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第五幕 : 決心



朝、起きてすぐに目が痛くなった。カーテンを閉めずに寝たせいだと分かるのには少し時間がかかる。脳が覚醒すると同時に、俺は昨晩のことを思い出した。



夢だと思いたい。しかし夢ではなかった。




(さくら)桜魔(おうま)(おに)桜魔狩(おうまが)り…」

一日で“ダークファンタジー”な世界に迷い混んだかのような気分だ。“できれば平穏に過ごしたい”と願って生きてきた俺に対して、神様は何故(なぜ)この様な仕打ちをするのか。まあ、無神論者(むしんろんしゃ)だから神の存在など信じてはいないが。


昨夜、“桜魔狩り”への協力を俺に求めた(強制した)後、“華江梨花(はなえりんか)”は「疲れたから」という理由で颯爽(さっそう)とあの場を去っていった。聞きたいことがあったため、勿論追いかけようとした。が、普通の人間が彼女に追い付くことは無理だろう。無理だった。

「俺まだ、返事してないんだけどな……」

もしかしたら考える猶予(ゆうよ)をくれたのかも知れない。いやそれはないな。だって「拒否権はない」って言ってたし。


「ん、待てよ?」

(ひらめ)いた。これから、彼女に会わないようにすれば良いだけの事じゃないか。そうすれば協力する必要もない。そうだ、そうしよう!


等と考えていた時だった。“ピンポーン”と家のチャイムがなった。



「まさか………!」

頭の中が不安で溢れていた。しかしそうだとして、扉を開かないわけにはいかない。何せ親友の命が掛かっているのだ。



「どちらさまでしょう……」

「おはよう。木崎(きざき)くん。」

“華江梨花”その人だった。やはり、家の場所を特定されていたようだ。

「何の用?」

「学校まで一緒に行きましょ。」

彼女は俺の問いに即答した。しかし、

「学校違うじゃん」

竹ノ高校と木ノ高校。距離は近いが、別々の学校に通っているのだ。共に行く理由がないではないか。

「まだ答えてないことに答える。これでどう?」

その言葉を受け、俺は“華江梨花”と共に学校へと向かうことになった。と言うより、彼女の通う“木ノ高校”の先に“竹ノ高校”があるので、俺が彼女を“送っていく”形になる。



……よく分からない展開になってしまった。





長くなるので、登校中の詳しいことは【番外編】にて語ることとする。何故省略するか?それは“この物語”に直接関係しそうな事柄を、少ししか知れなかったからだ。分かったことはただ一つ。

“鬼は幅広いコミュニティを持つ”。それによって、俺の行動を把握したり桜魔の出現位置を算出したりしていたらしい。鬼が沢山いるなら、俺の協力など必要無さそうなものだが。






華江梨花を木ノ高校まで送り、俺は竹ノ高校への登校を完了した。“あぁ、今までの生活とは違うのだな”と悲観しながら、速足で教室に向かう。“木ノ高校を経由して竹ノ高校に向かう”ルートには馴れてなく、途中で迷ってしまったため、結構ギリギリだったのだ。

そして教室に入ると――――



染矢(そめや)ぁ!お前も、すみに置けへんなぁ!」

木崎(きざき)も女に興味あったのかよ!?」

「しかも相手の()可愛いし!!」

「前にフッた“ミス竹ノ高”より良いのか!?」



クラスメイト(主に男子)から質問攻めにあった。勿論、最初の似非(エセ)関西弁は咲人(さきと)のものだ。しかし、この状況は一体…?

「木ノ高の()がTwitterに画像上げとるんや」

そう言って咲人は俺にスマホの画面を見せた。そこには俺と華江梨花が共に登校している画像が表示されていた。

「いや、それは……」

複雑な理由があるのだと言おうとしたが、誰も話を聞かなかった。



「お前もリア充か…(うらや)ましくて(うら)めしいなぁ」

咲人はそう言うが、言葉とは裏腹にとても嬉しそうだ。他の皆もそう。まるで自分のことのように喜んでくれている。






あぁ、自分は幸せなのだと。ここに来て初めて気付かされた。

「幸せが続くのなら……平穏でなくても()っか。」

誰にも聞こえない声量で呟いてみる。すると不思議なことに、悩んでいたのがまるで嘘だったかの様に、俺は“桜魔と戦う決心”がついていた。



そして、クラスメイトは勘違いするだろうが、俺は今の気持ちを素直に言葉にすることにした。






「俺は、本当に幸せだな……」








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