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第四幕 : 鬼



「“(オニ)”とは“桜魔(おうま)”に近い人間。(すなわ)ち、“桜魔(おうま)()(もの)”。」



彼女の言葉の意味が理解出来ずにいた。鬼は桜魔に近い?俺は鬼になった?それじゃあ何だ、

「俺はあの化物に似てるってことか!?」

冗談じゃない。あんな化物と一緒にしないでくれ。俺は“人間”なんだ。


「落ち着いて。順番に説明するから」

そう言って彼女は話始めた。

「まずは“桜魔”について。桜魔とは、桜に集まった“怨霊”が形を持ったもの。樹木から生まれし“憎悪の生き物”とも呼ばれる。」

桜の木が“怨霊”を“桜魔”に変えて吐き出している、と?そういうことなのか?

「その解釈で間違いはない」

だが何故、桜は“桜魔”を作る必要があるんだ?

「桜には“怨霊”が溜まりやすい。しかし、桜にとっては怨霊は“猛毒”。桜魔を作り出す行為は、自分を守る行為でもある。」

成る程、桜魔は桜魔なりに“生まれた理由”があるわけだ。しかしそうなると、ますます分からなくなる。


「俺の、一体どこが“桜魔”に近いというんだ!?」

そう、桜魔が桜から生まれるのは分かった。しかし、俺は人の親から生まれたのだ。どう考えても、桜魔に“近い”訳がない。そもそも、“桜魔に近い”とはどういう意味なのか。

「あなたの場合はとてもレアケース。本来“鬼”とは先天的にその力を持って生まれるもの。しかしあなたは、後天的に“鬼”へと変化を()げた。普通の人間が“鬼”に変化することは珍しい。」




華江梨花(かなえりんか)(いわ)く、俺は“桜魔”の霊気を大量に浴びてしまい、それによって“変化”したのだと言う。一定量の霊気を受けると“普通”なら死んでしまう(はず)が、“何故か”俺はそれに適応したらしい。

「基本的に“鬼”とは“桜魔”の血を引く存在。桜魔に近いからこそ、高い【治癒能力】、【身体能力】、【霊気への抵抗力】を持っている。人間のあなたが“鬼”になれたことは、奇跡としか言いようがない。」

ここまで説明され、しかし、まだ分からないことがある。


「何故、俺が“鬼”になったと判断したんだ?」

“鬼になった”とは言われているものの、俺自身は他の人と何も変わっていない。それに今朝の“死にかけて”とは一体……?

「4月7日の夜、あなたは桜魔に襲われた。その際に負った傷が大きく、あなたは死ぬものと思われた。しかし、桜魔を始末してから見てみると、あなたの身体は治癒を始めていた。あれは紛れもない鬼の治癒能力。」


4月7日の記憶“だけ”抜けている俺には、実感の沸かない内容の話だ。だが、俺が確実に“鬼”へ変わったのだということは分かった。そして、最後に一つだけ、答えの予想はつくが、聞きたいことがある。




「俺に接触した理由。それを教えてくれ。」




俺が鬼になろうと、彼女には関係のないことの筈だ。このように接触しなければ、俺は鬼であることを知らずに過ごすだろう。特殊だと自覚しても、平穏を臨む。

しかし()えて接触してきたのだ。そこには明確な理由があるはず。そしてその答えは、俺の生活を確実に“変える”に違いないことを、俺は知っていた。






華江梨花が口を開く。






「“桜魔狩(おうまが)り”に協力して欲しいから。」

「断れば彼、“咲人(さきと)”という人物を殺すことになる……。あなたに拒否権は無い。」






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