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悪魔使いで異世界冒険  作者: インスタントカルマ
19/19

19.領主館

遅れ遅れで申し訳有りません。

お気に入り登録されて下さる方も増えてきました。本当にありがとうございます。

「まるで要塞だな」


 腹は減っているのだが姫様が待っているとイケナイので、ボンヤリした受け答えしかしなくなったリーハンを引っ張るようにしながらここまで辿り着いた。

 領主館と聞いてもっと瀟洒なお屋敷風の建物を想像していたのだが目の前まで来てみると堀こそ無いがまんまオレが一昨日収監されていた砦だった。町中に有ると監獄のようにも見える古代コンクリート製の堅牢な作りだ。先々代までは係争地だったらしいので街を巡る防壁が破られた際の最後の防衛線という事なのだろう。

 館の前は小学校の運動会が開けそうな程の広場に成っていて今も市が立っている。ファンタジー系アニメそのままにハルバードを構える2人の衛兵に守られた入り口を抜けると砦と同じ様にここにも小さな中庭的な場所が存在した。砦では馬房とオレも拘留された檻がある辺りに天幕が張られ下にベンチが置かれた待合席が設けてある。

 領主官に用事が有るものはココで一度留め置かれてから目的の場所に案内されるのだそうな。そりゃ領主家族も住む領館内部を有象無象に彷徨かせはしないか。それにしてもココには色んな人が居る。出入りの商人らしき身奇麗にした人、何かの職人だろうか?腰に巻いたベルトにハンマーやら鋸だか様々な道具を挿した女ドワーフ。聖職者だろうか?揃いの真っ白いローブを着た初老の女性と少年。領主による調停を求めに来たであろう小声で罵り合う中年の男達。何をやったのか知らないが荒縄でグルグル巻きにされた男を見ていたら向こうから声を掛けられた。


「よお!また会ったな。」

「何やってんすか!? ハーディンさん。 また捕まったんですか? そもそも馬車で来たオレより何で先にココに付いてるんですか?」

「お前さんが牢から出されて暫くして俺も釈放されたんだ。で、聞いてみたら俺との約束も無視して領都に向かたって言うじゃねぇか。慌てて走って追いかけたね。んで街門まで来たら入街税と来た。村での喧嘩沙汰の罰金に有り金全部巻き上げられた上に身ぐるみ剥がされたんだがそれにギルドカードも入っててよ。ちょっと通してもらってギルドに預けた金を取ってくるって言ってるだけなのに、通せないだの決まりがどうのと喚きやがるからチット揉めちまってさ」

「あなたその内、首刎ねられますよ?」


 砦で隣に収監されていた冒険者ハーディンだった。 約束って何だっけ? そう言えば「此処から出たら一緒に迷宮探検しようぜ」とかなんとか言われた気がする。そうか、ダンジョンまであるんだ!異世界ハンパネェな。


「で、お前さんは何よ? 騎士を引き連れてご登場だったようだが。」

「うーん、なんと言って説明したら良いか、、、 私が遠くから旅をして来ていてこの辺りの情勢に不案内だってお話ししましたっけ? で、今現在この国や近隣の国の王家とか高位貴族の間に揉め事は起こってませんかね?」

「そうさな? この国であれば今、世継ぎ問題で王都はテンヤワンヤらしいぞ。後は少し離れて居るが東のセンベドで召喚した英雄候補を邪険に扱ったせいで王族が皆殺しに成ったとか、西の砂漠の向こうにあるナントカ言う国で死病が流行り貴族も半分にまで減っているって話も聞いたな、、、そのくらいか?」


 おそらく高級宿の女の子はお世継ぎ絡みか。召喚された英雄が王家皆殺しって何事よ? 異世界物テンプレの一つ「教室から召喚されてみたら鬼畜な王様に奴隷にされかけて」って奴か? 日本人だったら会ってみたい気もする。それともバトルジャンキーや能力略奪系の能力者の可能性もあるから避けておいたほう無難だろうか?


「この国の王族で10歳前後の女の子って居ますかね?」

「第三后の子が確か8つだったか。」

「ぁー、ひょっとしなくてもその子かな。 昨晩泊まった宿屋で偶然その子を狙っていたと思われる暴漢を捕らえたんです。その時コチラの領主に面識があると話したら『守刀を預けるから領主に取り次いで欲しい』と。今どんな状況になってるんですかね? 概略だけでも知っておきたいんですが。」

「何にも知らないまま首突っ込んだのか? お前さんも俺のことを笑えないと思うがな! ッハッハッハ。

 2ヶ月ほど前この国の王がくたばった。内臓の病が原因で、これは以前からずっと患っていたから暗殺とか謀反とかの可能性は殆ど無いらしい。ここまでは良いか? 、、、それも知らんのか? まぁ良い、それで法律に照らして第二后の子である第一王子のソラフィスが新王に即位する事になった。 しかし、そこで割って入ったのが第一后だ。『病弱な第一王子が国を次いでも先々どうなるか分からない。国を統べる者がそう度々変わっては政が立ちゆかず、曳いては民草に憂いがが及ぶ』とモノ言いを付けた。 ”民草に憂いが”なんて言ってるが第一王妃は北の国ガーリハンの王室出身で贅沢三昧の生活をしているって噂が絶えないから要は自分の息子の第二王子ロハルに国を継がせたいんだろうさ。

 通常であればそんな話は一顧だにもされないが、しかし第一王子は先王が失効させた奴隷所有禁止法を再び制定する事を繰り返し忠信していたそうだ。が、それが叶ってしまうと奴隷貿易で儲けている多くの有力貴族にとっては面白くない。 それに自身が病弱なせいかソラフィス王子は”名も無き豊穣と慈悲の女神”の熱心な信徒である事は有名な話だが、この国の国教は天空教だろ? 即位式では天空教の大司祭による王冠と玉璽の聖別が重要な式典の一つに成っているらしいんだが、 ”第一王子は国教を変えるつもりじゃないか?”って教団内には王子排斥を求める勢力も居るらしい。」

