表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

人力発電機構

作者: 秋和翔

中学に書いたものが出てきたので、ちょっと手直ししての投稿。きっと10分もしないうちに記憶から消えるような作品。

 これはそう遠くない未来の話である。私の名前は倉谷敬蔵。歳は27で、今は無職住宅購入困難者という罪で刑務所に服役中だ。刑罰は終身刑。

 無職住宅購入困難者というのは、簡単に言うとホームレスのことだ。ではなぜホームレスなんかが終身刑なのか。これは今の私の国は不況で失業率があがりホームレスが増えた。その対策のため、法律に無職住宅困難者令を加えた。これはホームレスを罪とする内容だ。この法律が出来てから、ホームレスはほとんど消えたと言っていい。

 しかし何故終身刑になるのか。日本の技術力が進化し、瞬間移動機が家電として登場したり、実感シュミレーションゲームが大衆に普及した。それらの近未来の家電や娯楽の電力消費量は莫大だ。

 普及し始めた当初は、使用量が少なかったため電力も足りていたが、量が増えるたび、または新しい家電ができるたびに電力は少しずつ足りなくなっていった。そこで政府が出したのが全犯罪終身刑化と人力発電案そして無職住宅購入困難者令である。

 全犯罪終身化はその名の通りで全犯罪を終身刑にするものである。人力発電案は今の電力不足の対策として犯罪者を使って発電させて電気を作ろうというものである。もちろん国民からの反発を受けたが、政府はこれを無視してこれらを法律として成立した。                            今から話すのはこれから3年後の事である。


 私、倉谷敬蔵が働いている会社はテレビを作っている。私は工場で働いていたのだが、クビされた。今から1時間前の出来事だ。

 今じゃテレビさえもハイテク化している。折りたたみ式のテレビや家から直接脳に電波を送り、いつでも見られるテレビがある。

 話がそれたが、私がクビにされたのはいつもどおりの簡単な組み立て作業をしている時である。

「おい倉谷、主任が呼んでるぞ」と1つ年上の隼人さんが私を呼ぶ。隼人さんは温和な性格で、会社に入ったばかりの私をよく助けてくれた。今では会社で1番気を許せる人だ。返事をして作業を終らせ、主任の所へ向かう。そこで言われたのはクビだった。

「明日から来なくていいから」と言われ茶封筒を渡された。私は動けなくなった。これからどうすればいいものか。このままでは家賃を払えなくなって、ホームレスになり一生刑務所暮らしだ。

 俺は施設で育ったから身寄りはない。今ではちょっとずつロボットが浸透してきたためバイトすら見つからないかもしれない。


 クビにされてから4カ月たった。安い賃貸だったので思っていたより過ごせたが、もう無理だ。バイトも見つからず、貯金尽きた。たぶんもう追い出せれるだろう。

 ピンポーンとチャイムがなった。ついに来たかと思いながら、チャイムにでる。

「倉谷さん1カ月滞納しましたから、政府の方に連絡しましたよ」俺は驚いたまさか政府に連絡されるなんて知らなかった。 

 俺はコート着て外に出た。そしてとにかく走った。10分ぐらい走っていると体が急に動かなくなった。目の前に人が現れる。政府の奴だ。服装で分かる。そいつの手には筋肉硬直銃が握られている。これは相手に銃口を向け撃つ。そうして弾が当たると、撃たれた奴は気がつくと筋肉が硬直して動けなくなる。私は、どうやらそれを撃たれたみたいだ。

「ついてこい」と言われた。しかし動けないのにどうやってついていくのだと悪態を心でつく。そうこうするうちに、目の前がかすみ気を失った。

 目を覚ますと、そこは牢屋の中だった。牢屋は4畳ぐらいの部屋で、窓もなく蛍光灯が1本弱々しい光を発している。これから何が待っているのかと不安が心を満たしていった。


 いつの間にか私は眠っていた。起きると、部屋は相変わらず薄暗い。今は何時なのだろうと考えていると放送があった。

「囚人の皆さんは食堂に来て、6時30分までに食べ終え、6時40分までに仕事場に来ること」

 その放送が終わると、ガチャと音がしてドアの鍵が開く。すると何人もの足音がして、他の囚人服を着た者達が走り過ぎていく。私も慌てて後を追いかけた。

 食堂に着いた頃には、私は息を切らしていた。

 食堂に行く道には、何人か警備員がいて、どいつも重装備だった。食堂は番号順に前から座るという感じで、俺の囚人服には777とあった。なかなか縁起がいいなと少し嬉しくなった。

 食卓には、白米と、おかずなのか果物や野菜の皮が置かれていた。餌、いや残飯とよんでもいいぐらいの盛り付け方がされている。食事は、白米だけ1度だけおかわりが出来るらしい。

 私は白米を平らげ、おかわりしようとした。しかし、おかずを食べてからだと怒られる。仕方なく一口分だけ口に運ぶ。不味くて喉を通らない。いくら皮だからといって、こんなに不味いものなのか。そう思いながら時計を見るともう6時38分だった。私はおかずを残し皆について行った。ここまで私はまだ他の者達の声を聞いていない。誰もが静かで気持ち悪い。叫びたくなる。

 そうして皆についていくと仕事場らしき場所についた。そこには大きな歯車があり、それを俺達が回すみたいだ。他にはランニングマシーンみたいなものがある。自転車も置いてあった。私は原始的な発電方法に驚いた。そこで朝の集まりがあり、7時から仕事だと言われた。そして、その日から地獄の発電の日々が始まったのだ。


