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─上陸編─

『気象庁より報告。東京湾にて微弱な津波を観測したとの連絡あり』

『航空自衛隊レーダーサイトにて、大気圏へと突入する目標を探知した。弾道ミサイルの可能性も視野に入れ、現在、米軍ならびに韓国軍への確認を進めている』

『官邸連絡室を設置する!!』


 正価23年3月11日午前8時46分──。

 日本国政府はかつてない規模の対応を迫られていた……


 ──────

 

 官邸地下。内閣情報集約センターにはディスプレイが並び、東京湾における事象をくまなくモニターしている。

 今、集約センターは、官邸連絡室としての機能を果たしていた。

 内閣危機管理監を室長とする連絡室には、各省庁の幹部で構成される「緊急参集チーム」が招集された。


 危機管理監は、国の大規模災害等への対応を統理する内閣官房の役職である。


 直方体のテーブルの上座に危機管理監がつき、各省庁の出向者が順に座る。机上には、小型モニターとマイクなどの通信連絡機器がそれぞれの者にあてがわれ、ここが非常事態の拠点たることを象徴していた。


 現在の状況についてスタッフが危機管理監の質問に答えるが、危機管理監らは違和感を拭えないでいた。

 最も高い可能性は、北朝鮮弾道ミサイルの東京湾落下であるが、それならばなぜ事前に発射の兆候を掴めなかったのだろうか。その証拠に、情報を真っ先に提供してくれるはずの米軍ならびに韓国軍からの情報がない。

 

 そして事態は悪化する……

 警察からの出向者が報告する。

「レインボーブリッジにて火災発生との通報あり!!」

「何だと!!?」

「やはり弾道ミサイルの破片の落下か?」

「いえ……あの……」

 危機管理監の問いかけに、しどろもどろとする担当者。

「?」

 そのやりとりを中断するかのように、報告が入る。

「危機管理監、海上保安庁より連絡。現地に派遣したヘリコプターからの中継映像が繋がるとのことです」

「繋げてくれ」

『こちら『うみわし』……全く信じられない光景です』

 危機管理監がマイクスタンドを引き寄せ、がなりたてる。

「こちら官邸連絡室、信じられない光景と言うのは一体なんだ!?」

「とにかくこれを、現地の中継映像です」

 カメラがズームする

 そこに映ったモノは……

















======【 大 怪 獣 現 る ── 日 本 大 決 戦 ── 】======

















 直後。

 官邸連絡室は官邸対策室に昇格し、万全の危機管理態勢が敷かれた。

『官邸対策室への改組に伴い……』

『港区の該当地域に避難勧告を指示とのこと!』


 対策室に内閣総理大臣が入室し、報告が行われた。

「えっ!?怪獣!!?……さっさとやっつけてよ!」

 牟田口はのたまう。自衛隊の出番だと。

 都合の良い時ばかり自衛隊を頼る牟田口に不満を抱きながらも、防衛相たる荒垣は職務を忠実に執行する。

「かしこまりました。市ケ谷に連絡します……」

 急報にスタッフが話に割って入る。

「荒垣大臣、ただ今、東京都知事から災害派遣(・・・・)ならびに有害鳥獣駆除(・・・・・・)の要請がありました」


================================


【自衛隊法第八十三条・第一項・都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。】


================================


 過去幾度か出動実績がある有害鳥獣駆除が、今回の出動の根拠となった。

 ちなみに東京都知事は刷新の会と懇意の老人である。


 荒垣の命令は統合幕僚監部を通じて部隊に伝えられた。

 ただちに自衛隊法第二十二条に基づき、自衛艦隊司令官を指揮官とした統合任務部隊が設置され、横須賀を定系港とする海上自衛隊護衛艦隊ならびに陸上自衛隊木更津駐屯地より部隊が派遣され、陸海の部隊による共同作戦とした。


 先程の内閣情報集約センターには総理以下閣僚が入り、上座には牟田口がつく。大臣らは序列順に並び、背後には官僚が控える。

 閣僚や官僚は、青の防災服や各省庁の作業服を身につけている。

 防衛大臣の隣席には、制服組トップたる統合幕僚長が座り、様々な調整や連絡を行い、これから始まるオペレーションに備えていた。


 間もなく作戦が始まる。

 センターを慌ただしく職員が出入りしていく。

「戦闘ヘリコプター隊が木更津を離陸!」

「護衛艦きりしま他1隻、横須賀を出港」


「頼んだぞ……」

 荒垣はひとりごちた……


 ──────


 巨大生物はお台場に上陸し、暴虐の限りを尽くす。

 近代的に整備された施設はズタズタに踏み荒らされ、蹂躙される。見るも無惨な姿を晒していた。

 廃墟と化した港湾をバックに雄叫びをあげる雷竜のようなシルエット。

 このまま日本は、壊滅するのか──。

 

 だが……


 回転翼のブレードが大気を切り裂く。

 太陽に照らされるはその雄姿。

司令部(シーピー)、ストライカー1、送れ』

『ストライカー1、こちら司令部(シーピー)、送れ』

『ストライカー各機、巨大生物への射撃に備えよ』

『ストライカー了解』


 それは陸上自衛隊の誇る戦闘ヘリコプター部隊だった。

 複数機のヘリは蝶舞蜂刺の機動を展開する。


 首相官邸では部隊の指揮が行われていた。

 内閣危機管理監が住民避難完了の旨を伝えると、統合幕僚長は荒垣に向き直る。

「荒垣大臣、部隊は攻撃位置につきました」統幕長は冷静に言う。

「わかりました……総理、攻撃します」進言する荒垣。

「さっさとやっつけてよっ」と牟田口。

「わかりました総理。統合任務部隊司令部に連絡」

「はい……作戦を開始する。射撃開始!」

『射撃開始!』

『射撃開始!』

 統合幕僚長、統合任務部隊指揮官、現地部隊の順に命令は降りていく。

『発射用意!発射!』

 鉄筒が束となったガトリング砲は、猛回転を始め火を噴いた。

 砲弾が瞬く間に給弾され、標的に叩きつけられる。

 たちまち煙と硝煙の異臭が周囲に立ち込める。


 沈黙の時……

 煙に阻まれ、敵が負ったダメージは分からない。


『……ストライカー1、こちら司令部(シーピー)、状況知らせ!』

司令部(シーピー)、ストライカー1、ストライカー各機は巨大生物に対し全弾を射撃。現在視界不良、送れ!』


 ヘリコプターはホバリングを続けていた……


 


 

 


 




 




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