8.女神様
やるぞ、やるぞ、やるぞ、、、、 クソ! 元気○!!
「お待ちなさい!!」
突然、目の前に七色の光がほとばしり、オレが投射した光球が霧散した。
その光は、まるで悪魔を召喚する時と同じ様にサイズを広げていくと徐々に人の形を取り、それが弾けた瞬間 目の前には10代中頃の日本女性を思わせる風貌の人物が立っていた。 長い黒髪が美しい、大きな瞳、ソレを縁取る長いまつげと形の良い眉毛、雪のように真っ白い肌と赤みがさす頬と唇、化粧っけは全く無いのに自然と溢れる凛とした美しさはフルメイクの人気読者モデルと言えど裸足で逃げ出す事だろう。 その身を包むのは、、その身を包、、、何でセーラー服? あぁ! あの人達が言ってた娘ってこの子の事だな。
「たとえ種族が違うとしてもこの様な無力な幼子達に魔弾を飛ばすとはどういう事ですか? 説明を求めます。」
「、、、ええと、私は理由あって近くの村の者達に異常繁殖したゴブリンの討伐を依頼されたものです。 山狩をして殆どのゴブリンは仕留める事が出来ました。依頼主に聞いた通りに根城に成っている洞窟を発見したのでソコに倒れている大型種のゴブリンも倒しました。 残されたのがアイツラなんですが、まさか養ってやることも出来ず、かと言ってこのまま野垂れ死ぬのに任せるのも酷いかと思いまして、、、」
「この子たちを助ける気持ちで殺そうとしたとでも?」
「言い訳する事を許して頂けるなら、そういう事に成るかと思います。」
「、、、では私がこの子たちを連れて行っても問題ないでしょうか?」
「この森で育てないのであれば私が口を挟む謂れはありません。でも念の為どの様にするおつもりなのか伺っても?」
「神守の杜に連れて行こうと思います。 子供の内からそこに実る果実を食べ、湧く水を飲んで暮らせば数年の内に彼ら全てはノームへ変じるでしょう。そうなれば闇雲に人を襲うことは無くなります。」
「解りました。是非お願いします。 ところで貴方様はどうしてコチラにお出でになったのですか?この子たちの助けを呼ぶ声が聞こえたとか?」
「私は、その、、そう!私はこの森の奥に住む隠者なのです。 森を歩いていると、かつて無い強烈な魂の慟哭を耳にしたもので調べに来た、という訳です。きっとこの子たちの中に叫びを上げた子が居るのでしょう」
「森に住む隠者ですか? そうですか」
ジトーーーー(-_-)
ジト目で見ていたら女神様キョドるキョドる。大変カワイらしいのだが追い詰めたら可哀想だからコノくらいにして置くか。
「解りました。それでは委細お願い致します。では用事も済みましたので私供は引き上げます。」
「あの、一応お名前を伺えませんか? わたくし、、、ミコトと申します」
ふむ、なんか神様であること隠したがっているようだから、コチラも親御さん絡みや異界渡りなのは黙っておいたほうが良いのかね?
「タシヤと申します。こっちはソグン、キノトーン、ウークタフト、みな私の配下です」
「あの、付かぬことをお伺いしますが、そちらの女性は下着を付けていらっしゃらないですよね? あなたもマントの下は裸の様ですがひょっとして変態さんですか?」
「ちがいます!」
別れを告げて辞去する。 思いの外早く上長の娘さんが元気に過ごしてらっしゃるのも確認できたしトラウマ案件もスルー出来た。 こっからは異世界生活を満喫していこう。
僕らの冒険はまだ始まったばかりだ!
完
そうそう、依頼が済んだのならちゃんと報告に行かなくてはね。地球でも異世界でもどんな職業でも「報・連・相」ホウ・レン・ソウ これ大事。
お弁当は帰り道の途中で頂きました。 カンパーニュの間にタップリのチーズと酢漬け野菜のスライス、ちょっとだけベーコンの入ったサンドイッチと言うにはかなりボリューミーな一品。大変おいしゅうございました。 何故か食事を取る必要の無いウークが物欲しそうに見つめてくるので一口与えた所、もっと!もっと!と欲しがり続け、結局半分以上持って行かれましたが。
おまえ本当、自由な?
村に戻ると討伐した証明に成るものはパクってきた素朴な小剣くらいしか無かったのに全く疑うこと無く村人全員で盛大に迎えられ、昨日泊めて貰った寄り合い所でそのまま宴会に突入。宴会と言っても各家から持ち寄った素朴な自家製エールと殆ど同じ材料をそれでも各家工夫を凝らして特徴を出そうとした後のある家庭料理程度。 しかし、オレの冒険譚やら地元の伝承・童話、この土地の習慣、行商人から聞いた都会の噂話なんかを話しながら飲む酒は本当に美味かった。 上司や同僚の愚痴を聞きながら飲む酒と全然違う。
ちなみにソグンとアークラさん以外は村に着く前に既に送還してある。 あの空気読め無いのを傍らに置いたまま普通の人達と交流を図る自信がない。あと着せる服無いし。
村人の話の中で宗教の話がでていた。幾柱かの神々が居らして種族や地域毎に人気が別れるのだが、この辺りで一般的なのは名前を知られていない実りと癒やしの女神。 黒髪の美しい少女の姿として描かれるそうな。
タップリと昼近くまで休ませて貰ってからいよいよ出発だ。 村長や近くに居たご年配方に饗しの礼を伝えながら領都が有るという北の地を目指す。畑地帯を抜ける間に作業の手を止めてコチラに手を振ってくれる村人たちと何度も遭遇する。 あぁ、こういうのって良いよね? 役所の市民課の窓口業務などやっていると地域住民との交流なんてクソ喰らえ!とか思ってしまうけど、純粋な感謝の気持を向けられるのって心地よい。 オレの成した事が彼らのコレからの生活に少しでも足しに成って欲しいと心の底から思えた。




