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大江戸銀鈴あやかし絵巻  作者: 徳井ヒロシ
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十四 決意

 狐たちが帰ったあと、なんとはなしに今後のことを考える。


「まあ、以前に儂が言うたことの意味もわかったじゃろう。あやかしがすべて、

この娘のようなものと思って接しておっては、最悪とり殺される場合もあるという

ことじゃ。身を守る意味も含めて、知識を得ることは必要じゃぞ。知っておれば

必要な対応もできるからの」

「はい、言われたことはわかります」

「まあ、そのへんについては儂も教えてやるし、あの様子なら狐どもも手助けして

くれるであろう。色男というのはうらやましいのぉ」

「そうにゃ。いざというときはあたしがいるにゃ」


 木霊の最期の言葉は少々引っかかるが、葉介のことを心配してくれているのはわ

かる。りんは本気なのか何も考えていないのか、こっちはあまり頼りになりそうに

ない。


「それよりも、お前さんがすべきことは人の世で、人とあやかしの橋渡しをして

やることじゃ。この娘を守ると決めたならやり遂げよ。それは儂らではどうにも

ならん。人であるお前さんたちにしかできんことじゃ」

「そうにゃ。あたしにもっと饅頭を食わせるにゃ」

「わ、私も葉介さんとりんちゃんのためにお手伝いします!」


 葉介は思う。あまりの無邪気さや、共に過ごし慣れていくうちに間違えそうにな

るが、確かにりんはあやかしである。人のように普通に年をとっていくのか、寿命

があるのかすらわからない。


 自分や雛が老いて死んでしまった後、りんはどうするのだろうか。


 木霊のように、あやかしの世界を主な住処とできるならそれでも良いだろう。


 しかし、人の世で生きていかねばならないのであれば、自分で食い扶持を稼ぎ、

人の集団の中で生きていけるようにしてやらねばならない。


 それに、もし自分が嫁をもらったりしたときはどうするか。いや、妹としてなら

一緒に暮らしても変ではないのか……。


 いやいや、あやかしを義妹として受け入れてくれる女性など……。いや、それな

らここにいるではないか!


「どうなさったんですか?」


 い、いかんいかん。無意識に雛を見つめてしまっていた。


 小首かしげる雛はとても可愛らしいが、あらぬ方向に考えが脱線しそうになり、

慌てて意識を戻す。


 そもそも、葉介にとってりんはどのような存在なのだろう。恋人?妻?いやい

や!それはありえない。自分を見つめる雛の顔が目に入り、慌てて否定する。

 

 少しばかり考えてみるが、やはり今一番近いのは妹のような存在であろう。


「まあ、大変ではあるがあまり考えすぎんことじゃ。信じ、恐れ、敬い、人が儂ら

に対して思う心が強くなれば、あやかしにも住みやすい世になる」


 ふと、葉介の中である思いが芽生える。


「私は物書きになりたいという夢があります」

「葉介は饅頭屋が似合うと思うにゃー」


 いや、それは絶対に違うから……。


「私ができることといえば、拙いですが文章を書くことだけです。だから私の書い

た文で、たくさんのあやかしたちを紹介するというのはどうでしょう?

 もちろん多くの人に読まれるには時間がかかるでしょうし、そもそも私ごときの

文章が世に出せるのかすらわかりませんが。でも、少しずつでも皆を紹介していけ

ば、きっと世間の人たちに、心の片隅にでもあやかしの存在が刻み込まれるはずで

す。そうすれば祖父から孫へ、母から子へ、そしてその子からと次の子たちへと

受け継がれ、百年、二百年と人とあやかしが共存できる世ができるのではないで

しょうか」

「うむ。たしかにお前さんらしいやり方かものぅ」

「すごいです葉介さん。わ、わたしも、その……読み書きは苦手ですけど、できる

限りのお手伝いをさせてください!」


 決意をこめた言葉に、皆が暖かい視線を送ってくれる。


 よし、やろう。皆のためにも、自分ができることを!


「饅頭屋か魚屋がいいと思うがにゃー……」


 りん以外は……。

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