第2.5幕 : 【番外編】合コンにて
合コンにて。
「染矢。気になる娘とかいる?」
咲人はしきりに、そんなことを聞いてきた。
「さっきも言ったろ。特にいねぇよ」
このように、俺は何度も同じ返事をしている。そもそも3次元の女子にそれほど興味はないのだ。
「アニメのキャラも良いけどさ……。ほら、“華ちゃん”良くない?おとなしい娘が好みなんだろ?」
再び“華ちゃん”を俺に薦めてくる咲人。
「んー…まあ、この中では一番好みかな」
その“華ちゃん”は先程から、女友達とばかり話しており、男子に話し掛けられてもyesかnoでしか答えていない。そういう“大和撫子”的な姿勢は、なかなか好感できるものだった。
「でも話し掛けない」
何となくで来た身だからな、と付け足す。
すると咲人は、呆れたようにして口を開いた。
「何言ってんだよ。お前の彼女を探すために今日は合コン開いたんだぜ?俺の労力を無駄にするなよ」
咲人の言葉に正直、驚きを隠せずにいる。俺の為を思っていたなんて想像もしていなかったのだ。
純粋に、嬉しかった。
「華ちゃん、歌うみたいだな。話のきっかけにしようぜ」
咲人が言うので見てみると、確かに、これから彼女は歌うようだった。おとなしい娘が何を歌うのか、実は気になったりする。
「「えっ…」」
曲名が表示された途端、俺と咲人は言葉を失った。何故か。歌を聞けばわかる。
「ざーんーこーくな天使のようにーしょーうーねーんよ神話になーれーー」
それは紛れもない、エヴァの主題歌“残酷な天使のテーゼ”だった。
「エヴァが好きとかいう会話、聞こえてたのかな…」
「いや、まさか…」
咲人の言葉を否定せざるを得ない。それほどまでに完璧な歌だった。思い付きで歌えるほど簡単な曲ではない筈だ。
「20年前の神アニソンを歌う娘には見えないんだけどな…」
咲人の気持ちはよくわかる。エヴァもこの曲も好きだが、合コンで歌うのはちょっと……という感じだ。
「「……話し掛けるのには、勇気がいるな」」
珍しく、俺と咲人の意見が一致した瞬間だった。
結局、話し掛けることはなかった……