7.洞窟にて
デーモンドッグ達に周囲を軽く捜索して貰うが、少なくとも300mの範囲には生き残りは見当たらない。残党が居るとしたら洞窟内か。
ホブゴブ5からパクってきた比較的まともに見える刀身70cm程の直刀をバツの字を書くように振ってみる。剣道の授業で使っていた竹刀より随分短いがサバイバルナイフよりは間合いが取れる。こっちに来てから腕力も増している様だし体も軽く感じる、充分使い物になりそうだ。
警戒しながらドッグ達を先頭に、ウーク、そしてオレが殿となって幅2m程、高さは7〜8mの蛇行する道を進んでいく。 暫く行くと暗くなりすぎて魔族はともかくオレの目が効かなく成ったのでウークに明かりの魔法を使ってもらう。今度は片手で光球を作りタメも無くサッと上に振るうと上空3m程からかなり明るい光を放ちながらウークの動きを追従する。元気○が青白い光だったのに対してコレは白熱電球とかハロゲンランプの様な色合いかな。
奥に行くに連れて悪臭が強くなって来た。排泄物と吐瀉物、それに古い牛乳を足しっぱなしにした様な吐き気を催す臭気だ。
やがて50mも進んだ所で大きな広間の様に成った空間に出た。端の方から聞こえる「ミーミー」という音に目を向けると、生まれて間もないと思われる手のひらに乗るサイズからオレの腰高程の未成熟なものまでパット見30体以上の小ゴブリンが怯えるようにコチラを見ている。
あーコレって鬱展開の奴じゃないですかーヤダー
狼狽えていると、奥の暗がりから身長2mは超えていそうな巨大なゴブリン歩み出てきた。オレの身長ほども有る巨大な棍棒を構えたそいつはゴブリンらしい突き出た腹の上に4つの大きく膨れた乳房をもっている。クィーンゴブリンとでも呼べば良いのだろうか? この大繁殖ぶりはこいつが原因だったのかも知れない。
「ニンゲンメ、コドモタチノイノチマデ ウバオウトイウノカ!?」
喋った! シャガれてくぐもった聞き難い発音だが確かに大陸共通語で話している。借り物の技能で会話しているチートのオレより一個の生物としてずっと努力して生きている気がする。 、、、どうせオレなんて子供は疎か彼女一人つなぎ留めて置けてない男だし、、ゥッゥッ
「すいません。でもこれも弱肉強食です。恨みは有りませんが残らず死んで頂きます。行け!」
ドッグスがタイミングをピッタリ合わせて飛びかかっていく。 武器を握る右手・喉笛・左足に同時に食らいつこうとするが棍棒一凪で3頭とも弾き飛ばされた。隙を突くようにウークが飛ばした氷柱も巨体とは思えない身軽な動きで躱すと、オレがカットインする間もなく棍棒の直撃を受けて身動き出来なくなっていたエルファンの頭に強打を打ち下ろした。エルファンはビクッと痙攣をすると召喚した時の様子を逆再生したかのように体が光に代わり萎むように消えてしまう。
こいつ強いぞ! 現状俺達の中では一番速さに特化したドッグス、それも三位一体のジェットストリーム攻撃。あれを避けるかよ!?
何とか起き上がってきた2頭を手元に呼び戻したがオレは攻めあぐねてしまう。
一旦引くか? 狭い通路に逃げ込んでしまえばあの巨体だ。身動きが制限されて魔法も当たり易くなるかもしれない。そもそも子供を守ろうとしている以上、コチラが引けば追跡して来ない可能性もある、、、そんな事を考えていたらツカツカっと前に歩みだしたウークが片手に真っ赤な火の玉を作り出し、部屋の片隅に固まる子ゴブ達に向かって振りかぶる。
チョッおまっ! 何やってくれてんの!? オレも驚いたが、クィーンゴブリンは慌てて自分の身も顧みず炎球の前に体を投げだした。顔面だけは庇えた様だが直撃を受けた胸から腹にかけては惨たらしく焼けただれている。 そしてウークは動きの止まった女王に躊躇すること無く矢継ぎ早に氷柱をブツケていく。2頭も加わると後は一方的だった。
酷いものを見た、、、汚ねー! 悪魔汚ねー!!
得意げな笑顔でコチラに頭を押し付けてくるウーク。 頭撫でろってんだろ? 分かったよ! オマエのお陰で助かったよ! 幾らでも撫でてやるよ!
一撫でする度に満面の笑みを浮かべて肩を揺らすウーク。 だからヤメロ、胸が揺れる。 いっそ、そのたわわに実る果実を力いっぱい揉みしだいてやろうか!?
いや、、やっぱいいです、言ってみただけです、ゴメンナサイ。
さて現実逃避はそのくらいにして、問題は目の前で母親を惨殺されて泣き叫んでいる子ゴブ達だ。 聞こえないふりをしつつ配下と戯れていたが、現在進行形で耳には小さな命の叫びが響き渡って来る。 可哀想とは思うがコイツラを放置しておけば将来人を襲う存在になる奴がこの中から出てきてしまうかも知れない。
そもそも養ってくれる者無しにコイツラのウチのどれだけが生き残ることが出来るだろうか? 飢えに苦しみながら一体また一体と死んで逝くのを待つくらいなら一瞬で焼き殺される方が余程マシじゃないのか?
ってな事を考えながら固まっていると、またウークの馬鹿が”あ、じゃ私やっちゃいますよー♪”とでも言いたげな、かつ心から楽しそうな晴れやかな笑顔で魔法の予備動作に入る。
「ウーク待ってくれ、そいつらはオレがやる」
”ちぇっ”といった表情のスマイル悪魔を後ろに下げると彼女が○気玉を出した時の事を思い出しながら両腕をさし上げた。ウークを召喚する際に何か有った際の保険にと追加しておいた技能付与:中級をこんな形で使うことに成るとは、、、 オレのMPの残り量からテント村を吹き飛ばした破壊力の5分の1も出ないだろうが、見るからに柔らかそうな肌、軽く力を入れただけで骨を砕いてしまいそうな細い手足を見るだにそれで充分な力を発揮するだろうさ。
クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソクソクソクソ ヤリたくない!ヤリたくない!ヤリたくない!
、、、殺りたくないがコレはオレが直接ヤラなくちゃいけない気がするんだ。 別に「部下に示しが付かない」とかそういう対面の問題じゃない。
これは命の重さを知る者、罪の意識が有る者が手を下さないとイケナイ気がする。「オレは指示をするだけ、後は快楽殺人犯が実行」ではダメな気がするんだ。 おい、何笑ってやがる美少女悪魔!
やるぞ、やるぞ、やるぞ、、、、




