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大江戸銀鈴あやかし絵巻  作者: 徳井ヒロシ
13/55

十一 稲荷神社

 それからしばらくは、何事もなく過ぎていった。


 雛は毎日のように家に来ては、りんの面倒を見てくれた。


 それと並行して、自分の友達や近所の信頼できそうな人たちに、りんのことを話

してくれていたようだ。


 もちろんすぐに受け入れられたわけではないが、まだまだ北国で雪女に出会った

だの、どこぞの川で河童が出た、山中で天狗を見た、などの話が信じられていた頃

である。


 自分たちに祟りや災いをもたらすものではないとわかると、その美しい姿や、天

真爛漫な性格も幸いして、しだいに町の人にも受け入れられていった。


 まあ、熊吉に関しては猫又になる前からの因縁があるので、『犬猿の仲』ならぬ

『熊猫の仲』とでも言うところだろうか。


 ともあれ、あまり大っぴらにとはいかないが、おかげで今ではりんを連れて外を

出歩けるようになっていた。


 葉介一人ではこうはいかなかったであろう。


 雛に感謝である。


 とはいえ、いくら気持ちで感謝していても、実際に伝わるかは別だ。その日は

りんの散歩も兼ねて、雛への感謝の贈り物を探していた。


「おい葉介!雛へあげるのはあれがいいにゃー。きっ喜とぶにゃ」


 りんが目ざとく見つけたのは、声をあげて歩く金魚売りであった。


 確かに綺麗だし、雛なら大切に育ててくれそうだ。りんにしてはいいことを言う

と思ったが、葉介の手持ちからすると、少し高い。


「あれはきっと旨いにゃ」


 ……却下だ。


「なんにゃ。雛なら一匹くらい分けてくれると思ったのに」

「お前の飯を買いにきたんじゃない!」

「葉介はけちんぼにゃ」

「……」


 こいつは居候の分際で!


 その後、(くし)(かんざし)などいろいろ探し回ったが、葉介の懐具合から諦め、立ち

寄った稲荷神社の社務所で厄除けのお守りを買った。


「金魚とか饅頭のが良かったと思うがにゃー?」


 遠回しのりんの要求を無視し帰ろうとした時、売り場に小さな鈴を見つけた。


 どこにでもありそうな普通の鈴だが、売り文句だけは一丁前に”魔よけの鈴”と

謳っている。


 そういえば、不思議なことににりんの付けていた鈴は、猫又になった後、どこに

も見当たらなかった。


「あの、これもください」


 鈴と、一緒に売っていた組紐を買い、社務所を離れる。


「ほら、りん。これはお前にだ」

「嫌にゃ!それはうるさいからでっかいのに見つかるにゃ!」

「お前は……。もう野良猫じゃないんだから、魚を取ろうとするんじゃない!」


 やれやれ……。


「それに、これは悪いことからお前を守ってくれるものだし、もしお前が私と離れ

てしまったとき、この音を頼りに見つけられるかもしれないだろう?」

「……わかったにゃ」


 やはり、帰る場所が無くなるのは不安なのだろう。素直にうなずいたりんの首

に、組紐に付けた鈴を掛けてやる。


「うん、よく似合う」

「……うにゃー」


 首から下がる鈴がうっとおしいのと、照れくさいのが半々なのか、妙な反応を

している。なんにせよ、いい買い物をした気がする。


「さて、素直に言うことを聞いたご褒美に、饅頭でも買って帰るか」

「な!本当かにゃ?やったにゃー!」


 境内にある、二匹の狐像の間を通り抜けて神社を出る。


 そういえば、幼いころに狐の像に登って、親に怒られたことを思い出した。


 懐かしい記憶である。


 その時、ふと違和感を感じた。まるで何かに見つめられているような、そんな

気配。


 しかし周りには狐の像があるだけである。りんは何も反応する様子は無い。


「気のせいだよな」


 さて、雛は喜んでくれるだろうか?などと考えながら、りんとともに家に向かっ

た。

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