幕間 雛
わたしには兄がいる。
それなりに年が離れていたし、両親も忙しかったため、代わりによくわたしの面倒
を見てくれた。
世間では乱暴者で通っているし、実際そのとおりだと思う。
ただ、わたしのことはすごく可愛がってくれる。
わたしは兄と違いおとなしい子だった。
小さな頃は、周りの男の子によく泣かされた。
そのたびに兄がその子たちに乱暴を働くものだから、兄の風評は私のせいかもしれ
ない。
そのくらいの年の子は、意味もなく意地悪したりするものだし、そんなに気にして
なかったのだが。
でも、そうじゃない男の子もいた。
その人は、わたしが道端で泣いていると、困ったように頭を撫でてくれた。
不思議なお話をしてくれて、時には自分のおやつであったろうに、飴玉をくれた。
お話が面白くて、わたしはすぐ泣きやんだ。
わたしより年上の、近所に住む、少し背が高く色の白いお兄さんであった。
十三歳を過ぎた頃から、わたしの容姿は近所で評判になっていたみたいだった。
昔わたしに意地悪をした男の子からも、声をかけられたこともあった。
ただ、兄がその子の首根っこを掴んで引きずっていってからは、わたしに声をかけ
ることはなかったが。
今は兄のおかげか、むやみに声をかけられることも減っている。
そこは兄に少し感謝している。
やっぱりまだ男の人は苦手だ。
わたしはもうすぐ十六歳になる。
兄が断っているようだが、親戚から縁談の話も来ているらしい。
もちろん親戚も、両親を亡くしたわたしたちを心配してくれてのことだと思う。
でも、まだ早いし、わたしは結婚したくない。
いや、結婚したくないというと語弊がある。
わたしだって女の子だ。
近所のお姉さんが、白無垢姿でお嫁に行く姿は綺麗だと思ったし、憧れた。
もし結婚するなら……。
理想の相手がどんな人か考えてみる。
そう、たとえば近所に住んでて、年上で、優しくて、少し背が高くて、色白で、
それに不思議なことをいろいろ知っている、そんな人がいい。
こ、これじゃあ、まるであの人がいいって言ってるみたいじゃない!
違うの!ただ、そういう優しい人がいいってことで……。
でも……いつか、そんな日が来るのだろうか?
ほら、まだあるからお食べ。
あなた本当に食いしん坊ね。
あなたに話してると、本当に理解してくれているような気がするから不思議。
そうそう、この前葉介さんったらね……。
ねえ、聞いてる?『猫ちゃん』