 私が捕まって1カ月たった。私の体は限界だった。そんなとき助けてくれたのが、番号が1番の早川貫二さんだ。貫二さんは40歳だが、その歳を感じさせない発電ぶりだ。貫二さんはあまり喋らない人だけどアドバイスがとても的確で、他の人達からも陰で人気がある。

 そしてもう1人。遠藤豆吉。あだ名はマメ。マメは俺より2つ下の25歳で、とても明るい性格の彼は、番号が俺の後の778番。「どうせ捕まるならあと1人分早かったら777番だったのに」というのが口癖だ。私はマメの元気に何度も救われた。

 ある日珍しく朝食が騒がしいときがあった。気になっていると、貫二さんが教えてくれた。

「今日、伝説の女が帰ってくるらしい」

「伝説の女?」

「そうだ。そいつは唯一脱獄に成功したんだ。ちなみに番号は5番だ」

「そんな人がいたんですか」

「男っぽい女だ。気にいらなかったらすぐ殴る。お前も気をつけろよ」

 貫二さんはそれだけ言うと何も話さなくなった。昼食のとき、マメが伝説の女の事を話してきた。全部、貫二さんから聞いたらしいが。

 昼食が終わって、仕事場に戻ると伝説の女がいた。不機嫌で、今にも何かするかもしれない雰囲気を漂わせている。彼女は今まで見たことのない速さで発電していた。1か月の間、彼女の隣で発電していると急に声をかけられた。

「777番、お前名前なんて言う」

「私は倉谷敬蔵だけど・・・あんたは?」

「私は寒巳。ケイ、お前に話がある」

「それでなんですか?甘味さん」

「アクセントが違うカ・ン・ミで寒巳だ。それよりも一緒に脱獄しないか。この1か月で、警備員の武器、場所、シフト、1日の流れ、監視カメラの場所はすべて覚えた。そして分かった。これには1つだけ欠点がある。それを利用すれば逃げられる」

「どうしてそれを俺に」

「馬鹿そうだし、使いやすそうだからかな。貫二にも話しとけ。それといつも仲良くしている奴にもな。私の予想だと5日後に私とケイと貫二ともう1人が第3発電所で近くになるはずだ。そのときにお前らの返事を聞く」

 それを言い終わると黙ってしまった。この人は貫二さんと似ているかもしれない。そう思ったとき、発電終了の合図が鳴った。

 そして5日後。寒巳さんの言う通り、全員が第3発電所で近くにいた。そして最初に口を開けたのは寒巳さんだった。

「貫二は参加するか」

「・・・しない。絶対に失敗する。敬蔵とマメがやるなら別だが」

「俺は絶対にやる」とマメが珍しく真剣に答えて、俺の方を向きお前はという顔で見る。

「私もやる」

「貫二、ケイとマメはやると言ってるけど。」

「付き合うしかないみたいだな」

「よし。これで決まりね。今から説明する。」

 そして寒巳さんの説明が始まった。決行日は8日後の10月14日の月曜日。まずは発電機械の事を知りつくしている貫二さんが発電機械を壊す。その混乱に紛れ、私とマメでカメラの死角を使いブローカーを落とす。その間に寒巳さんは監視員を引きつけ鍵を奪い取り電気室に行く。そして僕らも暗闇を使い一気に電気室に行き、皆で占領し全部のカメラとセキュリティを無効にして正面突破するという作戦だ。そんな作戦で大丈夫かと思ったが、乗った船だから仕方がない。というより今更脱けるとも言えなかった。


 ついに実行の日が来た。マメが緊張していたから大丈夫だと言ったけど、正直私のほうがマメ以上に緊張していたんじゃないかと思う。

 貫二さんが機械を壊し、監視員の目を引きつける。その間に私とマメと寒巳さんは発電機械を離れ外に出た。このとき、心臓が爆発しそうだった。横を見るとマメは尋常じゃない汗をかいている。

そして寒巳さんが大声をあげ監視員を引きつてくれた。その間に私とマメで慎重に監視カメラをよけてブレ―カーを目指す。そうしてブレーカーにたどり着き、マメと一緒にブレーカーを落とした。するとウゥーーーとサイレンが鳴り響いた。私とマメは焦った。たぶんこれはダミーで下ろすとサイレンが鳴るようにされていたのだろう。まんまとはまってしまった。

 すぐに私とマメは囲まれてしまった。私達はどうすることも出来ず、捕まった。しかし寒巳さんだけは違った。監視員に聞いてみると、寒巳は私達が起こした混乱を利用して逃げたらしい。そのとき初めて私は利用されたことに気付いた。


 その後私達に待っていたのは地獄だった。私達は危険人物として、特別発電所で労働させられた。そこはまさに地獄で、普通の発電所より段違いにきつかった。

 私はあいつへの復讐のために必死に頑張った。必ず脱走して殺してやると。マメは気が狂い、貫二さんは自殺した。そんな中でも復讐のため頑張った。

 結局、特別発電所で2年も過ごした。もとの発電所に戻ると、とある噂を耳にした。寒巳は死んだ。噂を確かめたい私は1人の監視員と仲良くなった。彼の話では、あの後、寒巳はすぐに捕まり殺されたのだという。私は2年間もいない奴を恨み、そのためだけに生きてきたということだ。そうして私の復讐も、私の命も、なんともあっけなく終わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