「つまり王族・次期王様の第一候補と言えど同じ程度の権力を持った連中を幾つも敵に回していると? それでその第三后の娘さんがどう絡んでくるんです?」

「お前は軍の統率権と指揮系統については、、、知るわけねぇよな。まぁ俺も一介の冒険者に過ぎないわけでその辺り別段詳しいワケじゃねぇんだが、


 まず近衛隊。あいつらは王に直属の騎士隊で基本的に王の命令しか受け付けない。王子や王妃の護衛として側近の様に働く近衛騎士も居るだろうが、もし王と王子の意見がかち合う事に成ったら絶対に王命に従うって連中だ。しかし即位の儀が未だ行われていない現状、指揮権が浮いちまってる。法律上は継承権第一位の第一王子に従うのが本筋なんだろうが、それ言ったらロハルの即位話自体が出て来ないわな?


 で、次は国軍。 国中から徴兵/雇用されてきた一般兵とそいつらを統率する騎士、そして実働部隊を恙無く働かせる為に飯や装備、給料を用意する官僚達によるこの国最大の暴力執行機関だ。最高指揮は軍務卿が行う。


 そして貴族が各々に抱えている貴族軍、お前と一緒に来たあの騎士の若造もこの砦の入り口に立っている衛士もこの貴族軍に入る。


 あと数は少ないが魔導軍。宮廷魔術師は平時は独立した権力機構なんだが戦時には魔法特化部隊として1軍の扱いをされる。


 その他、対外戦争や内戦の時には殆ど手を貸さないが、S級魔獣や邪教絡みの時にだけ出張ってくる国教会の下部組織”教団騎士団”や、それから俺達、冒険者ギルド会員などが中心になって組織される傭兵部隊なんてのもある。


 戦争の規模にも依るが、大きな戦では一つの軍だけで動くという事はまず在り得ない。 一朝事有れば近衛以外の全ての軍が習合され一つの組織として運用される。その時統帥権を握るのがさっきも話した軍務卿だ。 最終的には”国王陛下に作戦を献上し裁可をうける”って体だから国法上の総指揮権は当然王様が持っている事になるんだが実質上、国の軍事力全件を握っているのは軍務卿ってワケだ。 ここまでは良いか?


 うむ。んで今、軍務卿の職に付いているのがユーリヒ侯爵な? ユーリヒ家は代々軍務に就く伝統が有る家で、上級貴族にしては珍しく夫人を一人しか娶らず子は一人息女を儲けたのみだった。武勇の誉れ高い侯爵の血を一身に受け継いだ娘は長じて騎士となり婿も取らず領地にも帰らず当時は師団長だった父が務める国軍に入る事になる。父の威光に一切頼ること無く得意の剣術と父譲りの冷徹な判断力・組織運営力を遺憾なく発揮して女ながらバリバリ出世した。 程なくして近衛騎士隊から引き抜きの話が来る。近衛には剣術の腕のみ成らず王への忠誠心や王族の側に居て様々な事の相談役になる事も多いらしいから、その辺も買われたんだろうな。近衛に入って第二王妃の護衛として働く内に王に見初められ、、、そして生まれたのが後に第三后になるハンナが産んだ第三王女のルーデルってワケだ。」

「はぁ、、、、何か後半凄く力が入っていた気がしますが、ハーディンさんは軍関係や王家の内情について随分お詳しいんですね?」

「そんな事ねぇよ。こんなのこの国に住んでる者なら常識だろ?」


 気がつくと周りがシーンと成っている。見回せば待合席に居た者達や近くに居た衛士達までもがハーディンさんを注視しながら「へぇ、そんな風になってんだ」とか「ほー、第三后様はそんな方だったのか」と言った声が聞こえて来る。 さっき迄、罵り合っていたオッサン達に「この話知ってました?」と聞くと、2人してタイミングピッタリに首をプルプル振っている。なんだ、アンタラ仲良しか?


「まとめると、つまり国軍やその他の軍関係にも影響力の強い人物の身内を攫って脅す事で自分の陣営に引きこもう、と?」

「或いは暗殺なり未遂事件を起して、相手方に疑いが向くような証拠をワザと残して場を引っ掻き回す、、とか?」

「、、、、あー!!! 面倒くさい事態にハマりこんだ気がする!!!」

「ハッハッハッ! まぁ若い内に色々苦労はしとくもんだ。」

「もう若くないんですよ。 なに!まだあの子が王女様だって決まったわけじゃない。 何処かの金持ちの商人の子で領主様に用事が合っただけかも」

「件の守刀ってのがポイントだな。 母親から譲り受けた物ならユーリヒ家の家紋である”Xの字の止り木に止まった大鷲”の紋章が付いていた筈だが?」

「え? 紋章なんて見なかったな。ただ作りの良い赤い鞘に入っていて、、」

「おー! タシアどの!! ここに居られたか。この探検を預かった経緯に付いて詳しくお話を伺いたいのだ。」


 そう大声を上げながら走りこんで来たのは昨日砦で別れた年配騎士のレブナスさんだ。 手に恭しく乗せているのは木の盆、その上にはビロードの様な光沢の布が掛けられ、そしてリーハンがむんずと掴んで持って行った赤い鞘入りの守刀載っていた。 その短刀の柄には小さいながら精緻な細工で”Xの字の止り木に止まった大鷲”が彫り込まれていた。

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