人たちに被害が出ているんですよ。すでにあやかしの仕業と

の評判が立っていますし、ただでさえ良くないあやかしの立場が悪くなる一方では

ないですか!」

「やれやれ、仕方ないのう、じゃあ一つ教えといてやるわい。そ奴は、ただ人の通

り道をふさいで邪魔するだけのあやかしじゃ。いや、あやかしと言うと少し語弊が

あるかの……。

 わかりやすくいえば、この前ののっぺらぼうと一緒じゃ。正体もあるし解決方法

もある。そうじゃな……、嘘くさい話がなんと言われるか、よう考えてみよ」

「……?。どういうことでしょう?」


 木霊は葉介の質問には答えず、なぞなぞのようなことを言った。


「御使いの狐達にも、話をしたほうがいいのでしょうか?」

「こんなくだらんことで、あやつらが動きはせん」

「そうですか……」

「それに、先の件は手伝ってやったじゃろう。

ま、まああの娘に、儂の存在を消されるかもしれん恐怖を感じたのもあるが……。

 とにかく今回は危険もないし、いい勉強と思うて自分でやってみよ。」


 まあ、木霊がここまでいうなら危険はないのだろう。あやかしに会った人たち

も、朝には何事も無く解放されたようだし。


「それにの、確かにいろいろ教えてやるとは言ったが、すべてを儂の知識だけで済

ませておっては、いざという時に取り返しがつかんくなるぞ。害の無いものについ

ては自分で考え、調べ、経験してみよ。それがあの娘達を守ってやれる力になる

はずじゃ」


 確かに言われるとおりであろう。葉介は木霊の言葉を聞き思う。そうだ、自分は

りんたちを守れる力を付けなければならないのではないか。


「それとな、してはならんことは教えておこう。すでに娘の話で気付いておると思

うが、叩いたり刀で切ったりなど、危害を加えると一人が二人、二人が四人とどん

どんと数を増やしていくぞい」


 まあ、だからといって、数を増やさねば解決するわけではないがな。と続ける

木霊の言葉を聞きながら考える。

 確かに、聞いた話から察するに、あやかしに何がしかの事をするとどんどんと数

が増えていくようだ。


「ほれ、それに行くなら今がいい時分じゃぞ。そろそろ逢魔時(おうまがとき)じゃ」

「逢魔時?」

「ああ、昼と夜の狭間の時じゃ。日の光が無くなり人が活動を終え、夜の闇と共に

あやかしが起き出す時間じゃ。だから本来は、この黄昏時に人は出歩かぬほうが

よい。

 特にお前さんはあやかしと遭遇する可能性が高くなる時分じゃし、今後も黄昏時

には用心して行動するよう心がけておくがよい」


「はい」


 木霊の忠告を胸に刻み、支度を整える。とはいえ、やはり一人では不安だ。

と、思った矢先、


「それじゃぁ出発にゃー」


 楽しそうなりんの声に、不安だった葉介の心が軽くなり、勇気付けられる。

まあ、きっとこいつは、止めても無理やりにでも付いて来てくれるだろう。

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